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なんだ、それでよかったんだ《プロフェッショナル・ゼミ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:一宮ルミ(ライティング・ゼミプロフェショナルコース)

「”ち”という字は、こう書くと綺麗に書けますよ」
小学生の頃だった。
硬筆の検定というものが授業にあった。
1年生に10級から始まる。最初は、鉛筆で、ひらがなを綺麗に書くのが目標だった。うまく書けて、合格をもらうと、次の級に進むことができる。検定は1年に1度あって、そのためのテキストを買って、練習をし、本番に臨むのだ。
うまくいけば、1年生で10級をクリアし、2年生で9級、3年生で8級となる。
逆に、合格しなければ、ずっと同じ級を受け続けなければならないということになる。
そして、4年生、つまり7級を受けるころになると、ボールペン字に進むことができたと記憶している。
今までは、みんな鉛筆で書いていたので、その子が一体、何級の練習をしているのか分からなかったけれど、7級を境に、ボールペンを使っている子と、鉛筆を使っている子がはっきり分かってしまうようになった。
なぜ、そんなことを覚えているかというと、私は、6年生になるまでボールペンを使うことができなかった人間だからだ。
どうしても、8級つまり普通なら小学3年生が受ける検定に合格できなかったのだ。
その検定の課題は、ひらがなと簡単な漢字交じりの文章を書かせるものだったと思う。
「”ち”という字は、こう書くと綺麗に書けますよ」
と先生が、丁寧に説明してくれる。でもどうやっても先生の言う通りの字が書けない。練習用テキストは、全部、書き込んでいるが、どの字もちっともうまく書けていなかった。
当然、検定を受けても不合格。
周りの友達は、どんどんボールペンを使っているのに、私は鉛筆のまま。
「まだ、鉛筆なのかよ」
と、男子にからかわれて、悔しい思いをしたこともあった。
でも、合格できないものは、逆立ちしたって、先には進めない。
毎年、この検定の季節が来ると憂鬱な気持ちになった。

先生も、なんとか合格させようと、一生懸命指導してくれるのだけれど、相変わらず、先生の言ったとおりに書けなかった。

そんなことを思い出したのは、あれから30年以上が過ぎて、また同じ心境になっているからだ。
天狼院書店のプロフェッショナル・ゼミを受講しているが、全く上手く書けないのだ。書いても書いても、気持ちのいいラストにたどり着けない。
週に1度の投稿も、全然、掲載OKがもらえない。それもそのはず、小学生の頃のテキストのように、書いてはいるけど、ちっとも、上手くない状態だからだ。
講師の三浦さんは、的確なアドバイスをしてくださるのだけれど、そのアドバイスどおりに書けないのも同じ。
同じ受講生の方は、どんどん素晴らしい記事をあげているというのに、自分はそれをうらやましく思うことしかできない。
悔しい。
あの硬筆の検定の時と同じ気持ちだ。
救いは「まだ鉛筆かよ」なんていう男子がいないことくらいのものだ。

あの時は、小学校を卒業して、検定がなくなったことで、解放されることができた。そして、今では、決してうまいとは言えないが、人並みには字が書けるようになった。
「字、お上手ですね」
と言われることがある。
でも、あの硬筆検定の散々な結果を思い出せば、どうして上手いと言われるようになったのだろうと不思議に思う。
中学生になっても、大して綺麗な字ではなかった。
でも、「いつか上手に字を書けるようになりたい」という気持ちはずっとあった。
いつも、字の上手い子や、当時流行してた「丸文字」が上手い子の字を研究して、真似したり、自分も同じように書けないかと試行錯誤していたことは確かだ。
高校生になると、勉強量が圧倒的に増えた。それに、当時はメールもLINEもない時代、友達に伝えるには、話すか手紙しかなかった。授業中にこっそり友達に手紙を書いて休み時間に渡すなんてことが当たり前に行われていた。毎日毎日そんな生活を送っていたら、字を書く時間も小学生の頃とは比べものにならないくらい増えた。そのうち、だんだんと人並みの字が書けるようになってきた。
小学校の時に先生が指導してくれた「ち」の書き方も、いつの間にか先生の言ってた通りに書けるようになっていた。

20歳を過ぎて、ある通信講座でボールペン字を習ってみようと思った。
新しい年になったり、新学期になると、テレビや新聞でしきりにCMしているあの通信講座だ。私も、そのCMに乗せられて、一つ何か新しいことがしたくなり、これからも役に立ちそうな字を習ってみることにしたのだ。
テキストには、ひらがなの綺麗な書き方、漢字を美しく書く方法が、懇切丁寧に書かれていた。それは小学校の時、先生が指導してくれた時と同じ、いやそれ以上の分かりやすさがあった。
そうか、そう書けば字が綺麗に見えるのかと、目から鱗がボロボロと落ちるようだった。そして本当に、その通り書けば、驚くほど綺麗に書けた。

小学校のとき、あれほど綺麗に書けなかった字が、大人になるにつれ、どんどん綺麗にかけるようになったのは、なぜだろう。
確かに、大人になって、子供の頃より手先の運動神経も良くなったとも言える。
でも、やっぱり一番の理由は、「上手く書けるようになりたい」という気持ちと、上手い人を研究すること、たくさん書いたこと、うまく教えてくれる先生や講座に出会ったことではないだろうか。
確かに長い時間がかかった。気がつけば、もうすっかり大人になっている。それでも、「字が綺麗に書けるといいいな」という気持ちはずっと心の隅にあった。

もしかして、これって、文章を書くことにも応用できるのではないだろうか。
今の私は、あの小学生の頃と同じ状況だ。
書いても書いても、うまくできない。先生の指導のとおり書けない。どうすれば、お手本のとおり書けるのか、わからない。暗闇を手探りで歩いているようなものだ。
けれど、そんな私が30年かかったけれど、「字、上手いですね」と言われるようになったように、いつしか「文章、上手いですね」と言われる日が来るかもしれない。

そのためには、字が上手くなったのと同じプロセスを踏めばいいのではないか。
上手い文章の人のどこが上手いのか研究し、真似ること、伝えたいことがあるのなら、とにかく書くこと、書かねばならない状況に自分を持っていくこと、そして、文章をうまく書く方法を、上手に指導してくれる講座を見つけること。
そして何より「文章が上手くなりたい」という気持ちを持ち続けることだ。

なんだ、ならば、ここ天狼院書店のプロゼミは最高の環境ではないか。
文章をうまく書く方法を指導してくれる店主、三浦さんがいる。毎週、書いて出さなければならない環境がある。そして、ゼミ生は皆、素晴らしい作品を書くのだから、研究材料はたくさんあるではないか。
そうか、このまま「上手く書けるようになりたい」という気持ちとともに、ここで頑張ればいいだけだったんだ。
うまくいかないのは、今、私が小学生の時と同じ状況であるというだけだから。でも、もう子供ではない。うまくなる方法を知っている。うまくなる方法を実践する方法だって知っている。
もっと書けばいいんだ。ただそれだけだったんだ。

あれ、それって、三浦さんが今まで私たちに、何度となく言ってきた言葉じゃないか! 
もう、私ってなんて記憶力がないんだろう。
三浦さん、申し訳ありませんでした。
あなたの言葉が真理だと今、はっきりと分かりました。
だから、どうかこれからもよろしくお願いします。

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2018-04-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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