メディアグランプリ

絶対に越えられない壁に向かって、ジャンプ!


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記事:廣渡一子(ライティングゼミ・平日コース)
 
 
何かを習得したいとき、一番重要なのは努力。
心からそう思う。努力は必要だ。
 
その一方で、わたしは自分がどんなに努力をしてもスポーツアスリートにはなれないし、ましてやオリンピックでメダルをかじるなんて絶対にできないことを知っている。なぜなら、わたしは遺伝子レベルで組み込まれた運動音痴だから。初心者でもできるから大丈夫だよ、コツさえつかめば簡単だよ、という誘い文句は絶対に信じない。
 
運動の神さまから見放されているのは子どものときからだ。一番古い記憶では、保育園のときに園の中でわたしだけスキップができなかったこと。謎の滞空時間とリズム感をつかむのが本当に難しかった。「できた人から座っていいよ」と言う先生のことを、涙目で睨んだ。できる人にはできない人の気持ちがわからない。スキップができる人とは分かり合えないと思った。
小学校に上がってからも運動はわたしにつきまとう。徒競走は大体ビリ、良くてもドンツーだった。陸が無理なら、と、プールを習おうとしてみた。でも、授業の初日に、塩水プールの塩水を鼻から口から飲み込んだショックで、一日で辞めてしまった。
 
わたしが運動に対してそうであるみたいに、習得にかかる時間や到達できるレベルには本人のポテンシャルが関わってくる。いくら努力しても、本人の素質や才能がもたらすものには勝てないと思うのだ。だから、努力しても無理だと思うことが現れたとき、わたしはいち早く逃げるコマンドを選択する。越えられない壁モンスターといたずらに戦っても、時間と労力とHPの無駄だもの。そう言い訳して、モンスターの横をするっとすり抜けるのだ。
 
 
「できてるよ! いい感じ!!」
 
店長がわたしが作ったソフトクリームをみて、OKサインを出している。
 
「本当ですか!」
と言いながら、自分でもこれは自信を持ってお客さまに提供できるレベルだと思った。もしかしたらわたしってソフトクリーム巻く天才かもしれない、と調子に乗るほど上手くできた。
 
「最初に作ったやつから成長したね」
 
店長の言うとおり。わたしが最初に作ったソフトクリームは本当にひどかった。まず、容器からはみ出すぎているし、ソフトクリームの醍醐味である「巻き」がなくて、謎のオブジェのようだった。指導してくれていた他のスタッフも、わたしも苦笑いするしかなかった。
 
「でも、この出来はまぐれかもしれません」
 
このソフトクリームはあまり何も考えずに作ったから、偶然上手にできただけかもしれない。また次作るときにはできなくなっているかも……。次も上出来のソフトクリームを作れる自信はない。
 
「大丈夫大丈夫! 一回できるようになったら、できちゃうもんだから」
 
「一回できるようになったら……」
 
“一回できるようになったら、できるようになること”って他になにかあったっけ。ぼんやり考えはじめた。それからすぐに思いついたのが、自転車だった。
 
小学校低学年頃から周りの友達が自転車に乗り始めた。一緒に遊びに行くとき、みんなが自転車でわたしが歩きだと、スピードについていけない。さすがのわたしも「これはいかん」と危機感を覚えた。小学校三年のクリスマスプレゼントに、水色の自転車をもらった。でも、なんだかんだねばって、本格的な練習を始めたのは五年生になってからだった。その頃、自転車に乗れない子はもう周りにいなかった。
お父さんに頼んで、放課後の自転車特訓が始まった。家の近くの海浜公園で毎日日が暮れるまで練習した。わたしにとって、自転車は絶対に越えられない壁だった。頑張っているのに全然上達しないし、いつまで経っても補助輪を外す勇気が出なかった。でも、お父さんは一度もマイナスな言葉を言わなかった。
 
「ここからあそこの木まで行ってみようか」
と自転車のサドルをしっかり持って支えてくれていた。
 
「次は、できるよ。 いちこ、だいじょうぶだよ」
お父さんは信じてくれていた。わたしはもう無理だって諦めていたけど、「もう練習やめたい」とは言えなかった。
 
毎日毎日、練習して、たくさんこけた。
そして、何ヶ月目だったかは覚えていないけれど、その日は突然やってきた。
 
いつものようにサドルに座って、ペダルをこぎ始める。自転車は、すうっと真っすぐ前に進んだ。わたしはお父さんが後ろを持ってくれていると思っていた。
 
「お父さん?」
 
ちらっと後ろを振り返ると、お父さんはわたしがスタートした地点に立ったままだった。どんどんお父さんが遠くなっていく。くるっとUターンをして、わたしはお父さんの方に戻った。それからしっかりブレーキをかけて、キュッと止まる。
 
「乗れた!!!」
 
自転車を降りてお父さんに飛びつく。
 
「がんばったね、乗れたね」
と頭をなでてくれた。わたしは本当に嬉しくてたまらなかった。
お父さんは泣いていた。お父さんの涙を見たのは、それが初めてだった。
 
絶対に無理だと思っていた壁を越えられたのは、お父さんのおかげだと思った。お父さんがわたしのことを信じていてくれたから。
 
 
何かを習得したいときには、努力が必要だ。
でも、自分はできる、と信じることはもっと大切なのかもしれない。
 
もし、自分で自分を信じられないときは、周りを見てみよう。
 
あなたのことをあなた以上に信じてくれる人が、すぐ近くにいるかもしれない。
 
 
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2018-04-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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