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メディアグランプリ

コンプレックスから救ってくれた街


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:幸島佑実 (ライティング・ゼミ 平日コース)

 
 
誰にだってコンプレックスはあるでしょう。私もコンプレックスの数十個くらいはある。コンプレックスだらけ。
 
見た目のコンプレックスや内面的なコンプレックス、色々なコンプレックスはあるけれど、私のいちばんの見た目のコンプレックスは身長。いちばん厄介な存在だ。
 
心身共に女に生まれたが、現在身長は172センチ。女性の平均身長からしたらかなり高めの身長。全然可愛くない。
物心ついた頃から、背の順はいつもいちばん後ろ。幼稚園からずっと。
 
「背が高いの嫌なんだ」と今まで色んな人に愚痴をこぼしてきた。
友人に言えば、「モデルみたいでかっこいいじゃん!」と言われた。
いやいや、モデルみたいっておっしゃるけど、モデルなら172センチは低すぎるからな? それに私は太さもあるで? あんた何言ってるん? と、心では言い返しているけど、「そんな事ないよ」と言って流している。
 
身長が低めの友人とお互いの身長コンプレックスについて打ち明けたら、
「身長はお金じゃ買えないんだよ! 大は小を兼ねるだよ! 羨ましい!」と言われた。
いやいや、身長低ければヒールでいくらでも盛れるだろ。大を小にすることはできないの! と、心で言い返しているけど、「やっぱり女の人はちょっと低いくらいが可愛いよ」と言って流している。
 
「何かスポーツやってた? バスケ? バレー?」
「吹奏楽部でした」
このやり取りについてはもう何万回やっただろう。
 
側から見たら172センチは羨ましいのかもしれない。でも172センチという現実は嫌だし、とても好きになれない。
フリーサイズのワンピースは丈が短くてワンピースにはならないし、いかにも女性らしい服は体格がしっかりしていることもあり似合わない。女性集団の中にいると一人だけ頭一個飛び出て変に目立つ。男性の隣に並んでも身長はほぼ同じ。全然可愛くない。せっかく女に生まれたなら可愛くいたかった。
 
上京するまで自分の身長に嫌悪ばかりだったが、上京してからは、少しだけコンプレックスの172センチを気にしなくなってきた。東京にはコンプレックスを受け入れてくれる街があるのだ。東京の中でも色々な街があるが、コンプレックスをいちばん肯定してくれる街は新宿だと思う。
 
新宿勤務のため、ほぼ毎日新宿を歩いている。西口の大ガード下をくぐってユニカビジョンを右手に歩いていると、すぐ左手には歌舞伎町一番街のネオンがギラついている。新宿駅方面へ道路を渡り、伊勢丹の華麗なショーウィンドウを右目に新宿三丁目まで。この間、数え切れないほどの人とすれ違う。
 
普段はすれ違う人なんて気にしないが、ある日ふとすれ違う人が気になり、周りを気にしながらいつも歩く新宿を見てみた。
 
ちょっと不真面目そうな居酒屋のキャッチ。爆買い中国人観光客。夜のお仕事へ向かうであろうお姉さん。ホームレス。仕事終わりで疲れてそうなサラリーマン。メイドカフェの呼び込みをしているメイドさん。酔っ払ってウェイウェイしている大学生。本当は男であろうお姉さん。伊勢丹の手提げを持ったおばあさん……。いろんな人がいる。人がたくさんいる分、いろんな人がいるのは当たり前だけれども、本当に様々な人がいることを再確認した。新宿にはいろんな人がいるのが普通だということに気がついた。
 
どんな人がいても景色として成り立つ新宿は多様性を受け入れてくれる街だと思う。どんな人がいても普通だし、どんな人でも新宿の風景に馴染む。誰がいても街は受け入れてくれる。
新宿以外の街だとどうだろう。例えば東京の真ん中、官庁や立派なビルが並ぶ霞が関に、酔っ払ってウェイウェイしている大学生がいたとしたら。霞が関の景色からかなり浮いてしまうだろう。
 
新宿を歩いて、誰でも受け入れてくれる新宿の姿を見つけてからは、世の中172センチの女がいたって普通なんだよなと思えた。決して今の身長を好きになれた訳ではないけれど、以前よりかは172センチを嫌いではなくなった。
 
それからの私というと、着たい服を好きに着るようになった。あれほど嫌だったヒールも履いた。身長を目立たせない服も感覚でわかってきた。服によっては高身長だからこそ似合うものもあり、その時は172センチで良かったと思えた。身長をあまり気にせず、自分の好きなようにしてからは「かわいい」や「似合う」と褒められる事が増え、人前で笑うことも増えた。
 
上京前の私と今の私、身長は変わらないけれど、上京前の自分より今の自分の方が好き。
172センチはやっぱり全然可愛くないけれど、身長だけが人の可愛さの全てではない。可愛くない理由をもうコンプレックスのせいにしたくない。コンプレックスは完全には無くせないけれど、うまく付き合うことは考え次第でいくらでもできるのかもしれない。考え次第では長所にさえなるのかもしれない。
 
正直新宿は人が多すぎて歩くだけで疲れるし、空気も良くないし、駅でいつも迷うから好きじゃなかったけれど、今は東京で好きな場所の一つ。コンプレックスという壁を壊せた街だから。
 
もう少し新宿にお世話になろう。そしてもう少し、コンプレックスだらけの自分を好きになりたい。

 
 
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2018-04-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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