メディアグランプリ

ヤキモチは冷めてから食え


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:玉木裕子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「なんで、奈々ちゃんが先に結婚するの?!」
行き場のない怒りを、思い切り彼氏にぶつけた。
「いいねん、これで。順番通りになるから俺も気が楽になるわ」
 
彼は、三兄弟の真ん中。ひとつ年上で英語がペラペラ、グローバルで優秀な兄と、背が高くてイケメンな3つ年下の弟に挟まれた、釣り好きでマイペースな次男。
彼と私は、学生時代からの付き合いで、付き合って5年の月日が流れていた。
第1次結婚ブームが落ち着きつつある頃だった。「私もそろそろ結婚かな〜」などと呑気に思っていた矢先、「兄と奈々ちゃんが結婚するってさ」と彼から知らされた。
兄と奈々ちゃんの交際期間は、たったの8ヶ月だ。
 
「なんっでやねん!」
心の底から湧いてきた、渾身の「なんでやねん」だった。
 
次男の彼としては、ひとつ年上のお兄ちゃんに先に結婚してほしい、と思うところがあったらしい。けれど、こっちは知ったこっちゃない。5年も付き合っているのに。
なんで奈々ちゃんの方がしれっと「高橋」の姓になるの? 私が、憧れて憧れて、憧れてやまない「高橋」に。いや、正直、「高橋」に憧れがある訳じゃない。今の苗字の方が覚えてもらいやすいし、あだ名もつけてもらいやすい。
だから、日本人に3番目に多い苗字の「高橋」になるのは、むしろちょっぴり嫌だけど、
「新しい苗字になる」そのことが、年頃のわたしにはとても重要だった。
 
 
お相手の奈々ちゃんは、私と同じ歳。
かしこくて、英語がペラペラで、飾り気のない、東京の人。
グローバル気質だからか、サバサバしていてあまり気が利かなくて、結納の時には気の利かなさが原因でちょっと揉めていたし、結婚式の翌日から新婚旅行にボリビアまで行くことを、直前まで両親に伝えていなくて「ま、なんでもいいんやけどな」と、関西のおばちゃんが「どうでもよくない時」に繰り出すセリフを100回ぐらい言われていた。
 
私は、家族ではないけど、父の日も母の日もプレゼントを贈って「ちゃんと」していた。
なんで、ちゃんとしていない奈々ちゃんが私より先に嫁になるんだ。
「家族ではない」ということが、まるで認めてもらえていないような気持ちにさせた。
悲しくて、そして、怒りの矛先を奈々ちゃんに向けた。
 
さらに、新婚旅行先のボリビアが、長年の私の憧れの地だったことが、怒りを倍増させた。ボリビアの、ウユニ塩湖。
ずーっと行きたくて行きたくて、感動を薄れさせないために、あまり写真も見ずにとっておいた場所。奈々ちゃんは新婚旅行に行ってしまう。
 
そして、旅行が終わると、イギリスに転勤し、海外勤務になる。
すごすぎる。
もうヤキモチを焼くのも恐れ多いくらい、奈々ちゃんは遠い人になっていった。
 
だけど、ヤキモチは、口にすればする程に大きくなった。
奈々ちゃんだけにとどまらず、誰もかれもが眩しく、うらやましく思えて、私は私のヤキモチに振り回されていた。暴れ馬に乗っているかのようだった。
海外で働く人。イケメン外国人との国際結婚。安定のボーナスで優雅に旅行に行く人。
結婚。出産。企業した人……。
キラキラした情報は、次から次へとSNSから溢れ出ていた。
 
もう、自分で自分が疲れた。
ヤキモチを、手なづけたい。
 
なぜ、ヤキモチを焼いてしまうのか。どうしたら、ヤキモチを焼かずに済むのか。
なんてこと考えてみたりしたけれど……。
仏様にならなくては、一切のヤキモチから解放されることは、無理! 
「ヤキモチは焼いちゃうもの」を前提として、「ヤキモチ焼いちゃう自分」を受け止めなくてはいけない。
話は、そこからだった。
 
私は、ヤキモチを焼くほどの努力をしたのだろうか。
眩しく輝く彼女たちがいる場所に行く努力を、惜しまずしていたのか? 
 
答えは、ノー! 
簡単だった。
 
海外で働きたい……なんて憧れだけで、そのために、語学を勉強しようとは、しなかった。
イケメン外国人と付き合ったとしても、度重なるラブラブ自撮りショットに応えることはできないだろう。
自由が制限されても、出産したいとは、まだ本気で思えていない。
結婚のために花嫁修業をしていたか? 5年の月日に油断せず、自分を磨いてきたか?
残業も休日もいとわず、仕事に打ち込めるか?
少なくても、安定したお給料と引き換えに、起業する覚悟なんて持てるか?
 
ただただ、楽しそうな方に流されてきた。
キラキラした部分だけ切り取られたSNSに振り回されていた。
そこに至るまでの、それぞれの犠牲と努力を積み重ねを見ようともせず。
 
努力をしない私には、そもそもヤキモチを焼く資格がない。
 
そうやって「身の程」を知ると、湧いてくるヤキモチは、徐々におとなしくなっていった。
ヤキモチを、焼くのは仕方ない。焼いてから、冷ませば良いんだ。
アツアツで食べようとするからヤケドしちゃうんだ。
 
ヤキモチとの付き合い方が分かったからには、私も、努力を始めよう。
よっしゃ! 手当たり次第に資格取得だ! とかじゃなくて。
 
「どんな人になりたい?」
自分に聞いて、自分で決めよう。
憧れが、遠くて遠くて、苦しくても、一歩ずつ近づけるように、努力を続けよう。
いつかいつか、自分が自分で驚く程のヤキモチを焼くほどの人に、なろう。
 
そしたら、奈々ちゃんに、おめでとうが言えるかな。
言えたらいいな。
いつか、義理のお姉さんになるかもしれない人だから。
 
 
***

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2018-04-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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