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笑えない顔面コンプレックスから学んだこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:中村 英里(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
あなたには、コンプレックスはあるだろうか?
 
私にはある。見た目に関する、強烈なコンプレックスが。
きっかけは、子供だった私に父親が何の気なしに言った言葉だった。
 
父に悪気はなくて、「自分と似ている」というのを嬉しく思って言った一言だったが、私はそれで「そうか、これは目立つものなのか」と思って、気にするようになった。
 
それは顔にあるものだが、メイクでは隠せない。
雑誌のメイク特集にも、それを目立つようにするためのメイク法は載っているが、逆に目立たなくさせるための方法は載っていなかった。
 
笑うと目立つので、人前で笑うこともできなくなった。
学校で先生に褒められたときにも笑わないようにしていたら、「何よ、愛想のない子ね」と言われて傷ついたこともある。
それでも、私は笑わなかった。
 
高校、大学、社会人と、ずっとそれに対してのコンプレックスは消えなかった。
人に言うこともできなかった。言ったら「気にしてるんだ」と、それに注目されてしまうと思ったから。見られるのが怖かった。
 
「それ」とは何かというと、「鼻」である。
私の鼻は、人よりも高くて横幅も大きい。小さいころから、ずっとコンプレックスだった。
 
父も母も鼻が大きいので、どちらに似ても鼻が大きくなるのは避けられなかっただろう。
私はどちらかというと父に顔が似ていて、それを父は嬉しがっていた。
そして、「鼻がお父さんとそっくりだよね! 笑うと横に広がる感じが」と、嬉しそうに私に言った。
 
言われたのは、たしか中学生くらいのことだっただろうか。
今になってみると、まぁ正直本当に似ているからその通りなのだが、見た目を気にするようなお年頃になってきたタイミングだったので、「え、私って人より鼻が大きいの?」と気にするようになった。
 
高校になって、メイクをするようにもなり、雑誌を買うようになった。
コンプレックスを解消するメイクの特集を見ても、ノーズシャドウなど、鼻を高く見せるためのメイク法は載っているが、小さく見せる方法はどこにも載っていない。
 
そもそも、大きいものを小さく見せるのはかなり大変なのだ。
顔の中央にでーんと鎮座している鼻は、どうやっても隠すことはできないし、人と話すときにも必ず目に入ってしまうし。
 
その事実に、思春期の私は絶望した。
 
バカみたいだと笑われるかもしれないが、家にいるときはずっと鼻をつまんでいた。
小鼻のふくらみが抑えられて、横幅が小さくならないかな、と淡い期待を抱きながら。
鼻に力を入れると少しだけ小さく見えることを発見して、外ではぐっと力を込めたままでいた。
 
それでも、やはりどうにもならない。
笑顔をつくると、横に広がる鼻が気になる。
だから、人前で笑うのをやめた。
 
最初は意図的に笑わないようにしていたが、慣れてくると、だんだん笑わないことが普通の状態になってくる。
そうすると、面白いことがあって笑おうとしても、うまく顔が動かなくなるのだ。
 
人と話すと、笑わないようにするのは難しい。自然とグループの輪から離れ、一人で過ごすことも多くなっていった。
 
丸一日、学校で誰とも話さないこともあったが、話す頻度が減ると、声の出し方も下手になるようだ。たまに話しかけられたときに、声が裏返ってしまうことも多かった。
 
そんな状態で、中学〜高校くらいはコンプレックスにどっぷり浸かった暗黒時代を過ごしていて、大学、社会人のはじめくらいまで、長いこと引きずっていた。
 
30歳を超えて「見た目」を昔ほど気にしなくなったこともあり、ここ最近は自分の鼻を見ても、もうなんとも思わない。
しかし、これまで誰にもこのコンプレックスを、打ち明けることはなかった。
 
一般的には、「鼻が高いほうがいい」という人が多いから、この悩みを話したところで理解されないだろうと思っていた。
それに話したら、気にしているんだと気づかれてしまう。鼻に注目されてしまうんじゃないか。笑われるんじゃないか。そんな風に思っていたから。
 
でも少し前に、彼に「私鼻が大きいのがすごくコンプレックスだったんだよね」と、思い切って言ってみたことがある。
もう気にしていないとは言え、中学・高校のころの憂鬱な気持ちを思い出してしまうので、コンプレックスのことを話すのは、それなりに勇気がいることだった。
 
私に負けず劣らず鼻が高くて大きい彼は、「あぁ〜わかる、俺もすごい嫌だったな、人に言われたりして」と言っていた。
あぁ、鼻が大きい人はみんな通る道なのかもなぁと、なんだか少しホッとしたし、「そんなことないよ」とか「気にするな」なんて言われなかったことに、救われた。
 
コンプレックスを抱いている人に対して「気にすることないよ」は一番無駄なアドバイスだ。
気にしなくて済むならとっくにそうしている。気にしないようにできないから気になるわけで、だからコンプレックスなのだ。
 
「悩み」は、他人にとっては「そんなことで悩んでいるの?」と思うようなものだったりする場合もある。
私の悩みだって、鼻が低くて悩んでいる人からしたら、贅沢言うんじゃない! と思われてしまうことかもしれない。
でも、当事者は「そんなこと」とは思えないし、人に言うのはものすごく勇気がいる。
 
今はもう気にしていないし、だからこそこうして文章にできているわけだが、誰にも悩みを打ち明けられず、少しでも鼻が小さくなればと、毎日鼻をつまんでいた中学生の私を思い返すと、今でも涙が出そうになる。
 
先日、彼のご両親とお兄さんに会いに、彼の実家に行ったのだが、ご家族みんな、彼と同じく鼻が大きかった。私の両親も鼻が大きいし、私も大きい。
 
お互いの両親に結婚をせっつかれていることもあり、彼とも自然と結婚や子供の話題も出るのだが、彼との子供ができたら、きっとどちらの家系に似ても、立派な鼻になるだろうな、とふと思った。
 
父に全く悪気がなかったことは、わかっている。
鼻だけじゃなくて、「足の爪のかたちが似てる!」「親指を立てたときの反り方の角度がそっくり!」とか、もう何でもいいんかい、と言いたくなるくらい細かいところも「そっくり!」と嬉しがっていたことを、子供ながらに覚えている。
 
父は無邪気で、思ったことを言ってしまう人なのだ。
だから、傷つけようとか、そんなことは微塵も思っていなかっただろう。
 
ただ、何気無い一言でも、子供は傷つくことがある、というのは覚えておきたいと思う。
思春期の女の子への、容姿に対する指摘はとくに。
 
嫌な思いはなるべくしないほうがいいけれど、この経験があったからこそ、自分は同じことをしないようにしよう、という学びになった……ということで、父親には感謝しておこう。
 
もし子供が「鼻が大きいのが嫌なの」と言ってきたら、そんなこと気にしないの! なんて簡単に済ませたりしないで、きちんと向き合おう。
そして、勇気を出して悩みを打ち明けてくれたことを、ほめてあげようと思う。

 
 
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2018-05-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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