プロフェッショナル・ゼミ

夫婦の家事・育児の分担図を書いてみて、気付いたこと《プロフェッショナル・ゼミ》


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記事:相澤綾子(プロフェッショナル・ゼミ)

モヤモヤした。イライラして、どっと疲れが出た。
職場の先輩が薦めてくれた「ワンオペ育児」を受け取り、読めばスッキリしたり元気になったりするのかな、と期待していたのだけれど、完全に裏切られた。
内容は、すごく良かった。分かりやすくて、さらっと読めて、色んな事例が出てきた。私の場合、夫の仕事の帰りが遅いことがかなり問題なのだけれど、朝の洗濯は、ほぼ夫がやってくれる。夫が単身赴任しているAさんよりは、ましな方なのかなと思う。でも、保育所の送り迎えも分担してくれるBさんよりは、私の方が大変かなと考えたりした。
最後まで読んでみて、様々な事例や、なぜ夫が家事や育児に協力的ではないのかといったことは書かれていたけれど、これといった解決策が示されているわけでもなかった。それがちょっと残念だった。そしてモヤモヤ、イライラだけが残った。じゃあどうすればいいの、という感じだった。
私は先輩に本を返しながら、
「良かったんですけど……実は読んでかなりイライラしちゃいました」
と正直に言ってみた。
「そうね、この本はどちらかといえば、問題意識がない人に、これはおかしいんじゃないか、と思ってもらうための本だからね」
確かに、私は夫との家事・育児の分担には、もともとかなり強い問題意識を持っている。夫の方が忙しいから仕方がない、ということでは片付けたくなかった。こちらは仕事を定時で終わらせるために必死になって、子どもを迎えに行っている。一方夫は、たまに送別会だと言って、私に確認もせず飲んでくることもある。平日の夜の家事・育児を完全に私に任せきっている。私なんか、職場の歓送迎会に参加するためにも、事前の根回しや準備が欠かせないというのに。こうしたことを当たり前とか仕方ない、などとは全く考えていない。
でも私たちより5歳くらい上の世代は、結婚したら仕事をやめる、出産したら仕事をやめる、なんていう人も結構いた。そういう世代にとっては、仮に仕事をやめなかったとしても、「仕事をさせてもらっている」という感覚があるかもしれない。仕事をしていても、家事は自分がしなければいけないと思い込んでいるのかもしれない。
そういう人たちにとっては、この本で大きな気付きを得られるかもしれない。でももともと問題意識を持っていると、さらにモヤモヤ、イライラしてしまうということだ。
「家事・育児の分担図は書いてみた?」
本の中には、夫に家事・育児に参加してもらうために、分担状況を「見える化」したものが載っていた。紙に大きく十字を描いて4つのエリアを作り、右向きの方向を妻、左向きを夫、上向きを毎日、下向きを時々とする。例えば、夫が毎日洗濯をやっているのなら、左上のエリアに洗濯と書き込む。ゴミ出しは週に数回だけれど、妻がやっているのなら、右下のところに、ゴミ出しと書き込む。子どもを起こすのが半々なら、上側の真ん中あたりに子どもを起こすと書き込む。そんな感じの図だ。
以前SNSでも拡散されて、話題になっていた。
「あっ、まだです。やってみたんですか?」
彼女はにやりと笑った。
「なかなか良かったよ。結局旦那さんには見せられなかったけれどね」
見せられなかったら意味がないんじゃないか、とも思った。でも確かに、見てもらうことを想像すると、ちょっと勇気がいる。
「私もやってみます」

週末、朝、夫が淹れてくれたコーヒーを飲みながら、家事・育児の分担図を書いてみた。土曜日はいつもそうなのだけれど、夫が起きたのは私より2時間ほど遅かった。子どもたちはそれぞれ自分の好きな遊びに没頭していた。夫は味噌汁を温め直して朝食をとり、食べ終えた流しに運ぶとコーヒーを淹れ始めた。
夫が自分で注文したミル付きのコーヒーメーカーで、豆からだと香りも良くて本当においしい。「コーヒーを淹れる」と、夫、時々を示す左下のエリアに書き込んだ。毎日淹れてくれると嬉しいのだけれど、夫はぎりぎりまで寝ているので、私が子どもたちを連れて出勤するまでに淹れることができず、平日は飲むことができない。
食事は私が作ったし、昼は外食するかもしれないけれど、夜は私が作る。だから右上に「食事づくり」書く。「宅配食材の注文」も右上だ。食事の後片付けは、少し真ん中寄りの右上のエリアだ。私が朝できずに夫が食洗器に入れてくれることも多いので真ん中寄りにする。けれども、今朝みたいに、流しに運ぶだけでなくてさっとすすいで食洗器に入れればいいものを、置いただけで済ませたりするので、やはり右上だ。
子どもの自転車の練習や外遊びは夫がやっている。でも週末だけなので、左下だ。
外遊びやおでかけの時に夫は大量の写真を撮る。こうした写真の整理は、この毎日の戦争のようなあわただしさの中では、はっきり言って個人の趣味の領域で、家事・育児の範疇には入らないと思う。でもいつか子どもたちが成長したら大事に思うだろうから、左下に入れておこう。
洗濯は、平日は毎日、土日もほとんど夫がやってくれているので、左上だ。洗剤の補充も含めてやってくれている。ただし、洗濯物を集めるのは私なので、そこは別にして、右上に書き込む。左上には、洗濯干し、洗濯取り込みとも書き込む。今日は、私が集めてスイッチを入れ、既に脱水まで終わっていた。夫がそれを干している。
その他、学校や保育所の準備、送迎、連絡帳などは全て私が担当なので、右上に書き込む。
こんな感じで書いてみた。当然の7対3くらいで私の方が多かった。でも、書きながら、夫がやっていることにもいろいろと気付くことができたのは良かった。先輩が旦那さんには見せられなかったけれど、と言いながらも、にやりと笑ったのは、そういうことなのかもしれない。

夫が洗濯物を干し終えたので、私は声をかけた。
「これ、ちょっと見て欲しいんだけど。直したいところとか、書き加えたいことがあったら書いてね」
そう言うと私は席を立ち、私は流しの食器を食洗機に入れて、スイッチを入れた。炊飯器の中に半端な量残ったご飯をラップに包んで冷凍庫にしまい、炊飯器のおかまを洗った。入れ代わりでテーブルについた夫は、分担図を眺めていた。あまり興味を持たないかと思ったけれど、意外にしっかりと上下左右を見較べていた。普段、そんなの家事でも育児でもないと文句を言っていた写真の整理を入れておいたことなどは、夫はまんざらでもない気持ちにさせた気がする。
「で、どうなの? 足らないところは書いていいんだよ」
見終わったのか、スマホを見始めた夫に声をかけた。子どもたちを連れて遊びに行く場所でも検索しているのか。
「うん、いいんじゃない」
ちゃんと自分から感想を言ったり、話し合う雰囲気になったりすることを期待していたけれど、そこまで欲を出しても仕方がない。とりあえず、家事・育児の分担の現状について、共通認識が持たれたということで、今回は良しとしよう。

ところが、翌週から、夫が比較的毎日早く帰ってくるようになった。驚いた。とはいっても、電車通勤片道1時間なので、せいぜい子どもたちをお風呂に入れているときか、布団に入れてまだ目が覚めているうちに間に合う程度だ。それでも寝静まるまで一人でやるよりも、ずっと気持ちが明るくなる。子どもたちもパパの帰りが早いことに驚いてワーワーキャーキャー大騒ぎした。結局5日間のうち3日は9時台に帰ってきたことになる。ここ数年の働き方を考えると、奇跡的なくらいだ。
そして夫だけではなくて、実は私の方も、気持ちの変化があった。
例えば、朝干した洗濯物を取り込んだりするのは「私の方が大変なんだから、それくらいやってもらわないと」とこれまでなら考えていた。でも、「ちょっと余裕ができたから、やっておこう」と自分からやる気になったりもした。
お互いにいつまで続くかは分からないけれど、家事・育児の分担図がいい方向に働いたのは間違いない。

「ワンオペ育児」の本には、どこにも解決策は書いていなかった。けれど、そんな万能の解決策なんてどこにもあるはずはない。それぞれの家庭の中で、妻と夫で協力しながら、話し合いながら、見つけ出していかなければいけないのだ。そのきっかけになるのが、まずは読んで感じるモヤモヤ、イライラなのだ。問題意識だ。その気持ちをどうにかしたいと思うことから始まる。そして、その後の解決策への道しるべが、先輩の家や我が家の場合は、家事・育児の分担図だったということになる。
誰でも幸せになりたいと思って結婚をし、家庭を築く。子どもが生まれたら、もっと楽しくなるだろうと期待する。でもうまくいかなくて、ケンカが絶えなくなり、離婚という道を選ぶこともある。それがベストな道ということもあるだろう。けれども、可能であれば、ずっと楽しく過ごせるようにしたいといのは、当然のことだと思う。
他人と暮らしていれば、考え方が違ったり、相手に不満を持ったりすることも当然出てくる。その時に、自分の都合や思いばかりで頭がいっぱいになって、口に出せば、お互いに傷つくことになる。楽しく過ごすためには、きっとたくさん努力をしなければいけないのだ。それはお互いに我慢をしなければいけないということではなく、お互いの状況を理解しあった上で、歩み寄ろうと努力し続けなければいけないということなのだと思う。
そのことをつい忘れてしまいそうだけれど、これからも我が家では、1年に1回くらい家事・育児の分担図を書いてみよう。できればただ見てもらうだけじゃなくて、話し合ってもみたい。
そして、お互いにとっても、子どもにとっても、居心地のよい家庭を目指したい。

藤田結子著「ワンオペ育児 わかってほしい休めない日常」

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