メディアグランプリ

頭のハゲたお人形で遊んでいた、あの頃と今と。


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記事:岩田静香 (ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「わたしね、可愛いお人形がほしいの。リカちゃんって言うのよ」
5歳位だったと思う、お父さんにおねだりした。
父はダム等の現場監督をしていて、月に一、二度しか帰ってこれなかった。
そのたびに、可愛い娘の為、プレゼントを買ってきてくれる優しい父。
 
ただ、センスが悪かった。
 
伝え方が悪いのか、田舎にはそんなに立派なお店や玩具屋さんがないのかはわからないが、お願いした大抵のプレゼントは裏切られた。
 
もちろん良い子の私はそんなことお父さんには言わない。
子供って状況をよく理解している。「お父さんが選んでくれたんだ。お仕事で忙しいのに買ってきてくれた」とわかっていた。だからそれが欲しいものと違っていても嬉しかった。
 
 
1ヶ月後、お父さんが買ってきてくれたお人形は、やはり、リカちゃんとは違っていた。
リカちゃんよりもかなり大柄な女の子だった。
とはいえ、金髪の真っすぐなツヤツヤの髪をポニーテールに束ねた、とっても綺麗な顔立ちのお人形さんだった。
 
その子の髪をとかしてあげようと束ねたゴムを外すと、てっぺんが剥げていた。
お人形のヘア全部植毛すると費用がかかるのだろう。経費節減なのかどうかは定かではないが、とにかく金髪の落ち武者みたいな風貌のお人形になってしまった。
子供心にも、少し悲しかったことを覚えている。
 
 
そんなある日、リカちゃんを手に入れる機会に恵まれた。
近所に大きな地主のお家があって、そこの犬に噛まれたのだ。
女の子にけがをさせてしまったと、とても気遣ってくれた。
その時、多分、リカちゃん人形を買ってくれたように思う。
多分、嬉しかった……はずだ。
そう、多分。
 
なぜ、多分なのかというと、実は記憶がないのだ。
あんなに欲しかったリカちゃん人形だったのに、リカちゃんと遊んだ記憶がないのだ。
 
覚えているのは、ブレーメンの音楽隊のような、へんてこなお人形達の事。
ちぐはぐな寄せ集めの、へんてこなお人形達の事だ。
 
例えば、タンスの上にある青いドレスを着たフランス人形の、ドレスをミニスカートにしておんぶしてたことや、そして金髪の落ち武者のお人形が可愛そうだと、頭を色で塗ってあげたことや、柔かいゴムでできたゾウとトラも仲間に入れてお人形遊びに没頭してたこと。もはやお人形ですらないない仲間達だけど、空想の世界は、それはそれは楽しかった。
 
 
思い出って、案外とそういうものかもしれない。
ちゃんとできたこととか、上手くいったことなんて、あんまり記憶になくって、
失敗したこととか、創意工夫をしたことはよく覚えている。
 
出来合いの完成されたものよりも、自分で考えて作り上げたほうが楽しいに違いない。
 
 
今もそうだ。
趣味で自然農法の畑をしている。
自然農法は、耕さず、農薬や化成肥料を与えずに野菜をそだてる方法だ。
もちろん、畑を始めた頃は、畑には詳しいおじ様たちの指導を受けながら、「野菜の正しい育て方」を聞きながらスタートした。
そんなある日、畑に植えきれなくなったキャベツや白菜の苗を、草むらに植えてみた。
そしたら、草むらで守られたおかげなのか、虫にも食われずに元気に成長していった。その場所には肥料もあげてなく、耕しもしていなかったのにちゃんと野菜が出来た。
 
「自然の中で野菜が育つんだ」目からウロコだった。
 
野菜だって同じ植物だ。そんな当たり前の事に目覚めてから、色んな実験をしてみた。
まずは、草を抜かないで放置した。近所の人からだらしないと言われたけれど、実験だから気にしない。すると、土が乾かないし、水を撒く回数が少なくていいことがわかった。
 
たとえば、同じ畑に同じ種類の野菜を続けて育ててはいけないというルールがある。連作障害といって、同じ場所で連続して栽培すると、生育が極端に悪くなったり、枯れてしまうといった障害がおきるから。でも元々植物はその場所で育って、花が咲いて実になって、種が出来て落ちて、翌年また育つ。なのに野菜だけなぜ同じ場所で育たないのかが不思議だった。だから育ててみた。化学肥料を入れずに育てると、同じ場所でも育つこともわかってきた。
 
もちろん、沢山失敗もしている。白菜の葉っぱが丸まらなかったり、玉ねぎを育てたつもりなのに、ミニ玉ねぎにしか育たなかったり。
 
今年は苺を無肥料で育ててみる。多分、甘くならないだろうが、それも実験だ。
野菜は農薬も肥料も使用していないので、本当に安心だ。
楽しくって、そして美味しいのだ。
 
はじめてから数年たつけれど、いっぱい失敗して、作り方や育て方を考えて、創意工夫したことって、やっぱりよく覚えていて、身についている。
そして野菜は結果という実が出来るので、本当に楽しい。
 
お人形遊びが畑遊びにかわった今。だけど、ブレーメンの音楽隊のような、へんてこなお人形達で遊んでいた頃とちっとも変わらない。
たとえ失敗したって、出来合いの完成されたものよりも、自分で考えて作り上げたほうが楽しいに違いない。
 
 
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2018-04-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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