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幼少期の連れ去り体験 ~人の皮を被った危ない人


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記事:菊地 智子(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
正確な時期は覚えていない。
就学前だったことは確かだから5歳くらいだろうか。
 
自宅で昼寝していたところを、誰かもわからない人物に連れ出されたことがある。
 
先にどうなったかを言うと、連れ出されてからおそらく数分もかからずに助けられ、大事には至らなかった。
随分あとから母親にこのことを尋ねた事があるのだが、「ああ、そんなこともあったねえ」とあっけらかんとしていた。警察にも届けなかったそうだ。
 
今の住宅事情で考えると「自宅で昼寝中、連れ去られる」なんて少し想像し難いもしれない。
 
私の住んでいた家は、全体が細長く、玄関から家の中ほどまで土間が続いていた。
土間にはいくつか部屋が面していて、引き戸を開ければ簡単に出入りできた。
日中玄関に鍵なんてかけないし、季節によって玄関はがらりと開けてあることも多い。
誰でも「こんにちは」「どうも~!」なんて呼び鈴も鳴らさず土間までどんどん入ってくるような家だった。
 
その時の私は土間に面した部屋の一つで眠っていた。
どうしたものだか布団も敷いていないその場所で、ころん、と転がって眠っていたことははっきり覚えている。
 
引き戸は開け放ってあったと思う。
おそらく玄関も。
 
ぐっすり眠っていたところを何か話しかけられて目が覚めたが、意識はとろとろした状態だった。
話しかけたのは知らない男の人だった。
 
「寝ているの?」とか何か話しかけられたが、答えることはできなかった。
そうして抱っこされ、家から連れ出されてしまった。
 
家から出て左の方に進む。
何軒か過ぎて大きな銀杏の木のある角を左に曲がる。
 
少し進んでまた次の角を右に曲がろうとしたところで、当時実家の向かいのアパートに住んでいた大学生達と会ったのだ。
 
大学生はその時何人か連れで、私が向かいの家の娘と気が付き、取り返してくれた。
 
連れ去った人物と大学生達とのやり取りは覚えていないが、大学生の一人が連れ去った人物から私を抱きかかえ、取り返してくれた瞬間ははっきり覚えている。
 
日中の、みっしり民家が建ち並ぶような場所での出来事。
 
今で考えたら警察に通報しないなどありえない事態だと思うが、私の親は大事だと思わなかったのか、そのまま何事もなかったようにその出来事は終わった。
 
その人物の顔はまったく覚えていない。というか、顔を見るタイミングがなかった。
怖い思いもせず、眠さでぼんやりしていた中での事ということもあり、私もすぐに忘れたと思う。
 
思い出すようになったのは、大人になってから。
よく考えたらすごく怖い出来事だ。
 
あの時大学生達が通りかかっていなかったらどうなっていただろう。
少し散歩して家に戻してくれたかもしれないが、そうじゃなかったかもしれない。
最悪の場合、今こうして文書など書いている自分は存在しなかったかもしれない。
 
歩いてふらふらしていたことを考えれば、自分の家からそう遠くないところに住んでいる人だったはずだ。また、人の目がないところでばったり会っていたらどうなっただろう?
 
実は短大生だったころ、私はもう一つ怖い出来事を体験している。
 
他県の短大に進学した私はアパートで暮らしていた。
アパートと言っても大家さんがすぐ隣に住んでいて、しょっちゅう行き来があるような暮らしだった。
 
その日は、夜9時過ぎくらいだったかに、アパートに帰ろうとしていた。
すっかり暗い道、もうアパートが見えるような場所で突然頭にものすごい衝撃を受けた。
 
何が起こったのか、とっさに理解できない。
 
「ふっ」
っというような息遣いの後に、足音が聞こえた。
 
振り返ってみたが、姿はもうなかった。
殴ったのが誰か確認できない。
 
我に返ってようやく後頭部を殴られたことに気がついた。
 
すごく痛い。
 
怖くて足がすくみ、すぐには動けなかった。
殴られた瞬間は「痛い!」と声が出たものの、その後は怖くて声は出なかった。
 
私が立っている場所は街灯で明るかったが、足音が向かった家の方は暗くて何も見えない。
砂利道のはずなのに続く足音がしないということはそこでこっちの様子を見ているに違いない。
 
怖い。
 
怖かったがなんとかすぐ近くの自分のアパートに逃げ込んだ。
部屋に入って殴られた場所を確認すると、滴るほどではないが血がにじんでいる。
手で殴ったのではなさそうだった。
 
見張っているのではないか、と思うとアパートから出て隣にある大家さんに駆け込むこともできなかった。
 
翌朝になってようやく大家さんに相談しすぐに警察に連絡。
 
警察からは
「そういう不審者は目星がついているので、発生したらすぐに通報してほしい」と言われた。
 
結局この件も、やったのが誰だったのかはわからずじまいだった。
 
この二つの出来事によって私の警戒心が強くなったのは言うまでもない。
社会には、誰かの目によってようやく理性を保っている人が紛れ込んでいる。
運悪くそういう人と出会ってしまうと何かが起こる。
 
人の皮を被った危ない人は、誰も見ていなければなんだってやってしまうのだ。
 
 
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2018-04-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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