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メディアグランプリ

お茶は人見知り病の特効薬


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:木戸 古音(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「あー疲れた」
目上の新客が僕の家に来て酒盛りをして、まあなんとか、喜んで帰ってくれた。
だが人見知りが激しい僕にとって
客人が長居したあとは決まって
「楽しかった、けど、あー疲れた」
ガツンと疲労の大波が寄せてくる。1、2日はぐったりである。
僕の人見知りは、いくつになっても直らない。
「こんなことではどうしようもない」
と思うのだが如何にせん、小さいときからのこの性格は簡単に直せるものではない。
幼い頃の僕の恥ずかし屋の、程度のひどさは特別だったと聞く。
遠来の久しぶりの親戚はおろか、集金のおじさんが来ても
母親のエプロンの影に必死になって隠れている始末であった。
成人した今も、酒は飲めない、人付き合いも悪い、最悪である。
かっての映画監督鈴木清順とその弟で元NHKアナウンサー鈴木健二のおふたりは
小さい頃は監督の兄が饒舌で、アナウンサーの弟は無口だったという。ところが成人してからは性格面でまったく逆転したと聞いた。
残念ながら僕の兄弟、そして僕自身を見る限りずっと現在に至るまで性格は、さほど変化していないようだ。
治りっこないのだろうか。
 
興味深い記事をみつけた。
日本人の老人が生まれて初めて東欧圏をひとり旅して来たときの話。
彼は英語もしゃべれない。
行く先々、街角に座って折り鶴を折っていたという。
現地の子どもは怖さ半分、興味半分で近寄ってくる。折ったばかりの鶴を差し出すと子どもたちは喜んで退散していったという。
又別のとき、一人の少女が近づいて一心に手元を見つめているので丁寧に折ったものを差し出した。
すると少女は、お礼らしき一言の言葉もなしに立ち去っていった。
老人は別に気にも留めなかった。
ところが老人を驚かすちょっとした出来事があった。
先ほどの少女が戻ってきたのだ。
そして老人に今摘んできたのだろうか、ちいちゃな手に握った野の花をそっと差し出したという。
 
その記事に大切な事を教えてもらった。
そんな頃から僕は絵の活動で海外に行くとき
必ず準備する事がある。
抹茶と茶せんと気の利いた日本のお菓子を持参すること。大して荷物にもならない。
現地の1ユーロショップで茶碗になりそうな適当な、うつわを調達する。
ミニ茶会を行った先々でやる。持参した着物を着てお茶を振舞うのだ。
そして肝心な事が一つある。
それは相手にも簡単な手前を真似てもらう事、僕はこのことが肝要だと思っている。
老若男女誰しもが目を輝かして僕の一挙手一投足を見つめている。
さらに最後の決め手がある。
旅先でとりわけお世話になった人に、茶会後、着ていた着物を差し上げる事にしている。
別のミニ茶会では、フンドシを差し上げる事にした。海外では結構喜ばれる。
「おっと、おっと、ちょっと待ってください、それって」と疑問の声があがるかも。
やにわに僕は答えるだろう。
「ご安心下さい、日本で調達したおニューの品ですよ」と。
大抵の男性はその場で包みから取り出し装着の仕方を聞きながら、ズボンの上に試着し始める。
英語も片言のうえ、人見知りの激しい僕がこんなミニ茶会によって
親密にこころを通わせられる事がわかる。
僕は大いに自信になった。
 
日本国内のスケッチ旅行でもお茶セットを持参するようになった。
画材にまぎれて、万一壊れても差し支えない程度の茶碗を、籐編みのバスケットに放り込んでいく。
茶菓子は旅先の菓子司で極上の一品を調達する。それも楽しみの一つだ。
新潟県小出の宿でのこと。深雪での画作に疲れ果てて、ようやく宿にたどり着いた。
夕食後仲居さんに、
「ポットに熱めのお湯をお願いできますか」
と願い出る僕に
「どうされますか」
と尋ねるので
「地元のいいお菓子を見つけました。ちょっとお茶を点てたいので」
と答える。
その後びっくりすることがおこった。
しばらくして
「女将でございます」
と清楚な着物姿の女性が炭を持ってきた。
その女将さんは部屋の真ん中にある囲炉裏端に歩み寄って炭を、いこしはじめたのだ。
「どうぞお湯が沸きましたら楽しんでくださいませ」
と退出した。
お茶でいきなり女将さんからの接待に預かる事ができた。
 
気を良くした僕は自宅でも来客があれば日本人であろうが
それこそ無手勝流でお茶を振舞うことにしている。
お茶を点ててくれたということで、来客にはそれなりの印象をのこしているらしい。
人見知りな僕にとってこれはとても貴重な事件である。
 
気候のいい日には近くの御所や鴨川べりで花をめでながら緋毛氈を広げて野点をしたり。
そのなかでもとりわけ忘れられないのは友人と登った大文字山でのこと。
頂上の「大」の字のど真ん中に祠(ほこら)がある。その前で京都市内を眼下に一望しながらお茶を点てたことである。
 
人見知りする僕が気楽なお茶会をすることで人とのコミュニケーションの輪ができることに驚きと歓びを味わっている。
こんな特効薬を教えてくれた周りの人々に感謝の気持を伝えたい。
あすはミニパーティーに誘われている。
やはりお茶セットを持っていくのがいいですかね。

***

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2018-03-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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