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「いい国作ろう鎌倉幕府」に見る「子育て論」との付き合い方


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記事:チミモン(ライティング・ゼミ朝コース)

 
 
私が学生の頃、鎌倉幕府の成立は1192年だった。
「いい国つくろう鎌倉幕府」という素晴らしい語呂合わせとともに、日本史上で最も有名とも言える年号だったと思う。
 
ところが、今。
 
鎌倉幕府の成立は1185年だという。
「いい箱作ろう鎌倉幕府」。
お世辞にも語呂にがよいとは言えない。
 
そして、私は思った。「子育てと一緒だな」と。
 
私の子育て歴は、もうすぐ10年になろうとしている。
2人の子どもを育てているが、例に漏れず反省と葛藤の毎日を過ごしている。
 
子どもが育つにつれ、新しい問題・課題が尽きることなく生まれる。
年齢が同じでも子どもが違えば反応も対応も異なる。
色々試行錯誤しているうちに子どもが成長していき、答えが出ないままに次の課題がやってくる。
語弊を恐れずに言うなら、PDCAが極めて回しにくいのである。
 
自分ひとりでは対処が難しいとなると、育児書や教育番組、人によっては親に助言を求めることもあるだろう。
 
しかし、これこそが「鎌倉幕府」なのである。
 
私が子育てを初めた時、病院にはこう言われた。育児書にもこう書いてあった。
 
・おむつは紙おむつでOK。布おむつに劣っているわけではない
・お風呂上がりも母乳を与えればOK。果汁は与えない方がよい
・子どもが抱っこを望んでいるならどれだけ抱っこしてもOK
 
初めてのことなので私は素直に従った。すると母は「ずいぶん変わったんだね」と呟いた。
母の頃は、
 
・紙おむつを使うとおむつがなかなか外れない
・母乳では栄養が足りない。ミルクの方がよい。お風呂上がりには湯冷ましと果汁を与える
・泣いたからといってすぐ抱っこすると抱き癖がついて治らない
 
と言われ、当然母はそれに従っていたそうだ。
 
おむつや母乳については、技術の向上や栄養状態の改善などバックグラウンドが違うとしてまぁ納得できる。
しかし「抱き癖」については完全に考え方次第じゃないかと思ってしまう。
 
今まで「正しい」とされていたことが「それ間違っていました。今はこっちが正しいのです」と言われて戸惑わない訳がない。
 
年号は覚え直せばいい。でも子育てはやり直せないのだ。
だからこそ、「正しい」方法を親は必死で求めているのだ。
 
「〜するとよくない」「〜するとよい」という説を主張するなら、検証結果を出せ! と言いたくなる。
 
紙おむつ・布おむつを使って育てた子では、統計的におむつ離れの時期に有意差がある、というデータが存在するのだろうか(ざっと検索してみたがそういうデータは見つけられなかった)。
 
すぐ抱っこした・なるべく抱っこしなかった子で抱き癖に有意差はあるのだろうか。そもそも「抱き癖」とやらを数値化できるのだろうか。
 
そのくらいの確実性をもって「説」としてほしいものだ。誰かの経験値や感覚値がいつの間にか「説」になったなんてことがあっては堪ったものではない。(もちろん悪気があってそういう「説」が生まれたのだとは思わないが)
 
ひとしきり親として憤慨したところで、自分について振り返ってみた。
私は昔の育児方法に従って育てられたわけである。
 
母乳はほとんど飲まずに、ミルク・果汁を飲んで育った。
布おむつだからといって特段早くおむつが外れたわけでもないが、子供の頃から排泄に困ったことはない。
たぶん泣いても「抱っこしない!」と言われたのだろうが、母親のことは大好きだし関係も良好だ。
 
あれ?
間違った方法だったのかもしれないけれど、今の私、全然問題ないな……。
 
さらに言えば、私は子ども時代に問答無用でガンガン怒られたし、思いっきり叩かれたこともある。
今の子育ての風潮は、子どもの言い分をちゃんと聞いてそれを否定せず、叩くのはNG。
 
あれ?
だけどそれなりに分別のある大人になれたと思うな……。
 
ということは、である。
 
もしかすると、子育て方法って、その子の人生が決まってしまうほど影響しないのでは?
改めて考えてみれば当然のことだが、「こうすればこうなる」というほど子育ては単純ではないはずだ。
 
怒りまくってよい、叩いてもよい、とは決して思わない。
だが、怒ることも、場合によっては思わず手が出そうになることだってあるだろう。いくら気をつけていても冷静さを失うことはある。そのくらい子育てにおける親子の人間関係は深くて濃いのだ。
 
最近、私はこう思うことにしている。
 
子育ては長い。
結果が何時出るのかわからない。 結果なんて出ないのかもしれない。
そして、何より関与する因子が多い。
そう、その子の人生に関わる因子は、数え切れないくらいあるのだ。
 
もっと視野を広く持とう。
今現在も、国はおろか地域によっても子育て方法は千差万別。
 
もっと自分を許そう。
子どもの癇癪をおさめられなかったからって反省しなくていい。
大人だって虫の居所が悪くて感情をコントロールできない時があるじゃないか。
 
もっと子どもを信じよう。
子どもにとっての世界は親だけじゃない。日々世界を広げてたくさんのことを吸収している。
 
子どもにとって親が最大級に影響が大きい因子であることは間違いないが、「今こうすべき」という説にがんじがらめになることはない。
 
だって一世代年後には 「それは間違っていました」ということだって充分ありえるのだから。
そう、鎌倉幕府成立の年号ように。
 
 
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2018-05-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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