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「どうしたの? 大丈夫?」の本質にあるものとは


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記事:吉野樹理(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
上辺だけの優しさは、切れ味鋭いナイフだ。そのナイフを振りかざす前に一瞬でもいい、本当の優しさとは何か考えてみてはどうだろうか。
 
私は31歳でアトピー性皮膚炎を発症した。新しい職場の人間関係が最悪で、まだ若かった私は正面突破で難局を乗り切ろうとして失敗し、ストレスフルになったのがきっかけだ。右目の瞼が痒いと感じたのが始まりで、掻いても痒いからひっきりなしに掻いていたら半年後には顔全体に痒みが広がり、右顔の半分がいつも赤くて腫れぼったくなってしまった。目の周辺も腫れているからお気に入りの二重瞼も一重になった。背中も痒いから傷だらけで、大好きだった温泉に入れなくなった。あまりに見た目がひどいので。半分赤く腫れたひどい顔を見るのも嫌で、鏡は朝だけしか見られなくなった。顔が気になって行きたい所に行くのを躊躇するようになっていたが、気にしないふりをして真面目に仕事だけは行っていた。
 その半年間、私を傷つけ続けたものがある。それは、職場の人間たちの「その顔、どうしたの? 大丈夫?」という声かけだった。一見すると私を心配してくれている。優しい人の集まりだったのだろう。しかし声かけをされればされるほど、そんなにも私はひどい顔をしているのかと負のフィードバックが心に突き刺さった。周囲の心配は私にとって切れ味鋭いナイフでしかなかった。しかも、ほぼ毎日、ひどい時には1日に2~3人がナイフで刺しに来る。大出血をしながら1人1人に言いたくもないことを説明した。刺客たちは「そうなの。大変ね。病院は行っているの?」とだけ言ってその場を去っていく。これは更に優しさのオプション付きで、「これ、良く効くクリームだから良かったら使って」と欲しくもないものを手渡され、お断りすると悲しい表情をされる。悪いからと渋々受け取ってそのままゴミ箱に捨てたものは数知れない。なぜ、心配もクリームも欲していない私が傷つけられた上に気を遣わないといけないのか? そのストレスが更に病状を悪化させて私は休職せざるを得なかった。
 
 人は誰しも見た目にコンプレックスを持っているだろう。太っているとか痩せているとか、毛が濃いとか薄いとか。そのコンプレックスを周囲から毎日のように指摘され続けたら、気にしないでいられるだろうか。逆に、「どうして太ってるの? 大丈夫?」とか「その髪の毛どうしたの? 大丈夫?」とか本人を目の前にして言う人はどのくらい存在するだろうか。しかも「(太った体に)(薄毛に)(剛毛に)よく効く薬だから使って」なんて言えるだろうか。少なくともわざと傷つける目的以外で本人を前にして言う人はほとんどいないだろう。
 では、なぜ私はあんなにも「どうしたの?」と言われ続けたのか。答えは周囲の「知識がない」ためだ。(私がものすごく嫌われていたことも考えられるが、職場以外の人間にも聞かれたことは多いからやはり知識がないが正解だと思う)。体型とか髪の量とかは聞かなくてもその原因がなんとなく想像がつく。それは自分にとって身近なことでよく知っているからだ。アトピー性皮膚炎はどうだろう。クラスに1人以上は悩んでいる人がいて、子供にも非常に多い症状だが一生悩まなくてよい人がたくさんいるのも事実だ。家族や親族に1人もいない場合もあるだろう。ドラマや映画の主人公にアトピー性皮膚炎に悩む人がいたら、もっと理解されるのかもしれないと思うが、私はそんな主人公を見たことがないし、正直見たくない。血が出てくるまで掻き続け、血が出ても掻き続け最後には体液が出てくる。ベッドは自分の皮膚が剥がれた皮だらけとなり、入浴後は真っ先に保湿しないと乾燥による痛みで体が動かない。そんなドラマ、ヒットするだろうか。
 
 人間は「知りたい欲求」がある。それは老若男女誰でも持っている、人を傷つけることになっても抗えない欲求のようだ。以前、若くして脳梗塞により片麻痺になったAさんの車いすを押して病院の周囲を散歩している時に知りたい欲求の塊の高齢者と出会った。向こうから歩いてきたその男性はすれ違いざまに「この人、どうしたの? 骨折でもしたの?」と声をかけてきた。Aさんは肩の亜脱臼を予防するため三角巾で腕を固定していた。何の知識もない人から見れば事故にでもあって車いすに乗っていると見えなくはなかった。Aさんは何も話さず下を向いたままだった。そのまま無視しようとも思ったが、私は少し迷って「そんなもんです」と返答した。すると、男性が「若いのに、可哀想だなあ」と言って去って行った。男性は疑問が解消され、感想も言えて満足だろう。どれだけAさんを傷つけたかも知らずに。
 
 他者の見た目に対して「どうしたの? 大丈夫?」と声をかけようと思ったら、その本質は何なのか自分に問うことが必要だ。多くは興味本位であることが多いだろう。そして大したことないと勝手に判断しているのだろう。私は、腰を据えてじっくり話を聞く覚悟がない限り、「敢えて聞かない」を選択するのが本当の優しさではないかと思う。自分の欲求を満たすために、相手を傷つけるのはもうそろそろ終わりにしませんか? 

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2018-04-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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