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天狼院書店で、人生を変えることができるのか?《プロフェッショナル・ゼミ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:相澤綾子(プロフェショナル・ゼミ)
≪この話はフィクションです≫

この3月末で、15年務めた職場をやめた。
前の職場では、私は身体も心もボロボロになっていた。毎朝目が覚めると、ああ、またあの職場に行かなければいけないのか、という思いが沸き起こった。
育休から復帰した私は、つまらない仕事しか与えられなかった。定時で帰る人間だから、ということなのだろうか。定型的で、でも複雑で面倒で、誰もやりたがらないようなことを、過去にも経験があるからという理由でやらされた。子育て中の女性が、単純作業ばかり割り振られ、昇進からも遠ざかる、いわゆるマミートラックという状況なのだろうか。
それでも最初の一年目は、作業の手順を変えたり、エクセルの機能を駆使して、時短する楽しみを見出すことができた。最初のうちは、土曜日もこそこそ出勤しなければ終わらなかった事務が、月を重ねるごとに効率化して、休日出勤は不要になった。
二年目になると、効率化も頭打ちとなり、自分らしさを出すことが全くできなくなった。仕事は自己実現のためにするものではない。それは分かっている。でも仕事に自分の考えを反映させて、それでうまく回るようになることに喜びを感じることは悪いことではないと思う。
効率化して仕事が早く片付けられるようになったことについても、何も認められなかった。直属の上司でさえ、私の仕事の内容をよく把握していなかった。よく言えば信用されている、でも実態は放置されているという感じだった。管理部門のチェックがあるからそれに任せればいいと考えてのことだったのは分かっていたけれど、「こういうくだらない仕事に付き合っている時間はない」と思われているように感じた。

表面的には穏やかに楽しい雰囲気でいたけれど、もう心の中は、毎日息苦しくて、溺れているような気分だった。周りの誰からも馬鹿にされていると感じた。誰かのちょっとした言葉やしぐさを私への批判と感じたり、誰かが笑っているのを見ると、自分だけとり残されている気がした。
若い頃はこんな風じゃなかった。周りがどんな風に考えているか、気にして悩んだりした記憶はあまりなかった。どちらかといえば、一人でも平気なタイプで、気の合う友達と過ごしていれば満足だった。いつからこんな風になってしまったのだろう。毎日深くて暗い海の中で、どちらに向かえばよいのか分からず、もがいているような気分だった。

仕事をやめよう、と思った。

退職するには、上司に退職願いを出さなければいけない。それを考えると、急に気が滅入った。心の中ではどうでもいいと思っているだろうけれど、形だけは慰留するだろう。自分の部下が退職、しかも新しいチャレンジをするためではなく、ただやめるということになると、プラスの評価にはならないだろう。そして理由は何かと訊かれるだろう。もう仕事をやめるのに、そんなことにエネルギーを使いたくなかった。

そんな時に、私は天狼院書店の広告を見つけた。「人生を変えるライティング教室」という言葉が、私の身体の中に飛び込んできた。
広告をクリックすると、読まれる文章を書くための、蕎麦屋の秘伝のタレのようなものを教えてくれると書かれていた。ABCユニットという言葉が出てきた。どんなものなのだろうと気になった。久しぶりにワクワクするような気持ちになった。通信で受講できるということが分かった瞬間、ほとんど申し込むことを決めていた。
けれども、少し考えるフリをした。ゼミの受講生は毎週課題を提出することになっている。きちんと書くことができるだろうか。受講料を無駄にしてしまうことはないだろうか。できない自分にもっと落ち込む結果にはならないだろうか。いろいろ考えたけれど、好奇心の方が勝っていた。
一週間後、私は申し込みをした。

通信でもアウェイ感は全くなかった。講師の三浦先生の言葉は、まっすぐに私に届いた。私の生き方は間違っていたんだなと思った。それはつらいことだったけれど、わざわざそんなことを教えてくれるのはありがたいと思った。私はぼんやりと生きてきてしまった時間を取り戻すように、ライティング・ゼミの4か月間で、色んなことを学んだ。
課題を提出すると、毎回様々な問題点を指摘された。次はそのことに気を付けて書くと、今度は別の問題点を指摘された。なかなか合格がもらえなかった。
でも楽しかった。問題点を指摘されて落ち込むけれど、「次もまたチャレンジしてくださいね」という一言で、私はまた次の日から書こうという気持ちになれた。何かにチャレンジすることも、そんな風に応援されることは久しくなかった。自分にはまだ伸びしろがあるのだという気持ちになれた。

問題点としてよく私が指摘されたのは、「もっと読む人のことを考えください」ということだった。私は考えているつもりだったけれど、考えていないと言われた。
形としては、書くことは孤独な作業だ。でもその時には、読む人のことを考えながら、書かなければいけない。読まれなければ文章としては成立しない。本当は少しも孤独な作業ではないのだ。
私はその部分が苦手だった。
そして気付いた。私は結局、人と関わりながら仕事をしているつもりだったけれど、自分のことしか考えていなかったのだ。周りが今何を考えているか、次に何をしようとしているか、それを見越して、自分の行動を決めなければいけない。でもそれができていなかった。だから、人と関わらなくてもできる定型的な事務を与えられたのだ。
そして、もっと恐ろしいことにも思い当たった。若い頃、人からの評価を気にせずにいられたのは、学生時代には、成績という評価だけを考えていたからだった。地味で目立たない存在で、気の合う友達数人と付き合えてればよかった。色んな人とうまく付き合えなかったとしても、悩むことなんてなかった。暗くて深い海の中にいても、成績という方向がはっきりしていて、勉強してあの明るい方を目指せばいいのだと、迷うことはなかった。勉強は孤独な作業だ。むしろ、人付き合いは邪魔になるとさえ思っていたくらいだった。
でも仕事は違う。むしろいい内容の企画を考えても、それを一緒にやりたいと思う人がいるようなものかどうか、あるいは、説得できるかどうかの方が重要になってくるのだ。仕事は一人でするものではなくて、人間関係が大事なのだ。

退職届を出す勇気が湧いた。
上司には、ライティングの勉強をしたいと説明をした。少し鼻で笑われたような気がしたけれど、もう気にならなかった。
自分が態度を改めれば、いい方向に変えられたのかもしれないとも思った。もっと人と関わろうとして、上司や周囲のスタッフの尊敬できるところ、学ぶべきところを見つけ、真摯な態度で仕事に向き合えば、状況は変わるかもしれなかった。どちらに向かえばよいか分からない息苦しさを感じた時には、分からないと周りに訊けば、正しい方向が分かるのかもしれなかった。でもこの場所でそうするには、もう心が折れ過ぎていた。

そして私は、天狼院書店のスタッフ募集に申し込むことを決めた。
社員である川代さんや長谷川さんの募集案内に引き付けられて、自分も天狼院に「合流したい」と思った。受講生としては通信受講だったのに、通勤しようと思ったのは、自分でも驚きだった。
新人として雑用から始めることになるだろう。以前の自分ならうんざりするかもしれない。でも、通信受講でさえあんなに感動できるサービスを提供しているところに、今度は提供側として加われるかと思うと嬉しかった。どんなことでも喜んでやりたいと思った。
本屋だから、重い本を抱えての肉体労働もたくさんあるだろう。40過ぎの身体には堪えるだろう。電車通勤も、本を読む楽しみは増えるだろうけれど、たまに東京まで出るだけでぐったり疲れるのに、慣れるかどうか、ちょっと不安もある。
でもどうしてもチャレンジしてみたい。自分が尊敬する人や、憧れの人たちの間に囲まれて、いつかこんな風になりたい、いや、超えたいと思っている。

天狼院に出会って、大切なことに気付くことができて、本当に良かった。気付けば、人生は変えられると思う。ひょっとしたらそれが人生最後の日であったとしても、人生を変えようと思いさえすれば、変えられるんじゃないかという気がしている。
***

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2018-05-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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