メディアグランプリ

自分の枠を壊すきっかけは避けているものの中にある


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:西嶋祐子(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
「ネイルとかしてみたらいいんじゃない?」
きっかけは、お友達のひとことだった。
 
その数日後、私は、
タロットカードをつかった
イベントをすることになっていた。
 
「カードと一緒に手元を見てる人は多いと思うから」
 
返事をしつつも、
どうしようかと迷っている私がいた。
 
私が、ネイルなんて。
 
それまでの私は、
とにかく節約命だったので、
どうしても必要とはいえないものに
お金をかけるということが怖かったのだ。
 
しかも、
自分にお金をかけるということに抵抗があった。
 
勉強代には、年収の何倍もの金額をかけてきたのだが、
これはまだ自分で納得できた。
 
これは投資だからと。
勉強して、身につけたものは、なくならないだろうと。
いいことにつかっていると納得させるような気持ちもあった。
 
だけど、ネイルは違う。
別に、しなくてもすむものだ。
 
服なら、まだわかる。
最小限は必要だし、残るから。
 
ネイルは、一度すれば、一生ものというものではない。
どうやら、3、4週間で
取り換えるもののようで
その都度、時間もお金もかかる。
 
何より、私には、似合わないんじゃないのか。
そんな女子的なものは。
 
さんざん悩んだ末に、
仕事としてするイベントに必要なものだからと
割り切ることにした。
 
ドキドキしながら
ネイルサロンに電話をかけ
予約をした。
 
初めて行く私は、
いきなり失敗してしまった。
 
のびっぱなしの
きたない爪を見せたくなくて
自分で、短く切りそろえてから
お店に行ってしまったのだ。
 
「あら、これはいつ切られたのですか?」
「来る直前です」
 
どうやら、長さや形を整えるところから
はじめるものらしい。
 
バツが悪そうに下を向いている私の短い爪を
ネイリストさんは
なんとか形を整えてくださった。
 
店内には
色とりどりの
ネイルの見本がある。
 
色の濃淡がついたものや
一色でシンプルなもの
ラメが入ったキラキラしたもの
 
その中から、好きなものを選ぶ。
自分が、イメージを伝えて
こういう風にしてほしい
というのも可能のようだ。
 
爪の上に、選んだ色のジェルをのせてもらっては、
小さな機械の中に
指を入れて待つ。
そのジェルを固めるためだ。
 
じんわり爪の先があつくなってくる。
これを何度も繰り返す。
 
すると、だんだんと
ジェルで覆われた爪が
艶っとしてきているのがわかって、
うれしくなる。
 
見本でイメージしているのと、
目の前で
私の爪の上で出来上がっているものは
いい意味で違うのだ。
 
こっちの方がかわいい。
私が選んだデザインかわいい。
私は、ひとりでニンマリする。
 
最後の仕上げをするころには、
丸みをおびた
つややかな光沢の爪に変わっている。
 
わー、かわいい。
思っていた以上に
うきうきしてきたのだ。
 
これが一番意外だった。
 
あまりにもうれしくて、
思わず
出来上がったネイルの
写真を撮ってもらうよう
お願いしてしまったくらいだ。
 
それと同時に、
ネイルを仕上げてもらった瞬間から
もう次のネイルのデザインを考えている私がいる。
 
これが不思議でしょうがない。
 
誰かから見て
キレイに見られること。
 
そのためにネイルをするものだと思っていたが、
逆だった。
 
いつまでも、自分の爪をみながら
ニタニタしてしまう。
 
それは家に帰ってからも同じで、
布団に寝っころがっているときも
お店で、お会計をするときも
何気に目に入ってくるのだ。
 
そのたびに、ウキウキする。
こんなに気分が上がるものなんだ。
私は、おかしいんじゃないかと思うくらい
ずっと自分の爪をみていた。
 
「わー、ステキですね! そのネイル」
 
イベント会場ではもちろんのこと、
思っていた以上に
人から褒めてもらえる機会も多かった。
 
私は、人前で、手を出すのが苦手だった。
テニスで、真っ黒に日焼けした手先を
出すのも恥ずかしかったし、
子供みたいな、小さな手を出すのもイヤだったから。
 
不思議と、ネイルをしている手は、
すっと差し出せた。
 
私の嫌いな手が
気にならなくなった瞬間だった。
 
そして、ネイルが傷つかないように
手の動作を
そっとそっとゆっくりにしている私がいる。
 
なんだかんだで
すっかりネイルを気に入ってしまい、
今では、当たり前のように
ネイルサロンに通っている。
 
必要ではないものに
お金をかけるのが嫌だったはずなのに
これだけいい気分でいられるならいいじゃないか
と今は思っているのだ。
 
このことをきっかけに、
必要でなくても
自分がいい気分でいられるものに
お金や時間をかけられるようになってきた。
 
そして、これがまた楽しいのだ。
 
自分の枠を壊すきっかけは
避けているものの中にあるものだな。
 
つやつやしたネイルを眺めながら、
他にも
食わず嫌いのままで
見向きもしないものに、
お宝が眠っているのかもしれない
と、別の意味でもニンマリしている私である。

 
 
***

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2018-05-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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