メディアグランプリ

レポート用紙が親友になった話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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文章:K (ライティングゼミ平日コース)
 
 
「あー、もう、どうしたらいいかわかんない……」
絶望的な気分で、夜の街をさまよう私。
 
つい1時間前、ささいな言い合いが大きなケンカに発展してしまい、夫が部屋を飛び出した。そして、直後彼からこんなLINEが届いた。
 
「もう声を聞くだけで蕁麻疹がでる。顔見るだけで吐きそう。遺伝子レベルで嫌いだし絶対子どもなんて欲しくない。今仕事が大変な時期だから2ヶ月は家に帰ってこないで欲しい。出ていって欲しい」
 
それを読んだ私はこのまま家にいると絶対いいことがないと確信した。早くここから出なきゃ。数泊分の荷物をまとめ、急いでリュックに詰めた。危機回避の本能のまま夜の街を歩き始めた。
 
でも、どこかに行くアテがあるわけでもない。日曜の夜9時。とりあえず近所のカフェに入って親友に経緯を報告して気持ちを落ち着ける。同情と慰めと戒めの言葉を何重にもかけてくれる信頼できる親友がいるという自分を、傷ついている中でも誇らしく思った。
 
優しい言葉をかけてもらえると涙がにじむが、不思議と号泣することはない。30代も半ばになると、だいぶ肝が座ってくるんだな、と自分を客観視していた。
 
カフェからスマホで宿を検索し、なんとかその日に眠れる場所を確保した。
 
小さなベッドに横たわっても、なかなか寝付くことができない。家から持ってきたレポート用紙とボールペンを取り出し、そこに自分の感情を書きなぐることにした。
 
「理不尽。ひどいこと言われすぎ。傷ついた。わたしかわいそう。助けて欲しい。なんでわたしばっかり。どうして大切にしてもらえないの?」
 
レポート用紙に自分が書いた文字が、頭の中で別の人の言葉のように再生される。
そう、どうして大切にしてもらえないんだろう、わたし。
 
そこまでの言葉を区切るように、横に1本線を引き、また違う視点で感情を書きなぐる。
 
「大切にされるってどういう状況? わたしは夫のことを大切にできてるの? どういう扱いをしてもらったら満足なの? 今わたしが不満に思っていることって何?」
 
レポート用紙がまた、またわたしの脳みそをかき回すような質問をしてくる。
わたし、どうしたら満足できるんだろう?
 
「そんなの家族がうまくいくのがいいに決まってる。うまくいく家族って何? 我が家が一番大切にしなきゃいけないことって何?」
 
我が家が一番大切にしなきゃいけないことか……。
そうそこで、私は我が家で一番大切にしなくてはいけないものを見失っていたことに気づいた。結婚する前は絶対に忘れなかった信念にも近い気持ちを、結婚生活の中で見失ってしまっていたのだ。こんなに大切なことなのに、なんで忘れてしまうんだろう。
 
「大切にしなきゃいけないことを、いつも忘れちゃうのはなぜ?」
 
わたしは、前回のケンカに思いを巡らせる。わたしが感情的になって強い口調で夫を非難する。夫はその時、今日とまったく同じように反論したのを思い出した。わあ、3ヶ月前と何も変わってないわたし……。
 
「どうして毎回同じような間違いが起きちゃうの?」
 
うーん、どうしてだろう。生活していると、視野が狭くなって行っちゃうんだよね。眼の前のことしか見えなくなっちゃう。大事なことを思い出す機会が少ないからかな。
 
「どうやったら大切なことを見失わずにすむと思う?」
 
わたしが納得するまでレポート用紙はわたしに問いかけ続けてくれた。わたしはそれに答え続けた。
 
時に質問と関係ない感情が湧き出てくる。そんな時は1枚ページをめくり、そこに感情をぶちまけた。
 
私の頭の中の飛び飛びな話を、何人ものレポート用紙が受け止めてくれる。どれだけ話が飛んでも、すぐキャッチしてくれる。戻りたくなったタイミングで、戻りたい話に戻れる。何人ものレポート用紙と同時に夢中で会話を続けた。
 
いつのまにかレポート用紙の上で寝ていた。朝が来た。
スマホを見ると、昨日相談した友人から様子を伺うLINEが届いていた。本当にありがたい。
 
そして、枕元に散らばっているレポート用紙を読み返して、少し涙ぐんだ。仲直りをするための手がかりが、こんなにたくさんある。今、夫にどんなメッセージを送ればいいかを考えている。
 
わたしは、親友のリストにレポート用紙を加えるべきだな、とぼんやり思った。

***

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2018-03-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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