メディアグランプリ

レンズの奥の彼と、レンズの前の私と


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:幸島佑実(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
もうあの事はすっかり忘れていたと思ったのに。
「女の恋は上書き保存」とよく言うが、どうやら例外で「別フォルダに保存」もあるようだ。
 
 
自分にそんな「別フォルダ」があった事に気がついた時、可笑しいような、寂しいような、なんとも言い表せない気持ちが込み上げてきた。
この別フォルダは、これ以上にインパクトのある出来事がない限り、ずっと残っているのかもしれない。
 
 
そんな別フォルダに気づいたきっかけは、天狼院のサービスのひとつである「秘めフォト」だった。
 
 
 
 
もともと「秘めフォト」に全く興味が無かった私だが、ひょんなことがきっかけで「秘めフォト」を撮らないかとカメラマン本人から誘われた。どんなものか過去の参加者の作品も見せてもらった。どれも大胆で驚いたけどとても綺麗だった。
でも写真を撮られるのは苦手だし、しかもこんなに大胆なのはもっと無理だし、最初は断ろうと思っていた。だがカメラマンの三浦さんはマーケターでもありプロライター。うまい誘いに乗せられてしまい、「秘めフォト」を撮ることになってしまった。
 
 
約束の当日、逃げる事なくスタジオへ向かっていた。でもあんな写真撮られたくないし、逃げちゃおうかなって内心思っていた。でも逃げたら今後のライティング・ゼミが受けづらくなってしまう。とっとと終わらせて早く帰りたい気持ちが頭の中を占めていた。
 
 
スタジオの扉を開けると真っ白な空間が広がっていた。太陽光が射す白い空間の中には、黒く厳つい撮影機材が目立っていた。
 
 
あー、きちゃったー。
 
 
部屋をぼんやり見ていると、カメラマンが迎えてくれた。
イメージとして改めて秘めフォト過去参加者の作品を見せてもらった。以前見せてもらったと言えど、被写体の大胆さには見る度に驚く。私もこれから同じことをやるらしい。
 
 
「無理無理無理無理!」
 
 
トラウマを目の前に押し付けられたような拒否反応をしてしまった。やっぱり撮られたくないという気持ちは内心だけでは収まらず声にだだ漏れ、しかも大声。表情もかなり引きつっていたと思う。
だが来てしまったからにはもう逃げられない。来たことを後悔した。めちゃくちゃ後悔した。
 
 
「じゃあ着替えてね〜」
 
 
部屋に一人残され、衣装を見つめる。
絶対こんなの自分じゃ着ないわ。てかまじすか。これからあれをやるのか。逆にウケるわ。
この経験も何かのネタにできたらいいやと開きなおってからは、羞恥とか後悔とかどうでもよくなってきた。
 
 
カメラの前に立ち、数枚撮られる。データを見せてもらった。撮る人の腕がいいとまるで別人だ。別人のようだけれど、そこに写っていたのは確かに自分だった。いつもの自分と違いすぎて、そのギャップに一人で大爆笑した。
カメラマンの話によると、別人のような自分の姿を見るとみんな「わぁ!」って反応するらしい。こんなに大爆笑する人は初めてだと言われた。
きっとみんなシンデレラが魔法にかけられた時のような反応をするのだろう。まるで別人な自分の姿にときめくのだろう。けれど私といったら自分のギャップが面白すぎて、数分は一人で大爆笑していた。そんな私にカメラマンも引いていたかもしれない。
 
 
さらに撮られ続ける。たまに爆笑してしまうが、レンズを向けられることにも少しづつ慣れ、だんだんと表情も溶けて柔らかくなっていた。レンズを見ていると、シャッターを押すと同時に絞りが瞬きをするように動いている。そんなレンズの瞬きに吸い込まれるようにこちらもレンズを見つめていた。
 
 
その時ふっと、「もしレンズの奥にいるのが三浦さんじゃなくて彼だったら」って思った。
その彼とは、付き合った人でもなく、初めて好きになった人でもなく、好きだったけど付き合うまでには至らなかった彼だった。彼への気持ちはもうとっくに風化したと思っていたのに。ていうか何で彼なんだろう。
 
 
数年前、まだ彼に好意があった頃。関東と四国とお互い住む場所が遠かったため、普段会うことはなかなかできなかった。けれど頻繁にメッセージをやりとりをしたり、こちらに来る際は会おうといつも声をかけてくれた。普段はスマホを使ってやりとりをしていたが、たまに手書きの手紙を送ってくるずるい人だった。
そんなずるい彼に心をすっかり奪われていた。そんな彼に想いを打ち明けた。
「お互いが近くに住んでたら、ゆみと付き合ってたと思う。けど遠距離は難しいかも……」
最後の最後まで彼はずるかった。生殺しのように振られた。
その後はしばらく落ち込んだが、想いを打ち明けることができたおかげか、不思議と気分はスッキリしていて前向きだった。だから彼への想いはもうすっかり忘れていたと思っていたのに。何で今更、しかもこのタイミングで思い出したんだろう。
 
 
 
 
「どうやったらそんな表情できるの」
 
 
カメラマンにそんなことを言われたけど、はぐらかしてしまった。
 
 
そんな表情とはどんな表情なのか、データを見せてもらった。
つい数時間前まで逃げたい気持ちで暗い顔をしていたのに。撮られる直前は拒否で引きつった顔をしていたのに。
一枚目のデータを見て大爆笑していたのに。このデータはしっかり女の顔をしていた。
その顔を見てまた少し笑ってしまった。
 
 
 
 
もし仮に彼とまたチャンスがあったとしても、恋人になることは絶対にない。もし仮に彼から何か言われても、「今更遅い!」って笑いながら断るだろう。彼に恋人ができても彼の幸せを願えるくらいに想いは昇華していて、ちゃんと過去の思い出として綺麗にまとまっている。ちゃんと前へ進んでいる。
 
 
それでもあの時なぜ彼のことを思い出してしまったのか自分でもよくわからない。
でも言えることは、当時本当に彼のことが好きだったのだと思う。自分にも真直ぐだったのだと思う。
恋愛経験は多くはないが、彼との出来事がいちばん尊い恋愛経験だったのだと思う。
既存の恋愛フォルダに収めるには勿体無い出来事だったから、気づかぬうちに別フォルダに保存していたのだろう。
 
 
秘めフォトの帰り道、今更数年前のことなんか思い出して可笑しいなぁと思ったが、少し寂しい気持ちにもなった。
今の私はあの時のように誰かに真直ぐな熱量を向けることはできるかな。多分できないな。でももしかしたら、数年後とかにできる時が来るかな。
 
 
それまでは、このフォルダをまた心の底で秘めていよう。秘めフォトの出来事も追加して。
 
 

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2018-05-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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