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青森へ行くかプロゼミをとるか《プロフェッショナル・ゼミ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:中野 篤史(プロフェッショナル・ゼミ)

「あのさ、ちょっと出かけてこようかと思う。明日の夕方までには帰ってくるから」
部屋に入ってきた妻が、パソコンに向かう私の背中越しに話しかけてきた。
「ふーん、どこ行くの?」
「青森」
「なんで?」
「なんとなく……。私がお金出すから一緒に行く?」
でたと思った。目的のない直感トリップだ。そう聞かれたら行くしかない。しかし現在4月28日(土)の16時05分。今日は、プロゼミの投稿締切日だ。そして、まさに今から書き始めようとしているところだった。どうする? このまま出かけたら今週は投稿できない。迷った。青森へ行くかプロゼミの投稿か……。いや、待てよ。この旅をそのまま書いたら間に合うかもしれない。コンテンツになるかわからない。とにかく行ってみようか。
「いく!」と返事をした。私は、その後に起こる数々のアクシデントをまだ知らなかった。

ところで「青森のどこへ向かうの?」
「とりあえず、岩木山の方へ行きたい」と妻が言った。
Google mapで岩木山を調べる。最寄り駅は弘前だった。
新幹線の新青森駅からローカル線で、30分程のようだ。
「ヒロマエ駅が最寄だね」
「それ、ヒロサキって読むのよ」と妻に教えられた。

さて、今が16時10分。とにかく最短で新青森駅までいく時間をパソコンで検索してみる。
桜新町16:41-渋谷16:50 田園都市線
渋谷17:02-大宮17:39 JR湘南新宿ライン
大宮17:46-新青森20:40 新幹線
新青森 20:49-弘前21:29 奥羽本線

まずい、あと30分しかない。
「急ごう! 先に準備してて」と、妻を促す。困った。新幹線とレンタカー、そして宿はどうする? すでにGWに入っている。予約できるのか? 考えても仕方がない。とにかく準備して家を出よう。あとは、電車から予約をすればいい。高1の長女と中2の娘達に声をかける。「ちょっと、2人で青森まで言ってくるから、今日は2人で協力してやってくれる」
「はーい」と、驚いた様子も見せず次女が応えた。長女は昼寝中のようだ。玄関スニーカーを履いていると、寝ぼけ眼の長女も見送りに来た。
「じゃあね。いってきます!」
「いってらっしゃーーい!」2人の元気な声に送られ出発した。

とにかく青森へたどり着くため、まずは新幹線だ。田園都市線で渋谷に向かいながら、スマホで新幹線の予約を試みる。クソ! 最初のアクシデントが発生した。JR EASTへのログインパスワードがわからない。普段使わないので忘れてしまった。ログインできないとオンラインでチケットが買えない。仕方なくパスワードの再設定からやりなおす。そうこうしているあいだに、過ぎていく時間がもどかしい。再設定に悪戦苦闘している間に渋谷についてしまった。渋谷から大宮へ向かう湘南新宿ラインの中で、よやく新幹線のチケット予約が完了した。よし、次はレンタカーだ! しかし、ここで2つ目のアクシデントが待ち受けていた。

いつも使うニッポンレンタカーで、弘前駅の営業所を探し予約を入れようとした。しかし、到着する21時半頃には営業所が開いていないことがわかった。19時で閉店なのだ。そりゃそうだ、東京とは都合がちがう。しかたがないから、手前の新青森でレンタカーを借りるか。ところが、新青森営業所を調べてみると、営業時間が20時までだった。マジか! 新青森駅への到着は20時40分頃。ここでも時間オーバーだ。今日はこれ以上先へは進めないのか。新青森駅での宿泊を考える。いあ、あきらめるな。他に手はあるはずだ。そうだ、トヨタレンタカーだ。でも規模的にはニッポンレンタカーの方が大きい。ニッポンレンタカーが開いてないのに、トヨタレンタカーがあいているのか? そもそも新青森駅に営業所があるのかどうかさえわからない。とにかく調べよう。望みが薄い中、トヨタレンタカーの新青森支店を検索する。あった! しかも21時までやっている。ギリギリ間に合うのだ。ほっとしながらネットでレンタカーの予約を入れた。よし、残すは宿だけだ。じゃらん、楽天トラベルで弘前周辺のホテルを調べる。あった、1件だけ見つかった! GW初日で、しかも夕方だ。この時間から見つけられるなんて、ついている。早速、予約を入れようとしたところで、大宮駅に着いてしまった。仕方ない、乗り継ぎ時間が短いので新幹線に乗ってから予約しよう。この後、私は痛恨のミスを犯してしまうのであった。

新幹線はやぶさ33号の出発時間が17:49。腕時計を見た「17:44」
「はやく! 新幹線が出ちゃうよ!」駅弁を物色している私に妻が声をかける。
「大丈夫、すぐ行くから先にホームへ上がっていて」と応えた。あと5分ある。駅弁を買っても間にあうはずだ。腕時計を見た「17:46」エスカレーターを駅弁を持ちながら上がっていく。出発のアラームがなっている。まさか? そんなはずはない。あと3分あるはず。しかし……。
プシュー。乗るはずの、はやぶさ33号のドアが目の前で閉じた。一瞬何が起こったのかわからなかった。ちょっと待ってくれ。何が起こっている? 
「だから言ったのにー!」妻が泣きそうな顔になっていた。
チケットに書かれている時間を確認した。そこには「17:46発」と書かれていた。天を仰ぐ私。やってしまった。時間を間違えていた。顔から血の気が引いていくのがわかった。呆然と立ち尽くす。胃の辺りが気持ち悪い。助けられたのは、妻が一言も文句を言わなかったことだ。ここで、私の非を責めても何も生まれなどころか、旅行を台無しにしてしまうことを彼女は知っていた。彼女のおかげで、私はすぐに次の行動を考えることができた。力の入らない手でスマホを握り、新幹線の時刻を調べる。次の大宮発の新幹線は、はやぶさ35号18:46-新青森21:37だった。アウトだ。レンタカーの閉店時間に間に合わない。でも今はそれを妻に伝えるのはやめよう。とにかく何とかするのだ。場合によっては盛岡で降りて、レンタカーで180kmを北上してもいい。とにかく岩木山へ行くと心に決める。まずは、新幹線の切符売り場で事情を説明して、次のチケットを買おう。
「すみません、実はさっきの33号に乗り遅れてしまって……。次の便に乗りたいのですが」と説明をした。すると、ここで奇跡がおこった。18:10に新幹線の臨時便があるというのだ。新青森駅への到着時刻が20:58。レンタカーに間にも合う! そして、チケットも今回に限りということで、買いなおさずにすんだ。JRのカウンターの人が神様に見えた。新幹線に乗り込みホッとするのも束の間。問題はそれで終わりではなかった。まだ今夜の宿を確保できていない。

じゃらんにアクセスして、今夜のホテルを探すが一軒も見つからない。楽天トラベルでも検索してみるが見つからない。当然だ。当日の18:00過ぎにネットで予約を受け付けているわけがない。こうなったら人海戦術だ。スマホでGoogle mapを開く。岩木山周辺をだして、「ホテル」と入力する。日本海沿岸に2件、いわき山中腹に1件、宿が見つかった。旅の匂いのする日本海側の旅館へ電話をかける。

「もしもし、本日2名なんですが部屋はあいてますか?」
「すみません、今日はもういっぱいです」と、予定表を確認する間もなく返事が返ってきた。2件目も同じだった。残こるは、岩木山中腹にあるRockwood Hotel & Spaだった。
「もしもし、本日2名なんですが部屋はあいてますか?」
「確認しますので、少しお待ちください」と、40代後半くらいの男性の声が応えた。
妻の方へ顔を向けると、視線が重なった。「確認中」と、口だけ動かして伝える。2分ほど待っただろうか、電話口に男性が戻ってきた。
「お待たせいたしました。ご用意出来ます」
「ありがとうございます」
「お一人様、21,000円になりますがよろしいでしょうか?」値段にひるむ。でも、おそらく妻は泊まるというだろう。
「ちょっと、待って頂けますか」と、スマホの口を手で押さえて、妻に聞く。
「1人21,000円だって」
「オッケー」と、短く小さな声で妻が即答した。流石だ、こういう時の妻は躊躇しない。
「もしもし、それで大丈夫です。お願いします」。

露天風呂に入ろうと、内風呂から外へ出る扉を開けた。その瞬間、吹き込んできた冷たい風に肌が縮こまる。背中を丸めながら急いで湯に浸かった。「うぐふぅぅぅー」と思わず声が漏れる。まん丸の月を見上げながら今日一日を回想する。風が軽く頬を叩いている。怒涛の一日だったなー。もうすぐ日付が変わる。よくやったという達成感が……。

「あっ! プロゼミ!」

やってしまった。
仕方がない。今日はこれでよしとしておこう。
***

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2018-05-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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