メディアグランプリ

大谷翔平が憎い。


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記事:足立明弘(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「オオゥ、オオタニサーン!!」
 
今日も米メディアの興奮した声が聞こえてくる。
どうやら今日もご活躍だったらしい。
 
……ああ、本当に憎たらしいやつだ。
 
 僕は大谷翔平が憎い。ついでに言えば藤井聡太も気に入らないし、羽生結弦も鼻につく。
 
 スポーツに多少心得があるとは言え、僕は球技はからっきしだし、将棋なんて金と銀の動かし方の区別もつかない。氷の上なんて立つのもやっとだ。
 だから彼らの業績に対して、上から目線で「まだまだこれからだよ」というつもりもないし、きっとそんなことは出来ない。
 とはいえ別に彼らが嫌いなわけではない。そもそも嫌いになるほどの情報がない。大谷翔平は会ったらきっとナイスガイなんだろうなというのはなんとなくわかる。
 
 でもなぜだろう。僕は大谷翔平が憎くてしょうがない。
 
 
 
 
 先日Facebookである投資家が最近のベンチャーについてこんな事を言っていた。「30代は感覚が古すぎて投資するには恐ろしすぎる」と。「今の20代はこれまでとは根本的に違う」と。
 
……ああ、そうか
 
 少し自分語りをさせて欲しい。
 
 僕は1981年生まれで今年37歳のいわゆる「ロストジェネレーション」というやつだ。
僕らの世代はいわゆる管理型教育、詰め込み教育の最後の世代で、「自己責任論」がもてはやされた時代に多感な時期を送った。
  
「あるべき人生のモデル」というものに従って生きてきた団塊世代、バブル世代、それが否定さ「あるべき人生のモデル」というものに従って生きてきた団塊世代、バブル世代、それが否定されて漂流した氷河期世代、その後を受けて、これからは自分で自分の人生を切り開かねばならない、自己責任でね、という新しい「モデル」を引き受けた世代、それが我らロストジェネレーションだ。
 
 僕はその中で良い高校に行っていい大学に行ってゆくゆくは官僚もしくは金融機関で働くんだ、と自分の意志で自分の人生を切り開いていった。
 
 切り開いていったつもりだった。
 
 今は実家の家業を継ぐ立場になっているが、来し方を振り返ってみれば概ね自分が切り開いた人生を歩むことが出来、他人から見れば羨ましがられる経歴を重ねてきた。
 
 だが……
 
 去年くらいから「自分は本当にこんな生き方をしたかったのだろうか?」という問いが頭をもたげてきた。
 
 いい高校に行っていい大学に行ってサークルをそれなりに楽しんで一流の金融機関に就職して。
 
 実は自分の意志なんて無くて、回りの声や社会の常識が「自分の意思」だなんて錯覚していただけなのかもしれない。
 
 僕は回りの声や社会の常識みたいなものを「ドグマ(教義)」と呼んでいる。
 
 僕はこのドグマに付き従って生きてきたんだ、「自分の意志で生きてきた」ってのはまやかしだったんだって本当に最近気づいた。
 
 
 
 話を大谷翔平に戻そう。
 
 きっと僕は大谷翔平に自分になかったもの、失ったものを見て嫉妬しているんだ。
 
 彼は球界では常識破りの投打の二刀流で大活躍している。きっと僕が彼のフィジカルと才能を持っていれば「大人」から諭されてどっちかに専念してるだろう。
 しかし、彼は自分が「二刀流で野球をやりたいから」と自分の意志を押し通して成功している。
 本当に彼の好き勝手に自由にやっているのだ。
 
 僕は素直にそれが羨ましく、そしてそれが出来ない自分に苛立っているのだ。
 
 「社会はそんな甘くないぞ、いつか痛い目を見る時が来る」なんて、つまらないことを自分の頭が喋りだす。羨ましさと苛立ちで悪意が頭をもたげてくる。
 
 大谷翔平に見る「本当に好きなことを、周りに流されず自由に突き詰める」というものに対する、羨望。それが、僕が大谷翔平を憎くてしょうがない理由だ。
 
 
 
 
 僕はいろいろあって今は小さな会社を経営している。親父が37年前に立ち上げた、あまりうだつの上がらない地方零細企業だ。
 
 この会社でも「ドグマ」に囚われた生き方は発揮された。
 
 作りたいものではなくて、作れるものを大量に作って商社に卸すという昭和時代の様な古臭い商売。自分の代からこういう古臭い、「かつて」の常識の様な商売を始めてしまったのだ。
 
 感覚では「もう時代は変わった。そういう大量生産大量消費ビジネスはうまくいかない」とわかっていても、頭では「そうはいってもまだまだ社会の常識はそうじゃない、そういう新しい考えに飛びつくのは若造のやることだ」ともう一つの声が聞こえる。
 
 そういう「ドグマ」にあまりに囚われていた
 
 そして気づいたら「感覚が古い30代の経営者」になっていたのだ。
 
 
 
 
 最近2つの店舗を出店した。どちらとも僕が最初から最後まで手がけた思い入れのある店舗だ。
 
 その店ではもうドグマには従わず、自分の信念で仕事をしていこうと決めている。
 
  内容は組織体制の方向性を変更したり、マーケティング戦略をもっと柔軟にしたり頭のネジが外れたような商品を展開したりということだが、ここでは割愛しよう。
 
 僕が本当にドグマから逃れて自由を手にした時、大谷翔平の活躍を心の底から楽しめるようになるんじゃないかな。そうだと願いたい。
 
 若い衆の活躍を妬むだけの人生なんて、ごめんだ。

 
 
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2018-04-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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