メディアグランプリ

旅嫌いが旅をしてみたら


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記事:まる(ライティング・ゼミ平日コース)

不思議なことが、起きていた。
そこは、見渡す限りの山に囲まれていた。
「旅はコスパが悪い」
と言っていた私が、だ。
なぜかぶらりと一人旅に出ていた。
その旅は、作品となった。

あれは1週間前のこと。
私は、悩んでいた。
その時無職で行き先も特に決まっていなかった私は、春からどういう風に働いていこうかと、悩んでいた。
根本となる疑問は一つだけだ。
“満ち足りて生きて行くために、一体何が必要なのか”
東京にいると、色々な人に会えて、素敵なショーも見れて、楽しい。
でも、生きるということが疎かになっている気がした。コンビニ弁当を食べることも多かった。
だから、一回生きるということを学びたかった。

ふと、思いついた。
そうだ。田舎で暮らしてみよう。
田舎に移住した人に会いに行こう。

そこで、ネットで移住者が多い田舎を検索し、その中でとあるゲストハウスを見つけた。
旅嫌いの私は、“宿泊料高いなあ……”とか、“行ってお金をかける意味あるのかなあ……”とか先に考えてしまう。
しかし、その宿には、宿泊料を差し置いても、なお私を引きつける魅力があった。
“田舎暮らし”、そのマジックワードに惹かれ、泊まりに行った。

当日朝。
全くノープランだったので、のんびりと行きの列車を調べていた。
途中、昼寝をして乗換駅を寝過ごすくらい、わくわく感はなかった。
とはいえ、列車に揺られ目的地には到着した。

偶然、客は私ひとりであった。
そのため、スタッフの方が気にかけてくださり、一緒に温泉に入ることとなった。
彼女もまた、都会からの移住者であった。
その方に仕事のやりがいについて聞いたところ、自分の使命について話してくれた。
「自分の周りの人を癒やしてその人が元気になれば、その人がまた周りの人を元気にできるはず。小さなことかもしれないけど、そうやって皆が幸せな社会になればいいなって」
そう語る彼女の笑顔は、輝いていた。
……そうか。小さなことからはじめれば、いいんだ。
一つ、腑に落ちた。

そして温泉を出ると、その温泉のスタッフさんがたまたま話しかけてきた。
そして彼女もまた、移住者であった。
「なんでこういう話をしたのか分からないけれど、何か話さなきゃと思って」とおっしゃった。
「身体は本当に必要なものをわかっている。身体には自然の力があるってここに住むようになってから思う」
しみじみと、実感の伴った語り方だった。
……そうか。身体は、何が必要かをわかっているんだ。
また一つ、腑に落ちた。

田んぼの様子も見させてもらった。
今は田植えに向けて土を整える時期だということだ。
色々な虫が、葉っぱが、合わさって泥となって苗を迎える準備をしていた。
……そうか。生き物は、共に生命を育んでいるんだ。
また一つ、腑に落ちた。

旅の一つ一つが、心に積もっていく。
普段悩んでいてなかなか動けなかったことに、びっくりするほど早く答えが与えられた。
もしかしたら、旅はコスパが悪いわけじゃないかもしれない。
といっても、観光スポットを巡っているわけでもないので、目をみはるような楽しみはない。
でも。少なからず、心が満ち足りていく様子を感じていた。
もしかしたら、旅をつまらなくしていたのは、自分自身だったのではないか。

道中に寄ったレストラン。
デザートがとても美味しかったので、カウンターで隣に座った方に分けようと思った。
「良かったら食べられますか? 先程興味を持たれていたので」
とても、喜んでくれた。
そればかりか、 “旅のお供に”と、わざわざ外に出て和菓子を買ってきてくれた。
本当に親切な方で、心がとてもあたたかくなった。
……そうか。自分から行動すれば、何か変化が起きる。
その小さな変化が、だんだんだんだん、大きなものになっていくのかもしれない。
それは、以前の行動しなかった自分には見えなかった世界だ。

旅は、決まりきった体験ではない。それは多くの偶然が含まれている。
きっとそれは作品なのだろう。
自分という媒体によって、まだ見ぬ世界というものを表現した、作品なのだ。
だから、自分がどう感じるかで、その様相が全く変わってきてしまう。
私がかつて旅嫌いだったのは、恐らくつまらない作品しか作ることができなかったからだ。
それはきっと、必要なものがわからず必要でないものを求めてしまったからかもしれない。
あるいは、小さな行動は無駄だと決めつけ、自分から行動を起こそうとしなかったからなのかもしれない。
“満ち足りて生きていくには、何が必要なのか”
旅を好きになる過程は、その問いに対する答えを出す過程であった。

帰りの列車に乗っていると、一瞬にして視界が春に染まった。
一面に、桜並木。
桜の花びらが一斉に散っていた。
ただ、美しかった。
言葉を失うくらいに、美しかった。
感動のあまり涙が出た。

その時私は、確かに生きていた。

***

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2018-04-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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