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メディアグランプリ

この野菜ジュースは最終兵器


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事: 中村響 (ライティング・ゼミ 特講)
※この物語はフィクションです。

 
 
「痛い、痛いいいいいい」
その時、私は口内炎に悩まされていた。
昨年の11月ごろ、
私は文章を書くために奮闘していた。
しかし、奴が口の中にあるせいで集中できない。
中々上達を感じることが出来なかった。
口内炎が私の人生を邪魔したことは今に始まったことではないが、
「またお前か……」
そう思わずにはいられなかった。
そんな時に受講した文章術の講座で、
「とある野菜ジュースが口内炎に効く」と聞いた。
「そんなバカな」
半信半疑で飲んでみると、恐ろしいほど効いた。
まさに「この野菜ジュースは最終兵器」である。
「どうしてこんな体に生んでくれやがったんだ!!!!!」
「うるさい!! 私も痛いわ!!」
我が家で幾度となく繰り返されてきた不毛な争いである。
私の口内炎が出来やすい体質は母からの遺伝で、
生まれつきである。
かれこれ25年以上苦しめられている。
「ざしゅっ、あ、やらかした」
少しでも犬歯が口の中をこすると、
すぐに傷口から口内炎ができる。
そして食事を摂ることが億劫になる。
栄養不足が口内炎の発生に拍車をかける。
そのストレスがまた口内炎を呼ぶ。
まさに負のループが数週間にわたって繰り返されることになる。
そのストレスで物事に集中することもできず、
人への配慮さえ疎かになる。
恐ろしい病魔を常に患っているようなものである。
理性など保てるわけがない。
 
しかも治ったとしても、すぐに何かの拍子に発生してしまう。
こんなサイクルが生まれてからずっと付きまとっているのだ。
もちろんそれを跳ねのけるために、
努力するのが普通の人間のすることだろう。
もちろん私も努力はした。
カタカナ四文字で「ケ」から始まる、軟膏を塗りたくった。
パッチを貼ってみた。
野菜をとにかく買ってドカ食いしたり。
はては医者の世話になったこともある。
少しでもまっとうな人間になるべく、努力はしたのだ。
だが、一向に体質を変えられる気配はない。
「もう一生この絶望を抱えなければいけないのか」
そう諦めていた。
そんな時、偶然にもこの野菜ジュースを知った。
きっかけは文章術の講義である。
私は体調管理について質問した。
「どうやったらプロとしての体調管理を行うことが出来るのか?
口内炎が辛くて死にそうです。
文章を書くための体力が根こそぎ持ってかれます」
すると講師の三浦さんはこう言った。
「あるメーカーの黄色いパッケージの野菜ジュースが効きますよ。
12種類のビタミンが入っていることを謡ってるやつです。
僕もできやすい体質でしたけどもう2年以上健康です」
マジか。
頭をレンガでぶん殴られたかのような衝撃だった。
そして翌日。
私は近くのコンビニに買いに行った。
すぐに見つかる。
「この黄色いパッケージの奴か」
私は手に取り、しげしげと眺める。
今まで経験してきたことだ。
「効くかもしれない」という期待と、
「またダメだったらどうしよう」という気持ちが同居している。
私は意を決して買った。
家に帰り、テーブルに野菜ジュースのパッケージを置くと、
胸の前で十字架を切る。
 
「神よ。願わくば、あの白い悪魔に正義の鉄槌を!!!!!」
気持ちは聖戦に赴く兵士である。
生まれついての宿命に決着をつけるべく、ジュースを体に流し込む。
「口内炎…… もう、終わりにしようっ!!!!!!!!」
口内炎との戦いの火ぶたが切って落とされた。
それから私は毎日この野菜ジュースを飲んだ。
今までの恨みをすべて精算するために、飲み続けた。
1週間ほど経って。
「おお、少し口内炎が直ってきた」
ついに奇跡が起きた。
みるみる口内炎が小さくなっていく。
カタカナ4文字の軟膏を塗った時でさえ、
完治にまで数週間かかっていた、あの白い悪魔が撃退されていく。
「うおおおおおおおおおおお!!!!!
もっと!! もっとだ!!!!!」
すぐに私は大手ネット小売りのホームページに飛ぶ。
定期便にこの野菜ジュースを設定する。
「ここで決着をつけてやる!!! 俺の口の中からあの悪魔を追い出すのだ!!!!!」
私は無我夢中でボタンをクリックした。
何度も押している。
そんなにたくさんいるわけではないのだが。
それでも私は押さざるを得なかった。
生まれてから苦しめられ続けた、奴を。
ついに追い出すことができるのだ。
その興奮が私を突き動かした。
箱が届いて、私は暇さえあれば飲むようになった。
朝、昼、晩。
3度欠かさず飲み続けた。
そしてさらに1ヶ月後。
 
「やった。俺はやったんだ……
ついに俺は戦いに勝ったんだ!!
うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
口内炎は跡形もなく消えていた。
しかも、舌を噛んでも口内炎は出来なくなっていた。
あの野菜ジュースのおかげで口の中の平穏は保たれている。
私は喜びのあまり、製造元へ感謝のメールを送った。
「背景、飲料メーカー様。
この度御社の製造する野菜ジュースのおかげで、
口内炎を治すことが出来ました。
本当にありがとうございました」
すると数日後に返信があった。
「長い戦い、お疲れさまでした。
今後とも弊社の製品のご愛顧をよろしくお願いいたします」
そんな言葉で締めくくられていた。
もしあなたが口内炎に悩んでいるのなら、
この野菜ジュースは最終兵器になりうるかもしれない。
希望はまだ潰えてない。
読者の方にも、是非試してもらいたい。
 
 
***

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2018-03-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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