メディアグランプリ

お弁当作りの苦痛から脱出した1つの方法


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:眞水純子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「今度からはミートボールは3つまでにして」
 
帰って来るなり不機嫌そうに娘が言う。今朝持っていったお弁当のことを言っているのだ。昨夜、お弁当がいることを急に聞かされた。そんなこと急に言われてもこっちだって困るのだ。夜ごはんは食べてしまったし、食材が常に豊富にあるわけではなのだから。がらーんとした冷蔵庫の中を見渡してみると、かろうじてミートボールと卵が目に入った。お弁当の彩りを添えるプチトマトやブロッコリーもないまま、ミートボールと卵焼きのみでお弁当箱を埋めてみた。こちらとしては、とりあえず埋めることが出来れば任務終了なのである。
だが、無事に終了とはいかなかったようだ。ミートボールが8割を占めているお弁当をお友だちから笑われてしまったのだ。悪気はないにしろお年頃の娘にとってはとても恥ずかしかったのだろう。そのため「ミートボールは3つまでにして」の発言になったのだ。
 
見る気はなくても一緒に食べている人のお弁当がつい目に入ってしまう。美味しそうなお弁当の子はちょっと得意気だったりもするのだ。実際に私がそうだった。OL時代、実家から通っていた私は母が作ってくれたお弁当を持って行っていた。母のお弁当はいつも美味しかった。見栄えもよく、お昼の時間になると独身の男性社員が覗きに来ることもよくあった。
「美味しそうだなぁ。俺も作って欲しいなぁ」
そんなことを言われて私も嬉しかったことを覚えている。なのに私と言えば娘からダメだしをされてしまっているのである。
 
自分では料理は下手ではないと思っているが、作ることが億劫に感じてしまう。出来ることならやりたくない。私にとってお弁当とはまるで「母親の実力テスト」のようなものだと感じている。
 
料理上手なのか、センスがいいのか。そして子どもに対してどれ位の愛情を注いでいるのか。日ごろの生活ぶりをお弁当によって一瞬のうちに判断されてしまうのだ。さしずめ私のお弁当は、何の準備もしないまま抜き打ちテストを受けたようなもので、あえなく落第点を取ってしまったのだ。
 
そして娘は4月から高校生になった。ありがたい給食はもうない。これから3年間はお弁当生活が続くのだ。正直気が重いが、撃沈している場合ではない。
 
テストを受ける時には、前持って準備する。今まで出た問題の傾向を知り対策を立てる。お弁当も一緒ではないか。きっとある一定のパターンがあるはずだ。
まずは、私との違いを見つけるためにSNSにアップされている美味しそうなお弁当を観察した。
写真を見るだけで、羨ましくなってしまう。彩り豊かで本当に美味しそうなのだ。きっと料理も上手で日々を楽しく丁寧に暮らしているんだろうなと容易に想像ができる。ご家族が食卓を囲んで、幸せに笑っているシーンまで見えて来そうである。1つのお弁当だけでそんな事までイメージしてしまうのだから、たかがお弁当されどお弁当なのだ。
 
是非とも私も平均点には近づきたい。「学ぶ」ことは「まねる」ことからなので、まねの出来るところを見つければいいのだ。何枚かSNSの写真を見ていると傾向と対策が見えてきた。
 
私との違いは明らかだった。私は茶色がメインなのに対して、美味しそうなお弁当は、茶色が少なく、赤、黄、白、緑と彩りが豊富なのだ。そうは言ってもおかずのスタンダードといえば、唐揚、ハンバーグ、焼肉、コロッケ。どれを取っても茶色だ。もうこれは避けられない。であるならば、茶はそのままで他のものでカバーできればいいのではないだろうか。
 
自然界を想像してみて欲しい。大地やそこに生えている木々たちは茶色なのだ。
茶色だらけの荒野は殺風景であるが、そこに若草色の新芽が芽吹き、新緑となればとても鮮やかで見ているだけで気持ちがいい風景になる。大事なのは「緑」の存在なのだ。
 
お弁当も同じ。茶色があっても新緑の世界にすればいいのだ。
緑の分量を今までよりも多くすればいいのだと結論づけた。それなら私にも出来そうである。そしてそれに適した食材をついに手に入れた。
 
その食材は「フリルレタス」
ご存知だろうか?普通のレタスよりも葉先がフリルのように細かく波打っているのが特徴で、このフリルがお弁当からひょっこり顔を出すと何とも可愛らしくなる。このフリルレタスを入れるだけで、彩りが数段よくなるし、おかずの仕切りとしても使える。お弁当箱の下に敷いておくと底上げの役割もはたし、空間を埋めてくれるので、おかずがスカスカになることもない。出来栄えも上々で思わず嬉しくなってくる。
 
もし同じようにお弁当作りにお悩みならは、一度試してみてほしい。あまりのオールマイティさにきっと驚くことだろう。
たった1つの食材を入れただけなのに見た目が変わり、ただ埋めるだけの苦痛な作業から、少しだけ楽しい時間へとランクアップしたのだ。
 
「今日のお弁当美味しかった。お昼が楽しみなんだ」
そんな言葉が娘から聞ける日もそんなに遠くないかもしれない。その時は、きっとガッツポーズをしていると思う。

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2018-05-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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