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私にとって特別な「ただの女友達」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:吉田修治(ライディング・ゼミ平日コース)
 
「ただの女友達」それは恋愛関係のない仲の良い女友達のことを指す。
大学時代、私は恋人がいないのはもちろんのこと「ただの女友達」も一人もいなかった。女友達ぐらいいるでしょ! と思うかもしれないが本当にいなかったのだ。
自意識過剰で人としゃべるのが苦手な上に、理系学部でクラスには男しかいないし、サークルも武道系で男しかいなかったからだ。ごくまれに女性と接する機会があったとしても、ビビッてしまってまともに会話ができず、友達になることなどできなかったのだ。
表向きは強がって「いや別に女友達とかいらないし」と言っていたが内心「ただの女友達」にとても憧れていた。男女グループで楽しそうにしている他の学生達がうらやましくてしょうがなかった。
そんな私に初めて「ただの女友達」ができたのは、大学院に進んだ23歳の時だった。彼女はまさに彗星のごとく私の前に現れた。
 
当時、仲の良い友人グループで、あるネットゲーム流行っていた。そのゲームにはチャット機能が付いていて、私は友人たちと夜な夜なチャットをしていた。ある日チャットをしていると、友人の大輔が
「サークルの後輩の女の子とチャットしているんだけど、呼ぼうか」
と言うではないか。男ばかりのグループだった我々は大喜びした。
「呼ぼう!呼ぼう!」
パソコン画面に、新たな参加者を知らせるポップアップが躍った。
「ゆき」という名前に、ピンク色の文字。
 
「こんばんは~」
「ホントにきた~!!」
「なんか呼ばれちゃいました(笑)」
 
チャットとはいえ、女友達ゼロ人の私は緊張と嬉しさで舞い上がっていた。女の子が入力していると思うだけで、PC画面に映る文字まで可愛く見えてしまうのだった。その日は自己紹介やサークルの話など他愛もない話で盛り上がった。
その後、友人達とチャットするときは、たまに彼女も参加するようになり、徐々にみんなと仲良くなっていった。
今度チャットじゃなくてみんなで普通に遊ぼう! という話になり、私は飛び上がって大喜びした。
彼女に初めて会う日は、朝から落ち着かなかった。集合場所に行くと、黒髪ショートで少し背の高い女の子がいた。
「ゆきです! はじめまして!」
なかなかに可愛い子だな。
彼女も初めてあう友人達もちょっと照れ臭そうだった。
 
それからは、その友人グループで遊ぶ時には、彼女も度々参加するようになった。女子一人だったため、また年下だったため、彼女はみんなから妹のように可愛がられた。彼女も持ち前の愛嬌で、敬語もすぐになくなり、昔からの友人みたいにみんなになじんだ。男しかいなかったグループに華やかさが加わった。
彼女はやさしい子だった。初めのうちは緊張してしまって、ぎこちない会話しかできなかった私にも、分け隔てなく笑顔で接してくれた。服装がダサイ私に、このお店で服買うといいよ! なんて教えてくれて、服を選んでくれたこともある。女友達ゼロ人の冴えない私にとって、そのやさしさはとても眩しかった。彼女は暗い大学生活でひねくれていた私の心を明るく照らしてくれた。
 
一緒にみんなで遊ぶ日々はとても楽しかった。まるで自分が棒に振ってしまった青春時代を取り戻せているような気がした。
私は彼女のおかげで徐々に女性に慣れることができ、他の女性とも会話ができるようになり、彼女以外にも女友達ができていった。しかし他に女友達ができたとしても、彼女は私にとって唯一無二の特別な「ただの女友達」であり続けていた。
 
それから数年が過ぎた。彼女も私も大学を卒業し社会人になっていた。
ある日、そのメンバーで久しぶりに集まった時だ。ちょっと今日は発表があります、と大輔が言うではないか。なんだろう?
 
「実は結婚します」
「おー!! 相手は?」
「ゆきです」
シーン……
 
その場が静まり返った。大輔とゆきは確かに仲が良かったが、付き合ってはいないことになっていたからだ。
 
「……や、やっぱお前ら付き合ってたんじゃねーか(笑)」
私も笑いながら
「そうそう、そんなことだろうと思ってたよ!」
と言っていたが、内心激しく動揺していた。
「隠しててごめん!」と謝る彼ら。そのあとは、いつから付き合ってたんだ、どっちが告ったんだなど、質問攻めが始まり、いつものようなにぎやかな空気となった。
 
その会がお開きになり、家に帰った私は目の前が真っ暗になっていた。ショックだった。
彼女に対して恋愛感情はないはずだった。いや、ないと思い込もうとしていた。本当はあったのかもしれない。しかしその感情を認めてしまうと、彼女との友人関係が崩れてしまいそうで、それだけはどうしても避けたかった。女友達ゼロ人だった冴えない私にとって、彼女はあまりにも大切な存在だったのだ。そのため私は自分の気持ちにフタをし続けていた。今回のことで、そのフタが開いてしまったのかもしれない。
相手が大輔でよかったじゃないか! これなら結婚後も彼女と友達でいられる。まったく知らない男と結婚したんだったら、友達でいることすら難しかったんだぞ! それで十分じゃないか! 自分にそう言い聞かせながら布団のなかで眠れずにジタバタしていた。
 
 
結婚式はその発表の5か月後に行われた。私は当初のショックからは立ち直っていたが、まだ心の中にモヤモヤとした憂うつ感を感じていた。
結婚式はとあるホテルで行われた。
いつもの友人メンバと一緒に式場で新郎新婦の入場を待つ。
新郎新婦がチャペルに入場してきた。ドレスがよく似合っていてとても可愛い。神父が結婚の儀を読み上げる。二人とも緊張していて表情が硬い。
 
「愛を誓いますか」
「はい、誓います」
 
キスをしたあと、少し二人は見つめ合った。荘厳なオルガンの音色が流れている。曇り空から少し太陽が顔をのぞかせ、窓から光がさしこんできた。彼女は少し緊張が緩んだのか、大輔を見つめて、とてもうれしそうににっこりと笑った。
 
それはとても美しい笑顔だった。
 
私はこの時の彼女の笑顔ほど、美しい笑顔をみたことがなかった。
まるで無垢な子供のような、天使のような、輝きに満ちた幸せそうな笑顔だった。
 
私の頭の中に様々な思いがよぎった。
初めて彼女に会った時のこと、冴えない自分、そんな自分にもやさしかった彼女、彼女に対する本当の気持ち。
 
そして彼女の幸せそうな笑顔。
 
その笑顔を見て私は、彼女が幸せになってくれるのならば、この自分のモヤモヤした気持ちなんてどうでもいい、そう思った。
 
ゆきちゃん幸せそうだな。これでよかったんだ。
本当によかった、本当によかった……
 
私は目から涙がこぼれるのをこらえることができなかった。
 
 
それからさらに数年がたった。彼女のおかげですっかり女性慣れすることができた私は、合コンに行ったり、いろいろなところに出ていくことができるようになっていた。その甲斐あって、めでたく恋人もできた。
大輔とゆき夫婦には子供ができて、目下子育てに忙しいようだ。他のみんなも忙しくなり、昔ほどは集まることはできなくなったが、友人関係は続いている。
今年も彼女から年賀状が届いた。
 
「お元気ですか? あんまり会えなくてさびしいね! 遊びに来てね! ゆきより」
 
彼女はいつになっても、私にとって特別な「ただの女友達」であり続ける。
 
***

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2018-03-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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