メディアグランプリ

乱れる、オンナ。


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記事:夏目則子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
悲しみのどん底は、いつも同じタイミングでやってきた。
 
大学時代、初めて付き合った人。
その人以外には誰も愛せないと思っていたし、その人なしでは生きていけないと思っていた。その人は私のすべてであり、神様のような存在であった。
大学生とはいえ、まだ幼かった私に上手に男性と付き合う術はなかったが、4つ年上のその人は、余裕で私をあしらっているようだった。気が付くと会いたがるのは、いつも私の方だった。もちろん恋の指南書も読んで勉強した。
「男から会いたいって言わせなきゃ」
とアドバイスしてくれるお姉さん方も、たくさんいた。
向こうから掛かってくるまで、こちらから電話するのは止めよう。
そう何度も決心した。でも、いつもどうしても我慢できずに電話してしまう。
決して喜んでる風でもないその人と会い、会わなければよかったと後悔しながら彼の部屋を後にしていた。
電話したくなるタイミングは、いつも同じだった。そして、
「別の人と結婚することにしたから、もう会えない」
彼からそう告げられたのも、同じタイミングだった。それが本当だったのか、私と別れるための嘘だったのか、結局のところわからなかったが、それがその人と会った最後だった。
悲しくて、1ヵ月間、毎晩押し入れの中にこもって泣いた。朝なんか来なければいいのにと思った。
 
しかし、女とは過去を振り返らない生き物である。神様だと思っていたその人はすっかり過去となり、大恋愛の末に別の人とあっさり結婚をした。子どももできて、幸せなはずだった。そんな日々が崩れるきっかけとなったのも、同じタイミングだった。お互いに家庭に対する価値観が違っていたのは、結婚前からわかっていた。私には家にいて自分に従順で、家庭のために尽くしてほしい欲しい夫と、仕事をして自分の人生も大事にしたい私。愛があれば乗り切れるとは思いつつ、小さないさかいはいつもあった。
「私は仕事をすることは辞められない、絶対に」
ある夜、夫に向かって宣言した。もっと違う言い方をすればよかったのだろうか。夫の顔が、それまでの言い合いの時とは違う表情を見せたのに気付いたが、私は自分を止められなかった。
「自分の幸せは、自分でつかみ取りたい」
その時、あきらめたような、悲しいような表情をした夫は、その後、二度と私に笑顔を見せてくれはしなかった。離婚は意外にあっさりと決まった。
あの夜さえなかったら、二人は価値観の違いの乗り越えられていたのだろうか。
竹内まりやの曲を聴いては幸せだった頃を思い出し、涙をこぼれた。
今の方が幸せ、と思えるまで、2年かかった。
 
その後、私は仕事に没頭した。子育てとともに、仕事は私の生きがいとなった。仕事は本当に楽しかったし、我ながら頑張った。娘のことをのぞくと、仕事は私の幸せの中心となった。
ステップアップのために転職をいくつかしたが、その面接でうまく行かないときは、いつも同じタイミングだということが分かった。
広告代理店で働き始めて以降、何度となく行ってきたプレゼンでも、うまく行かないときはいつも同じタイミングであることを、私は確信した。
クライアントに怒られるとき、せっかくの新しい恋の芽を摘んでしまうとき、お酒で失敗してしまうとき、それらもいつも同じタイミングだった。
 
失敗したり、どうにもうまくいかなかったりして、悲しみに打ちひしがれると、その翌日か翌々日には必ず、女性の月の日がやってくるのだ。もはやそれは、百発百中といえるほどに正確なのである。私はそれを“不吉なもの”と思い、毎月その日が来るのを計算しては、その前数日間は、特別なことは何もしないことに決めた。そうやって、不吉なものを避けようとしていたのだ。
 
随分とたってから、色々なメディアで取り上げられるようになってはじめて、「PMS」(月経前症候群)という言葉を知った。生理前の数日間、頭痛や肌荒れなど体の不調を感じたり、イライラしたり憂鬱になったりとなど情緒不安定になることをさす。
そういえば、思い当たることがあった。
悲しい出来事の引き金は、いつも自分で引いていたのだ。
そしてその時の私は、いつもの私ではない。
どうしようもなく、心が、乱れていたのだ。
 
このことを知ってから、不吉だと思い込んでいたあの日から、解放された。PMSの正しいケアをすることで、いつもと同じように過ごすことができるようになったのだ。もう恐れることはない。もっと早く知っておけば、若い頃の失敗はなかったかもしれない。そして、し色んなことの遠回りをすることもなかったのかもしれない。あるいは、今とは違う人生を歩んでいた入りするかも。同じような思いをしている女の子がいたら、知らせてあげたい。それは女性ならではの体の不調なんだと。そしてそれは、正しい知識を持てば、防ぐことことができるのだ、と。

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2018-05-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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