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古民家のゴミは本当にゴミなのか?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:石井紀子(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
 最近、地方では空き家の利活用が話題になっていて、廃校を公共施設に、古民家をゲストハウスにしてリノベーションしている。空き家をそのまま放置すると、倒壊の恐れが出て、景観や治安にも良くないので、地元民にとってリノベーションはありがたいことだ。ただ、活用前の空き家、特に古民家には生活用品など沢山の物があったはずだ。それらはどこに行ってしまったのか?
 
 山形県の片田舎に住んでいる私の元にある日、知り合いのおばちゃんから電話がかかってきた。
 「長い間住んでいなかった実家を知り合いに預けて宿泊施設にするの。そのために掃除していたのだけど、古い本やお札が出てきちゃって、どうしたらいいのか分からないからとりあえず見に来ない?」
 「ぜひとも!」
 私は二つ返事でおばちゃんの家に向かった。
  
おばちゃんの家には昭和の本や明治時代の土地の権利書、寺社仏閣のお守り、お札が残っていた。ご先祖が副村長のような仕事していたので昔の行政関係のメモもあった。驚くことに引越しの少ない昔の家には、明治期から昭和期にかけての資料が多く残っている。
これらは今ではもう用済みの、何が書いてあるかよく分からない紙の山だけれど、本当は大切な物だ。
 
ある掛軸が見つかった。
「養蚕守護神」と書かれ、蚕が無事に育ち、養蚕業が上手くいきますようにと願って掛けられたものだ。女性風の仏様が白馬に乗っている。黒い髪を伸ばし、金色の髪飾りをつけ、袖がひらひらとした着物を着ている。赤色と緑色の着物は縁起が良さそうだ。左手には蚕のエサとなる桑の葉を持っていて、馬鳴菩薩(めみょうぼさつ)という仏様だ。白馬の足元には蚕や繭、成虫のカイコガ、桑の葉も描かれる。
どの神社で発行されたのか、いつ作られたのかは書かれていないが、このお宅で蚕を育てて稼いでいたことがわかる。
 
江戸時代後期から昭和まで、この町は養蚕業が盛んで、世界遺産になった群馬県の富岡製糸場ほどではないが、隣接する市町には糸を作る工場がいくつもあった。
歴史はよく町や市、昔で言えば藩などの行政区分で語られることが多いけれど、それは地区の一軒一軒の情報をまとめた結果、言えることだ。おばちゃんの家で養蚕守護の掛軸が見つかることは、町の歴史を語る大事な1ピースになる。
 
ほかにも、5cmほどの長方形のお守りが沢山見つかり、厄除けや身体堅固、安産祈願と様々なお願いがあった。
 「布を裁って、小さいお守りが丁度入るくらいのお守り袋をお母さんが作ってくれたの。紐を通して首に提げていつも離さずに持っていたんだけれど、こういうことをするのはもうお年寄りばかりだったから、小学生の頃は体育の時間で着替える時に皆に見られるのが少し恥ずかしかった」
 と、おばちゃんははにかんで言った。昭和30、40年頃の話だ。今のように布できれいに包装され、汚れないようにプラスチックに入ったお守りと違って、当時は和紙に印刷しただけのお守りだったから、袋は手作りだった。袋の布地は特別な物ではなく、着物を作った時に余った端切れだったらしい。
 
こんな思い出と歴史がつまった物を捨てるのはもったいない。とりあえず、お守りたちを一時お預かりして写真を撮って、どんな信仰があったのかメモを取り、情報を残すことにした。書類関係も捨てずに残すことにした。今後どうするかは未定だけれど、何か自分たちの知らない世界について教えてくれる物を目の前で捨ててしまうことが怖かった。おじいちゃんが「昔からある大切なものだから」と言ってお蔵や押し入れの奥に本や骨とう品をしまう気持ちと似ていると思う。
でも、ただ残すのではまた意味不明な紙の山を作ってしまうから、興味を持ってもらえるように伝えていく必要はある。
 
古民家に訪れた人が言っていた。
「住んだことないけど、なんで懐かしく感じるのだろう?」
家には昔の人の生活臭が染みついていて、それを何となく嗅ぎ取っているのだと思う。この匂いは家に残された物から発せられて、柱や昭和に作られたちょっと古びた家具、壁に貼られたお守りだったりする。
古民家は、昔の物がぎっしりつまっていて、中にはその家や町の歴史がわかる物がひょっこり混じっている。昔と今では生活が変ってしまったから古い物を理解するのは難しくなったけど、当時の生活が見えてきて面白い。
もし、あなたが古民家のゲストハウスやカフェに行ったら、何となく懐かしいと思う感情がどこから感じるのか考えてみると、ちょっと楽しくなるかもしれない。

 
 
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2018-04-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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