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メディアグランプリ

娘の質問の答えは、私の仕事の中にあった。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:井上 智子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
今朝も大学3年生の娘から質問がきた。着替えを済ませ、メイクもバッチリ。身支度を済ませた娘が毎朝私に問いかける質問、それは「お母さん、今日の私って可愛い?」である。
誰でもそんな質問はするでしょうけれど、娘は毎日言ってくる。はっきり言って面倒だ。
 
記憶は確かではないが、幼稚園か小学校低学年の頃からこの質問は始まった。
幼い頃は「うん、可愛いよ」と答えておけば、娘は満足し「行ってきま~す」と
明るく出かけていたものだ。それが小学校高学年になると少しおもむきが変わってきた。
いつもの調子で「うん、可愛いよ」と答えると即、「誰より可愛い?」と追加の質問がきた。
それもいつもより真剣な表情だ。不意をつかれた私はすぐに答えることが出来ず、「うっ……」と言葉に詰まる。
 
娘はいたって普通の女の子、誰より可愛いか? と聞かれても答えようがない。
というか、可愛いの定義は人それぞれなので、私の可愛いと思う人と、娘の可愛いと思う人の基準は違うが、などと思いながら私は頭をフル回転させ答えを探した。
「そうそう、芸能人の〇〇より可愛いよ」と無難な大人の対応で切り抜ける。
満足げな娘を送り出しながら、本当のことって言えるようで言えないな、と心の中でつぶやいた。
 
中学生なると、芸能人の〇〇よりかわいいではもう通用しない。ウソだとわかっている。
全体の中の自分の位置をうすうす感じ始めているが、まだ認めたくない年頃だ。質問の内容もより高度になってきていて、具体的に「どこがどういう風に可愛いのか?」と言い出す。
私は面倒臭いながらも「目と鼻のバランス」とか「アンニュイな雰囲気」などと適当に流しながら毎日を過ごしていた。
 
成長するにつれ相手は更に手強い存在になっている。高校生になると質問に前置きがついてくるようになった。「お母さん、本当のことを言ってね。私が傷つくとか思わなくていいからね。親目線じゃなくて一般的に私は可愛い?」である。
親目線というのは、私がいつも親的(おやてき)には可愛いよと答えていたからであろう。
 
いやいや、もうハッキリ全体の中の自分の位置はわかっているはずなのに、これ以上何を求めているのか全くわからない。半ば投げやりな調子で「普通、普通、普通が一番」と答えると、娘は「ふ~ん」と、しょんぼりとした様子で出かけた。
 
私は、しまった! 本当のことを言ってしまった! と後悔しながら洗濯物を干す。
しかしこの後悔は全く的外れなものだった。
 
大学生になってもまだ毎朝の質問は欠かさない。
テーマは自分がイケてるかどうか! もうこれは娘の永遠のテーマなんだろうという気持ちで私は接することにした。
 
毎朝そんなやりとりをしたあと会社に向かう。
私は、自宅から1時間ほどの場所にある会社で働いている。
その会社で働く人は20人ほど。年齢は20代から60代、男女比は同じ。
 
昨年、娘より2,3歳年上の新入社員が入社した。人数は4人だ。昼食の席で話をしていると、その4人が幼い頃に見ていたテレビ番組は、私が娘と一緒に見ていたものと同じ。私と新入社員の4人は歳が離れているが、こういう共通点があると何だか嬉しい。と穏やかな気持ちでいられたのも束の間、私は業務命令でその新入社員4人の教育責任者となった。
 
「教育係なんて全く経験ありませんが」という私の言葉をさえぎるように上司から、子育てを経験してるのは君しかいないのでよろしくね、当社は教育に力を入れているんだから頼むよ、とのこと。はっきり言って荷が重い、出来れば避けたい仕事だ。会社の教育係と子育てって全然次元が違うでしょ、と心の中でつぶやいた。
 
そんな気持ちでスタートした教育係。娘と同じ年頃とはいえ、私なんかより遥かに高い学歴の持ち主たち。成績の良い子どもを相手にしたことがなく、学生時代の私は底辺をウロウロしていた人間。そんな私が社会人マナーや、社会人の心得、表の作り方、などの講義を行うなんて4人の親御さんに大変申し訳ない。
 
それでも仕事は仕事、申し訳ないが新入社員教育を開始した。最初は名刺交換でさえもおっかなびっくりで腰が引けていた4人。電話に出ても、〇〇会社でございます、と言ったきり無言。パソコン入力は指1本で! 講義終了後に何か質問はありませんか、と聞いても質問さえ無い状態。
興味ないんだろうか、と心配になり私は講義内容を何度も何度も考え直した。知らないのは当たり前なので、それを学んでいけば良いのですよ、と言い続ける。私の当たり前は全く通用しない中で、偏差値高い系の彼ら彼女らに何を伝えればいいのだろう、どう伝えれば伝わるのかを日々考えていた。
 
そんなある日の講義のあと、いつものように質問はありませんか? と聞いてみると、なんと質問があったのだ。それは起案説明書の書き方の講義でのこと、そのような内容の書類を作成し始めたばかりの4人。具体的に何をどのように書いてよいのかわからなくて困っていたとのこと。4人はそれぞれ部署も違い、仕事の内容も全く違う。先輩に聞いても先輩のように書けなくて困っているのだ、という。
 
質問が無かった4人に質問が出始めたことは大きな前進。その他にも色々な質問があり「成長したね!」と声をかけると、満面の笑みで「はい、ありがとうございます」「入社した頃の自分より成長できて嬉しいです」という返事だった。私はふと、入社した頃の自分より、いうところに引っかかった。
 
その瞬間、娘が何を求めていたのかがわかった、やっとわかった。
娘は、誰かと比べるのではなく、過去の自分と比べてイケてる部分が多くなっているかどうか、ということにシフトチェンジしていたことにやっと気がついた。
娘の質問の答えは、1年前より全然っ可愛くなったよ! なのである。

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2018-05-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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