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メディアグランプリ

福岡は修羅の街


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:北古賀昌子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「いやいや、それは違うよ!」
私は自分の顔の前で手を大きく振りながら言った。
「そもそも、あなたの周りじゃ福岡はどんな評価なん?」
姪っ子は怪訝な顔をしながら小さく「だって……」と答えた。
 
話しはこうだ。
姪っ子は大学の院を卒業するに当たり、研究室に残るように学校から勧められたものの、彼女の希望は心理士として現場で子ども達と向き合うことで、就活を自ら始めるに至った。
そこで自分の想いに叶った職場を探すため、全国の障害児の療育訓練に携わる施設を探していた。
そして思い出したのが私のことだったようで、叔母がいるから福岡も検討してみたいと周りに話したらしいのだ。
そこで出るわ出るわ「福岡は止めておけ」という言葉が。
それが姪っ子の気持ちをすっかり削いでしまったようだ。
私は首を傾げた。
何で「福岡は止めておけ」なん?
姪っ子は続けてこう言った。
「福岡は、修羅の街なんだって」
はい……?
 
いや、さすがに私もどうしたものかと思った。
福岡は発砲事件や強盗がよく起きていて、命に関わると言うのだから驚いた。
私はもともと福岡出身ではないが、ここに住んでかれこれ20年近くになる。その間に目の前で拳銃を持ったヤツなんか見たこともないし、ましてや近所で発砲されたなんて聞いたこともない。周りの誰も撃たれてないし、殺されてもないぞ?
強盗のニュースなんて、姪っ子の住む東京の方が人口も店も住宅も、福岡とは比べ物にならない程の数だから、逆に多いくらいだろうに……。
そもそも、福岡の印象がそんな劣悪なものとは全く知らなかった。
福岡は食べ物も美味しく、奇麗で元気のある街と評価されているとばかり思っていた。
それが大間違いだったことに20年目にして気付かされたわけだ。これにはショックだった。
 
そこで、福岡の印象として他に何があるか聞いてみた。
これまたびっくり、他にはないと言い出す始末。
え? 他にはない??
この時ばかりは、苦笑いするしかなかった私だった。
 
結局、姪っ子は東京で就職を果たし、希望通りの仕事に赴くことが出来た。
しかし、思えば福岡は酷い印象のままなのである。
これは誤解を解かなければならない。いや、福岡の魅力を姪っ子にも知ってもらわねば!
拳銃の話しは別としても、何か姪っ子の好きな人物や自然について、福岡の魅力に迫れるものはないものか……。
 
実際真剣に考えてみた。そこで思い出したわけだ。
そう、姪っ子は心理士なのである。人間の観察には長けているはずだ。
福岡の人間像について、未だ私にとって不思議で興味深いことをひとつ、ブツけてみたいと思った。
福岡人は商人気質(あきんどかたぎ)で祭り好きである。よそ者の私には、福岡人の凛とした姿が眩しく目に映るのだ。
博多と言えば「博多祇園山笠」だ。「山笠」と呼ばれているこの祭りは、櫛田神社に奉納される国指定重要無形民族文化財に指定された神事である。
私は、この祭りを境に変貌していく男衆のことが、とても興味深く思えるのだ。
私の知り合いの男性の中にも、祭りが始まると変貌を遂げる人がいる。
普段はおとなしく穏やかで優しい男性であるが、神事が始まる7月1日からすっかり別人に変わってしまう。
祭り期間の15日間、どこにいても法被姿で過ごし、キュウリは絶対に口にせず、学校給食にさえキュウリは登場しないという謎の徹底した“しきたり”まである。
そんな中、その穏やかで物静かな男性が勇壮に肩で風を切って、凛として歩いている姿を見かけるようになる。声を掛けるのもはばかる変貌振りに毎回驚かされてしまう。そして、博多の街がそんな男衆であふれかえるのだ。
それなのに祭りが終わると、すかっりまたいつもの男性に戻ってしまう。その呆気なさに、更に驚かされるのだ。
姪っ子にはあの、人の変貌する不思議な祭りの正体を、心理士として紐解いて欲しいと思うのだ。
答えを聞くのが今から楽しみである。
 
福岡は祭りもホットだが、自然がまた素晴らしいと声高に言おう。
今は糸島が有名でブランド化もされている。観光客は糸島を目指してやってくる。
しかし、ここで敢えて言おう。
ぜひ、志賀島を一周して欲しい。
実は志賀島は、今から13年前に西方沖地震で甚大な被害を受けた陸続きの島だ。漢委奴國王印(かんのわのなこくおう)の金印が発見されたことで有名な島だが、何といっても私が一押しなのは、その島の海岸線をぐるっとドライブすることだ。それは、島を一周する間に、全く違う2つの海と出会うからだ。
いや、これは絶対に驚くはずだ! 私は、その2つの海に会いたくなって、よく海岸線に車を走らせる。
天気がよければ、島の入り口からしばらくは穏やかで静かな海と出会う。風も穏やかに吹いて心地よい。島を半分過ぎてからは、急に荒々しい波とゴツゴツした海岸に姿を変える。風も身に刺さるほど吹付けてくることもある。
これは海が、島を回っているうちに太平洋から日本海に変わるからだ。
明るく穏やかな前半の海はポップスをバックに、そして白い波しぶきが道路にも飛び込む勢いの後半は演歌をバックに流すとぴったりだ。
ドライブが終われば、この島の漁師町を散策して欲しい。魚はどこも美味いが、何よりここの人情漫才は必見だ。ヨレヨレのおじいちゃんのボケと、チャキチャキのおばちゃんの突っ込みが無料で見られる。これこそ最高のお得感をもたらすのだ。
 
それから、それから……。
旅の本にも載っていない福岡のあんなこと、こんなこと……。
あぁっ! 伝えたいことだらけだー! 
だけど悩む。どう伝えればいいのか……。
こんな私には到底手に負えない。
どうすればいい? どうすればいい??
この伝えられないジレンマこそが修羅だ!
 
「もう伝えきれんから、とにかく現地に来てよ」
私の言葉に、姪っ子は「遊びに行くよ!」と答えた。
 
いらっしゃい、修羅の街。
福岡は修羅の街。

***

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2018-03-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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