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メディアグランプリ

怒ってくれてありがとう、永田町


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:吉村心音(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「もしもし、私だ」
「はい、お名前を教えていただけますでしょうか」
「私と言ったら私だ!」
「だから、どちらの……」
 
往年のドリフターズに出てきそうなやり取りだが、電話をかけてきたのが、ボスである代議士で、電話を受けているのが代議士の秘書になりたての私である。
国会議員事務所は零細企業のようなものだから、ボスがわざわざ名乗らずとも秘書は声だけで本人と判断するのは当然のことだ。
 
私は、20代の6年間を永田町で代議士の秘書として働いた。
後にも先にも、色んな人に色んな理由であれほど怒られまくった時期はない。
 
「ボスより早く食べ終わらなきゃでしょう。その蕎麦、氷いれて食べなさい」
アツアツの天ぷら蕎麦を慌てて食べていたら、先輩秘書に言われた。
知らなかった。
秘書が、作るのにも食べるのにも代議士より時間のかかるメニューを頼んではいけないことを。
 
「早く来たのに、何で誰もいないのよぉ!?」
知らなかった。
代議士の地元後援会のバス旅行に、集合時間の10分前到着では遅すぎることを。
ご年配の方は、集合時間の30分前には全員集まるので、予定された集合時間よりもだいぶ早く出発することを。
大事な後援会の皆さまは点呼され不在を確認されるが、秘書は点呼も確認もされないということを。
 
選挙の時は、日常業務よりも増して怒られた。
国民の皆様にも沢山怒られた。
ウグイス嬢として、朝から晩まで選挙カーにのり、声高に候補者の名前を連呼しながら町内を廻っていると、
「うるせー!」
と怒鳴られまくった。
国民のうるさいというご意見を大切にし、小さい声でウグイスし始めたら、
「聞こえないでしょ。もっと大きい声でやりなさい」
と、先輩秘書に怒られた。
通勤時間帯の慌ただしい駅でチラシを配っていると、
「ジャマ!」
と言われまくったし、受け取ってもらえたと思ったチラシを丸めて投げつけられたりもした。
 
選挙運動の途中、私は運動員スタッフを労り、のど飴を配っていた。
通りかかった酔っ払いが
「おじちゃんにも一つちょうだい」とふざけて言ってきたので、
「どうぞどうぞ」とお渡しした。
血相を抱えた先輩秘書に、
「買収だぞっ! すぐに追いかけて取り返してこい!」
と言われた。
公職選挙法では、数円程度のあめ玉でも処罰対象に該当するのだ。
私は、運動員の手前、情けなさと買収という言葉の重さに涙が出そうになりながらあめ玉を回収に走った。
 
正直に言うと、私は、怒られるたびに傷ついたし、心の中でふてくされることも多々あった。
自分が悪いと思うことが殆どであったが、人前で怒られるのはできない自分を晒しているようで恥ずかしかったし、お酒を飲んでは愚痴って泣いたし、度々怒ってくる人には心の中であだ名をつけたりしていた。
さすがに、腹の中の「こんにゃろー」を顔と態度に出さないように気をつけてはいたが、間違いなく漏れでていただろう。
 
特に打たれ強いわけではない私が、なぜ怒られまくりながら、6年間もやる気を失わずに働き続けられたのか。
 
今ならわかる。
私の糧となり為になることを教えてもらっていたからだ。
 
私は、やらかした行為に対しては沢山怒られたが、幸い人格に対してはあまり怒られなかった。
だから、「こんにゃろー」と思いつつも、怒ってくる人を嫌いにはならなかったし、言われたことは気をつけて二度と同じこと言われないようにしようと思えた。
一瞬は自信を失っても、一晩寝たら回復できる程度で自己否定感にさいなまされることにはならなかった。
 
永田町にいた6年間は、私のゆるゆる根性と甘えた学生気分を沢山怒られた。
怒られたというよりは、怒っていただいたという表現の方が今はふさわしいと思っている。
 
だって、あの6年間がなければ、私は、色んなことに気付かないまま直そうとも思わないまま過ごしてしまっただろうから。
怒ってもらって本当にありがたかった。
 
怒り方は、2種類に分けられると思う。
 
為になり成長を促していく怒り方と、やる気と自己肯定感をくじき成長につながらない怒り方。
 
私は、怒ることに対してこんなおススメと実践をしていきたい。
 
一般的に、“怒る”は感情を爆発させることで、“叱る”は相手の為になることを教えていくという定義があるが、それはそうだな、と思う。
冷静に叱れればよいが、人間だから、いつも怒らないでいるのは難しいだろう。
 
怒ってもいいと思う。
私は、怒らない人を目指すつもりはない。
目指したいのは、できたら冷静に叱ろうとする人であり、それが難しいボルテージにいる時は、行為に対して怒っても人格は怒らないという点だ。
 
そして、怒られ方も心得ていきたい。
行為に対して叱ったり怒ってくれる人には、素直に耳を傾けていくこと。
自分の成長につながる言葉をかけてくれている人に対して、ふてくされて恨むだけで終わらせてしまうのは勿体ないし失礼だ。
 
受け取らなくてよい怒りもあることを知っておきたい。
人格について怒ってくる人に対しては、大人らしく表面上は穏便に済ませ、心の中では受け取る必要ない。
感情のはけ口にしてくる怒り方は、怒られる側ではなく怒る側の問題だからだ。
 
いっぱい怒ってくれてありがとう、永田町。

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2018-03-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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