メディアグランプリ

あの失恋がなかったら、きっと自分が嫌いなままだった。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:雪(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「良い彼氏でいるのが辛くなった」
そう言われて3年半付き合った人に振られた。30歳の誕生日を前にした秋だった。
 
その頃私は働きながら通信大学で学んでいて、学校の課題や実習や国家試験対策に追われていた。自分の選んだ道なのに気持ちの余裕がなくなり、「会いたい」とか「寂しい」とかネガティブなことばかり言うようになった。いきなり泣き出して困らせたりもした。
どんどんみじめになる自分に気づいていたけど止められなかった。そしてどこかで、「彼なら受け入れてくれる」と思っていた。だって3年半も一緒にいるのだから、と。
 
振られたのはそんな時だった。
 
「ああ、やっぱり」という気持ちと「なんで」という気持ちがグルグル回っていたけれど彼の決心は固く、私は現実感のないままその場で別れを受け入れた。
 
その数日後、偶然地下鉄で彼を見かけた。
全然、辛そうに見えなかった。
なんで。なんでなんでなんでなんでなんで。
物凄く悔しかった。もう新しい日常を始めているように見えたから。
完全に置いていかれた。私だけ取り残されている。そう思った。
 
変わりたい。変わってやる。もっといい女になって「惜しかった」って思わせてやる。
 
猛然と湧いてきた怒りと悔しさに任せて、その日、彼から貰った物を捨てた。見たら思い出す物も、一緒にいた時に良く着ていた服も捨てた。そうしたら部屋ががらんとした。着る服がほとんどなくなった。
 
生活の大部分を彼が占めていたことに呆然とした。3年半、という重みとともに、やっと「別れた」ことを実感した。
まるでペアアクセサリーの片割れになったみたいだった。2つくっつけて初めて形や文字がわかるアクセサリー。
私は半分になってしまった。もう二度と一つになることはないんだ。
いつのまにか怒りも悔しさも消えていて、あるのは喪失感だけだった。
 
日常の至るところで思い出す彼の気配から逃れるために、勉強に打ち込んだ。実習が終わり、国家試験も終わり、卒業目前になった最後の授業で先生がこんな話をした。
 
「“人”って漢字の由来、知ってる?」
 
人と人が支え合っている姿からきてるんじゃないの? なんかのドラマのセリフでもあったよね? と思っていたら、先生がホワイトボードに象形文字のような、ふにゃふにゃした“人”を書いた。
 
「これ、なにに見える? これはね、人が立っている姿を横から見たものを表しているの。人が互いに支え合っている姿じゃなくて、一人で立っている姿から“人”という漢字は生まれたのよ」
 
さらに先生は続けた。
「互いに支え合っている姿がこの“人”という漢字なら、片方が倒れたら共倒れになってしまうでしょ。支え合うことも大切だけれど、そのためには片方が倒れても一人で立っていられるようにならないとね」
 
グサッときた。倒れているのは私だ、と思った。ずっと彼に寄りかかって生きていたことに初めて気がついた。
ペアアクセサリーのように、2人で一つになることが愛することだと思っていた。
私が離れたくなかっただけだ。
一人じゃ寂しくて、不安で、自信がなくて。
だから「幸せにしてほしい」「愛してほしい」と思っていた。
 
自分で自分を愛せないから。
自分で自分を信じてあげられないから。
 
そうか、ずっと私は私を見ることをしていなかった。
私は誰かの一部じゃない。私は私なんだ。
 
もう半分でいるのはやめよう、と思った。
歪でもいい、綺麗じゃなくてもいいから丸になろう。
一人で立っていられる人になろう。
 
それから私は、今まで「自分には縁がない」と思っていた所に積極的に行くようにした。例えばデパートの化粧品売り場だったり、脱毛やまつ毛サロンだったり、お洒落な美容室だったり。イメージはお姫様が行きそうな所だ。
そして自分の食べたいものや着たいものや、やりたいことを出来るだけ叶えるようにした。「自分なんて」と言うのを止めた。少しずつ、ほんの少しずつだけど自信がついてきた。
 
そんな時だった。「ライティング・ゼミ」を思いだしたのは。
失恋する前から天狼院書店のことは知っていた。たまにホームページを覗くと、スタッフや参加している人たちのキラキラ顔が見えるようで眩しかった。
「私には縁がない」そう思っていた。手の届かない所だ、と。
 
でも。
以前はそう思っていたけど、本当に「縁がない」んだろうか。「手が届かない」んだろうか。
だってデパートにも、サロンにも行けた。
自分で、自分の価値を否定していただけじゃないか。
今の私なら、できるかもしれない。
ずっと、やってみたかった。その気持ち、自分で叶えてあげよう。
 
そうして「ライティング・ゼミ」を始めた。
失恋がなかったら、自分と向き合うことから逃げたままだった。
こうして自分のことを書いてみよう、なんて思わなかった。
書いてみてやっと思えた。
ああ、今の私で良いんだ、と。
 
一人で立つのは、怖い。苦しい。けれどそれ以上に、ワクワクする。
だってどこへだって行ける。なんだって出来る。
さぁ、次はどんな新しい世界へ飛び込もうか。

***

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2018-05-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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