メディアグランプリ

私失敗しないので、と、ハイヒールで都会をカツカツ歩いてみたい


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:西嶋祐子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「私、失敗しないので、が似合う人になりたいんじゃ」
言った瞬間に、なぜかどよめくくらいの笑い声。
 
「なんで? 私、真剣なんじゃけど」
「いや、キャラじゃないでしょ。っていうか、失敗ばかりしてるでしょ」
 
標準語で、しゃべっているつもりでも、
言葉の端々に、山口弁が出てしまう。
 
田舎暮らしで、どんくさい私でも、
ピンヒールで格好よく歩いて
ばしっと決めゼリフが似合う
ドラマの主人公みたいなキャラに憧れる。
 
知的でクール、そして、仕事がばりばりできる。
かっこいいという言葉がぴったりのキャラ。
 
まずは形から入ってみようと、
とりあえず
つまさきのとがった
8.5センチヒールも買ってみた。
 
実際の私はというと、
ぺたんこ靴が当たり前。
 
歩いて5分のコンビニまでも、
車で乗り付けるのが日常で、
そもそも歩くという習慣がない。
 
仕事でどうしても必要というときは
ヒールの靴を持っていって
直前に履き替える。
 
ヒールの靴は、
おもいきり非日常だ。
 
この8.5センチヒールのままでは
怖くて運転できないし
歩くこともままならない。
 
しょうがないので、
家の中で、とりあえず履く練習をする。
 
そろそろいいかなと思って
外で履いてもみたが、
歩けたのは、せいぜい30メートルくらいだろうか。
 
飛行機に乗って、
東京へ行って、
このヒールの靴を履いて
颯爽と歩くのが憧れなのだが、
この分だと、羽田空港から外に出られそうもない。
 
形だけでも、デキル女風というのは、
まだまだ時間がかかりそうだ。
 
じゃあ、そもそもなんで、
私失敗しないので風のキャラに憧れるのだろう。
 
それは、私がいつも肝心なところで失敗してしまうからだ。
詰めが甘いといえば伝わるだろうか。
 
頭の中では、スピーディーに動いている。
わからないことを聞かれても、
丁寧に答えている。
周りの人も、納得した様子で頷いている。
そして、どこか頼りにされている。
 
はずなのだ。
そう、頭の中でだけは、だ。
 
頼りにされる人は、かっこいいという
私の信念のようなものがある。
それが余計に、憧れをつのらせる。
 
だが、実際はというと、
「私、失敗しないので」
というだけで、笑いがおきるような状態だ。
 
朝起きて、気が付けば
何も手つかずの状態のまま、時間だけが過ぎている。
 
あれ、これ、いつまでだったっけ。
なんでメールの返信1つにこんなに時間がかかるのだろう。
違うものが目につけば、すぐにそっちに夢中になってしまう。
そして気が付けば、すでに16時になっているという具合。
 
やれやれ。
 
そんな自分を諦められれば、
まだいいのだろうが、
どうしても、いや、もう少し、なんとか恰好がつくはずだと、
諦めがつかない私がいる。
 
 
ひとりで入ったカフェで、
おずおずしている女性が
注文を聞きにきてくれた。
 
私は、せまいテーブル席に座っていた。
 
本当は、友達と待ち合わせをしていたので、
隣の、まだ片付いていない
広いテーブルに移動したかった。
 
注文を言うより先に
 
「あの、この隣の席に移動してもいいですか?」
 
言葉は丁寧だったのかもしれないが、
それは、暗に、この隣のテーブルを
早く片づけてほしい
という、命令のようなものであったかもしれない。
 
焦った彼女の様子をみて
ごめんなさいと、ちらっとは思ったが、
そこの席に座りたいという
おばちゃん根性の方が、上回った。
 
たどたどしい様子が
なんかおかしいなと思って
ふと名札を見ると
研修中と書いてあった。
 
うわっ、まずい、なんかいじわるしてるみたいだ。
ちょっとバツが悪い。
 
テーブルがきれいに片付き、
注文をお願いする。
 
私は、しょっぱいものが飲みたくて
コーンスープにした。
 
厨房から
「作り方が違うやつだから教えてやって」
という、声が聞こえる。
 
さっきの研修中の名札の彼女が作ってくれるのかな。
なんだか応援したい気持ちにもなる。
 
しばらくして
さきほどの彼女が
コーンスープを持ってきてくれた。
 
わぁ、無事に届いた。
なんだかこっちまで、ほっとする。
 
こうやって、1つ1つ覚えていかれるんだろうな。
緊張しただろうな。
 
そう思うと、
今までの様子が、とてもかわいらしく感じて、
一生懸命対応してくれて
ありがとねという気持ちになるから不思議だ。
 
たどたどしい感じは、
悪いものばかりではないな。
 
それが、かっこいいかどうかと
こちらが受け入れるかどうかは、全く別の話だ。
 
ふと
「私、失敗しないので」
というセリフがよみがえる。
 
今度こそ、諦めようか。
どうして、人のかっこ悪さは受け入れられても
自分のは、こんなにも嫌なのだろう。
きっと私ならできるはずという
根拠のない自信は、どこからくるのだろう。
 
周りの人は、そのままで受け入れてくれているのに。
 
思わず、苦笑いする。
 
できる人への憧れや
ハイヒールで都会をカツカツ歩くことへの憧れは
いったん置いておいて、
まずは、田舎で、ぺたんこ靴で、
今の私のまま
堂々と歩くところから、はじめてみよう。

 
 
***

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2018-04-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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