fbpx
メディアグランプリ

ボーダーラインは何のためにある?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:秋山桂子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「次男くん、ちょっと変わっていますね」
次男が2歳になるちょっと前に、保育園に呼び出された。
みんなでお集まりをしているときに、参加せず1日ずっと洗濯機を見ているのが先生たちの目に「変わっている」と映ったらしい。
「先生、みんな同じだったら世の中おもしろくなくなるじゃないですか」
「お母さん、そういうことではなくて、発達相談にいかれた方がよろしいと申し上げているのです」
 
当時の次男は“回る物”に興味をひかれるらしく、洗濯機、室外機、扇風機をとにかくずっと見入っていた。
外出をすると、室外機をみつけては道すがら何度も立ち止まるので、先へ進めずイライラすることは多かったが、それほど気に留めていなかった。まして発達に問題があるとなんて想像すらしていなかったので、保育園の先生の言葉に一種の衝撃を覚えたが、ショックではなかった。
 
私は、次男が生まれてすぐに離婚をしている。次男と1歳半上の長男ふたりを抱えて当時は頼れる親もおらず、まさに孤軍奮闘のシングルマザーであった。仕事も忙しかった。毎日ダッシュで会社を出て、保育園に迎えに行き、帰宅すると、まず子どもたちをお風呂に入れ、同時進行でごはんを作り、洗濯をして、子どもたちを寝かしつけ、保育園からの書類に目をとおし、お持ち帰りの仕事をこなす。目標は午前0時就寝。結局疲れてしまい、こなすべき仕事が終わらず早朝に起きて片付ける。そんなカツカツな生活を送っている。
 
そして区の2才児検診を受診すると、
「ちょっと気になりますね」
保健師にも言われた。
今までの検診では、特に何も指摘されなかった。
こういうことはある日突然に降ってわいてくるものなのだと思った。
 
それから発達についてのテストや検診などを受けて、最終的には大学病院で「広汎性発達障害」と「注意欠陥多動性障害」という診断を受けた。
私は次男の障害がすんなりと受け入れられた。
むしろ何の診断も下されていない長男の方に手を焼いていたので「発達障害? だからなんだ?」くらいにしか思えなかった。
 
長男は赤ちゃんのころ、抱っこをしていて眠りにおちたところで布団に置くと、まるで「背中スイッチ」がついているかのように、置いた瞬間に泣き出した。
たまらない。私はいつ寝ればいいんだ?
それに比べ次男は、おなかがいっぱいになればぐずることもなくストンと寝てくれた。
長男がまだ寝返りくらいしかできなかったころ、大人用のベッドの上におき、何かのひょうしに目を離してしまったことがあった。
ぐるん、ぐるんと寝返りをうってふと気がつくとベッドの端に……危ない! なんてことがあった。
次男は、ほとんど動くことはなかった。
寝返りをうってもせいぜい1〜2回。
とにかく長男は、目を離すことができなかったので、次男が家でも洗濯機ばかり見ていてもさほど気に留めることはなかった。
むしろ手がかからなくて助かると思っていたくらいだ。
しかし、そうじゃなかったのだ。
医学的には“個性”というだけのことを越えていた。
 
正直に言って次男の“障害”という“個性”の違いがよくわからなかった。
ただいつもと違うシチュエーション、例えば運動会や学芸会などといったイベントには、大泣きしていつも先生に抱っこをされていた。
学芸会では、私の姿を見つけると泣き出してしまうから「お母さんは物陰に隠れてみてください」と言われた。
こっそり柱の影に隠れて見たつもりでいたが、次男に見つかってしまい、学芸会の舞台に私まであがるはめになった。
保護者で舞台に上がったのは、私くらいなものである。
小学2年生までは運動会のときに、校門をくぐることができなかった。
これもひと苦労であった。
人見知りはなかったが、場所見知りは激しかった。
これが“発達障害”なのか。
 
その特性ゆえひとつのことに固執する。
いや、ひとつのことしかできない。
 
現在は「発達障害」というワードも世間に浸透してきて、回りの人間の理解も進んできたのかもしれないが、私が子どものころは次男のような子は「ちょっと変わったやつ」「不器用なやつ」であった。
でも“ちょっと変わった”というボーダーってどこだろう? と、たまに思う。
私から見たら長男の方がよほど変わっている、いわゆる面倒くさい男だ。
次男が発達障害と診断されて、折りに触れて理解を深めようと努力をしているが、未だに“個性”と“障害”のボーダーがよくわからない。
 
昔、あるメールマガジンで「浜崎あゆみは“生きずらさ系”だった」というタイトルを見かけた。
「え? 生きやすい人っているの?」と思った。
そう思った私は、発達障害なのかもしれない。
 
次男は、たし算やひき算は苦手だが、大好きなパトカーのサイレン音やエンジン音は、本物と間違うくらいに上手い。
ボーダーラインを設けた方が、それを理解しやすいのかもしれないが、無理に線引をしなくてもいいじゃないか? と、長男と次男を見ていると思う。
もっといろいろな物の見方、捉え方があってもいいのではないか?
“個性”ってなんだろう?

***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】
天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。



2018-05-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事