メディアグランプリ

あの時、教壇の後ろに隠れてしまった弱虫な私へ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:中林ゆうこ(ライティング・ゼミ ライトコース)

 
 
ドキドキしてきた……。
たった100人足らずの小さな集まりなのに。
幼稚園の保護者会の代表として、ほんの数分、今年度の予定を話すだけなんだ。半分は顔見知りだし、そんなに緊張することないのに。
よし、そんな時には「仕事スイッチ」をオンにするのだ!
 
それにしても、私ったら、本当に根っからのあがり症なのだな。
小学生の時、40人くらいのクラスメートの前で何かを発表するときがあった。内容は覚えていないけど、低学年の頃のことだから、そんなに大したことないことだったと思う。
でも、私は緊張して、その何かを発表することができなくて、教壇の裏に隠れてしまった。どのくらいそうしていたのかも、その状況からどうやって救い出されたのかも覚えていない。
 
ただ、「私ってほんとにダメだなぁ」
と深く思ってしまったことだけ覚えていて、ずっと心の奥にしまわれている。
みんなは、ハキハキと、なんなら笑いまでとりながら発表できるのになぁ。
 
中学生の時も保健委員の委員長をすることになって、やっぱり全校生徒800人くらいの前で発表することがあった。今思えば、その舞台に立つことができたことだけでもびっくりなのだけど。
そのときに、一つ上の先輩から難しい質問をされて、答えられなかった。体育館には、私の隠れる教壇はなくて、ただ全校生徒の前で固まってしまったのだった……。
どのくらいの時間かわからないけれど、やはり長い時間そうしていて、自分の体に突き刺さってくる沈黙に一人耐えていたことを覚えている。
 
その時にも、何かその場しのぎにでも、適当な言葉で答えることのできない自分にがっかりしてしまった。
 
そんな記憶があったから、私は絶対に先生とか、人の前にたつ職業には絶対にたつまい! と決めていたのだけど……。
 
「修学旅行生の森林ツアーのガイド業務」
社会人になって、私が入った会社には、そんな業務があったのだった。
春になると、修学旅行の日程にそのツアーを組み込んでくれた学校が、毎日ひっきりなしにこの森を訪れてくる。午前のツアーをして、また午後に新しい学校を迎えてツアー、繁忙期には、ナイトツアーをしたこともあった。
 
人前で話すのが苦手なんです……。なんてとっても言っていられない。話せる話せないどころか、何を話すかという内容まで高度なことを求められる。来てくれる小学生や中学生に、面白いと思ってもらえないと仕事にならないからだ。
多くて300人くらいの修学旅行生を前にして、マイクなしで全体挨拶をするのだ。「このグループの担当は、私です! みんなよろしくね」
そこから、子どもを引きつけないといけない。
恥ずかしいからできないなど考える暇もなく、毎日が怒涛のように過ぎていった。
 
そんなある日、先輩がいってくれた。
「がちゃ(私のニックネーム)の声が大きくなって、すごく聴きやすくなった」
人間て、一つの褒め言葉で、自信を持てるようになるんだな。
その頃の私は、人前であがっていた昔の私のことなんか、すっかり忘れていた。
 
「がちゃのツアーこと、ずっと忘れないよ」
そんなことを言ってくれた子もいた。人前で話すことが、なんだか楽しくなっていた。子ども相手に話しているから、反応をしてくれる。面白いこといったら笑うし、担当が若いお姉さんだったら喜ぶとか、ひげのおじさんだったらブーイングがおこるとか、リアクションが面白い。
 
仕事をする中で私は、「仕事スイッチ」の存在を発見した。
ツアーがある日は「仕事スイッチ」を入れる。そうすると私は内心はビビっていても、「自然のことをたくさん知っているガイド」として振舞えるのである。
自信を持って、子どもたちを森の中へ案内することができ、聞かれたことにも答えられるし、知らないことを聞かれても、焦るのではなく、少しジョークを交えて答えたりできる。
 
仕事をやめてからも、たびたび「仕事スイッチ」は発動した。
初対面同士の講習会での自己紹介。とあるワークショップで、自分が司会進行をした時。仕事の話で初対面の人と関わった時。本当はすごく緊張しているのに、「堂々としていたね」と人から言ってもらえることもあった。
自分が経験を積むほど、演じられる自分が増えていく気がする。
ある意味「はったり力」ともいうが。
 
だから、あの頃、教壇の裏で、みんなから見えないところに縮こまってしまった小さな私に言いたい。
30年後の私は、いろいろな経験をつんで、人前で話せるようになったよ。
緊張はもちろんするけど、自信をもって話せるようになったよ。
今度「仕事スイッチ」の場所を教えてあげるよ。
 
 
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2018-04-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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