メディアグランプリ

情熱大陸なんてもう観たくない


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記事:林峻平(ライティング・ゼミ日曜コース )

 
 
情熱大陸。観たことも聞いたこともないという人はいないのではないだろうか。第一線で活躍する人物にスポットを当て、カメラが密着するというあのドキュメンタリー番組だ。1998年からもう20年も続く番組で、最近だと科学者の落合陽一やプロボクサーの村田諒太、少し前には当時AKB48のセンターだった前田敦子が出演したこともあった。華々しい経歴など、スポットライトが当たって輝いているところを目にすることは多いけれど、生い立ちや日頃の生活、素顔や葛藤などを目にする機会はそうそうない。この番組は、そういった普段僕らが知ることのできない、本当はある裏側を覗かせてくれるものだ。僕はそんな情熱大陸を観て、今まで何度も何度も励まされ力をもらってきたのだけれど、もうほとほと疲れてしまったのだった。
 
最初に情熱大陸を観たのは、単身世界最貧国バングラデシュに渡り、バックで世界を変えようとMOTHERHOUSE(マザーハウス)を起業された山口絵里子さんのお話だったと思う。いじめられっ子だった女の子が、柔道と出会い、困難に立ち向かう勇気を覚え、猛勉強の末に工業高校から慶応大学へ、国際協力に興味を持ち国際機関でインターンを経験、現場を知らず予算だけを配分していく現状に疑問を持ち、自分の目で現場を見るため単身バングラデシュへ、そこでジュートという素材に出逢い、バックに世界を変える可能性を見出す、悪戦苦闘を経てそれが形になり……。いやいやもうどんだけ~なんなんですかこのバイタリティ溢れる方は。いくつもの困難にぶつかりながらも、最後は笑って夢を語る当時26歳の彼女の姿は、大学1年生の僕には衝撃的だった。この時から、僕はたまに情熱大陸を観るようになった。こんなに頑張っている人がいる、僕も負けずに何か頑張ろう、そんな気持ちだったと思う。
 
社会人になり、仕事に対してやる気を失っていた時、職場の先輩から情熱大陸を観るように勧められた。いい薬になるよと。映像の中では、一流と呼ばれる人達が、悩み、苦しみ、もがきながら、それでも結果を出していた。素直に格好良く見えた。この人達に比べたら自分なんてたいして頑張ってないなぁ、本気でやりきってないなぁ、俺カッコ悪いなぁ、ヤベェなぁ、と毎回自分を奮い立たせ会社に出勤していた。会社に行きたくないと感じた時、情熱大陸がいい薬になっていた。僕にそのいい薬を紹介してくれた先輩は、ほどなくして会社を辞めてしまった。一緒に働いた期間も短く、辞めた理由をちゃんと聞くこともなかった。
 
そして、先日の放送、現役大学生でありながら映画監督でもある松本花奈さんが取り上げられていた。僕は最近まで海外で働いていたのだが、もっとやりたいことが見つかったこと、家族の近くで働きたいという思いなどから、退職して帰国し、久々に観る情熱大陸だった。映像の中では、若く才能溢れる彼女が、新しい挑戦と格闘している様が描かれていた。自分よりもずっと若い彼女が、大学に行きながらも寝る間を惜しんで作品に没頭する様、普通の大学生から監督に切り替わった時の真剣でありながらワクワクした顔つき、作品ができた時の晴れやかな表情、毎日を全力で楽しんじゃってる様が、もう眩しくて、眩しくて、苦しかった。もっと頑張って人生楽しまないと、もっと、もっと、頑張って、頑張って……。情熱大陸を観るとかかる「頑張らないといけない病」。もうさすがに疲れた、と一瞬思った。
 
でも違った。今回は今までに感じていた気持ちとは違う。そもそも頑張って楽しむって何だ……? 彼女は頑張って楽しんでいるんじゃなくて、自分が楽しいと思うことを全力で楽しんでいて、その様が観る人によっては物凄く頑張っていると感じるに過ぎないのではないか。今までは、何を頑張ればいいのかわからず悩んでいる時だったり、仕事に疲れてやる気を失っている時に観て、一瞬効くけど、また気分が落ち込んで、また観て元気をもらうということが多く、何だか疲れてしまっていた。でも今は運良くやりたいことができ、それに向かって準備しているところだから、感じ方は全然違うものだった。そういえば、辞めた後に見かけた先輩の顔は生き生きしていた。今やってる仕事が楽しいのだと。ちょっと合ってなかった環境(仕事)に対して、もしかしたら情熱大陸が背中を押すという意味でいい薬になったのかもしれない。
 
台本があるんじゃないかとか、編集の力だとか、否定的な意見をいう人がいるかもしれないけれど、僕は情熱大陸が好きだ。観る時々で感じ方も変わる。時には疲れてしまうこともあるかもしれない。それでも、ヒィヒィ言いながらも、僕は新しい気持ちで、また新しい感情を求めて、情熱大陸を観ちゃうんだと思う。

 
 
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2018-04-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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