メディアグランプリ

失敗は奇跡なのかもしれない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:ももの(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「お客様、お会計5500円になります」
「あ……、はい……」
一瞬、自分がどこにいるのか、わからなくなってしまった。
ゆっくりと、息を整え、こぼれる涙をぬぐう。
 
そうだ、私ネイルサロンに来ていたんだった! 
ここに来るのは、初めてのことだった。
ネイルサロンの形態としては、珍しい一戸建ての建物で営業しており、半個室のような空間が、6つある建物のつくりになっている。
 
そうだ、2時間前に、担当者の人に説明されたんだった。
「ネイル施術の間、映画を見ることができますよ」
ネイリストさんが、手馴れた手つきで、ネイルケアを始めている。
私は、リモコンを片手に、映画配信サイトを検索し始めた。
自分でも自覚しているが、私は時間について結構ケチだ。時間当たり、どのぐらいのことが、どうしたら効率的にできるか? という思考が発動してしまう。
頭の中で計算し始める。
施術が2時間だから、2時間以内で終わる映画。
それから、映画自体が激しすぎないこと。
邦画を見ていて「愛してる!!」とかいうセリフがでてきたら、なんとなく、
ネイリストさんもドン引きするに違いない。
となると、見れる映画は、洋画。そして2時間以内。内容も効果音もあまり激しすぎないもの、と検索の方向性を決めた。
ジャンルごとに眺めていくと、なかなか要件に当てはまる映画が見当たらない。
20分が過ぎたころだろうか、1本の映画が目にとまった。
実話をベースにした家族の話で、上映時間は2時間とあった。
よし、これならネイリストさんに引かれれることなく、爪が仕上がるころには、映画もピッタリおわるし、時間の使い方も完璧! と思い決定ボタンを押す。
 
2年ぐらい前の映画だった。テキサスに住んでいる家族の話だった。
家族の一人が難病にかかってしまうというストーリー。
開始10分ぐらいで、10歳になる次女の具合が急激に悪くなってくる。
私は8歳になる娘がいる。年が近いこともあり、瞬時にストーリーに引き込まれてしまった。
娘が急に難病を発症してしまったという絶望。家族の苦悩。経済状態が悪化していく様子…… 
怖さもあり、治癒してほしいという希望もあり、いつしか私は前のめりになって画面に食いついていた。
「お客様、左手出してください」
はっ! となり、手を動かす。巻き戻して、セリフを再生して、一言も展開を逃すまいと見ている自分がいた。
ストーリーはアップダウンを繰り返しながら、クライマックスに突入していく。
私は感情移入度合いがMAXになっており、気がついたら、涙が頬をつたっていた。
そんなときである、私の施術時間が終了したのだ。
お会計を促され、意識を今に必死になって戻す。
時間を有効活用するプランは、あっけなく失敗に終わった。
ネイルは仕上がったが、映画は一番いいところでブツ切りになってしまった。
 
この光景、ネイリストさんも慣れているようだった。
「みなさん、なかなか1本見終わらないで終了時間になってしまうんですよね」
 
こんなことなら、映画なんか見るんじゃなかった……。
 
中途半端にいいところまで見てしまったから続きが気になって他のことが手につかなくなってしまった。
いうまでもなく、私がネイルサロンから直行したのは、レンタルDVDショップだった。
何をしているんだろう、これこそ、時間の無駄なんじゃないの? という自分の声が聞こえてくる。
DVDを借り、家で続きを見た。しかも、クライマックスのところから。
再びすぐに感情移入できるのは、私の強みかもしれないと思いつつ、早送りボタンで進めていく。そして物語は感動のハッピーエンドで幕を下ろす。
映画の中でとても素敵な言葉を見つけ、手帳に書き写す。
アインシュタインの言葉だそうだ。
「人生は二つの道しかない。奇跡などまったく存在しないかのように生きること。もうひとつは、すべてが奇跡であるかのように生きること」
私がこの映画をネイルサロンで、たまたま見つけたのも「奇跡」
そんなことを思ったら、日常にあふれる奇跡を数えたくなってくる。
自分の身体が、毎日健康でいてくれるのも奇跡。
仕事ができることも奇跡。
娘が「行って来ます!」と学校へ行くのも奇跡。
電気がついて、水がでて、食べるものに困らないことも奇跡。
なんだ、奇跡って、特別なことじゃないんだ。
私の身の回りにあふれていることなんだ。そう思ったら、奇跡を探すのが楽しくなってきた。
これからいくつの奇跡をみつけられるだろう。
そして、見つけた奇跡の数だけ、感謝しよう。
日常は、見方を変えるだけで、幸せにあふれた世界になる。
トラブルも、クレームも、見方を変えれば、きっと奇跡につながっていくんだ。
ネイルサロンに何をしに行ったのか、よくわからない結果となったが、爪はピカピカにしてもらい、「奇跡」のおまけまでつけてもらった。
また、あのネイルサロンで「奇跡」を探してみようかな、と思った。
 
※映画 「天国からの奇跡」(2016)
 
 
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2018-04-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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