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メディアグランプリ

子どもの「可能性」はパチンコ店の4階で開花した


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:ももの(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「私は、なんにもできない」
8歳の娘が言い放った一言が、私の胸を鋭く刺した。
娘が通っている小学校は、毎年5月が運動会だ。
毎年ダンスを行うのだが、今年は、なんと側転をするらしい。
 
私も、夫も、体育が「2」の成績で生きてきた人間である。
側転を教えたくても、自分ができないから、教えられない。
Youtubeで「側転 かんたん」と検索し、娘に見せる。
動画の中の体操の先生は、とっても簡単に側転を行っていた。しかし、娘がいざまねしてやってみると、まぁこれが難しい。
体育「2」の私もやってみるが、まずできなかった。
娘の学年では、新体操やら、バレエスクールやら、お稽古に通っているお友達は、上手に側転ができるそうだ。
そりゃそうだ。体の使い方を徹底的に行っているお友達に勝てる訳がない。
 
そして、今回は、彼女は自分から、言い出したのだ。
「私、なんにもできない、できないけど…… 今回は私、どうしても、
できるようになりたい。できるようになるための先生を見つけてほしい」
 
娘が自分から何かを行いたいと言ったのは、これが初めてだった。
私も夫も驚いた。
体育が「2」の私たちは、インターネット上で「体育の家庭教師」をしてくれる先生を探し出した。1時間6000円。正直結構いい値段ではあったが、
娘が自発的にやりたいと言い出した気持ちを応援してあげたいと思い、申し込みをした。
 
指導当日、指定された場所に行くと、パチンコ店の4階に事務所があった。
4階はパチンコ店の事務所と、この体育の家庭教師事務所の共同のスペースとなっていた。
ここ、大丈夫だろうか……、一瞬ひるんだが、もうお金は振り込み済みだ。
「すみません、予約したものですが……」
おそるおそる、声をかけた。
 
中から現れたのは、体育の先生風の男性だった。30代後半~40代ぐらいだろうか?ジャージ姿で現れた。
「はい、今ここ片付けて、マット敷きますからね」
中からは、休日の午後のラジオ番組が大音量で聞こえてくる。
体育の家庭教師の先生が、パチンコ店と共同でつかっている、大きな机を片付け、体育館で使うようなマットを2枚敷いてくれた。
 
娘はパチンコ店の事務所も、家庭教師の先生の風貌も気にせず、やる気満々だった。
「絶対、私今日側転できるようになりたい!」と鼻息荒めに先生に自己紹介していた。
指導が始まった。準備体操をして、逆立ちができるか、側転のポイントなどを細かく教えてもらい、ひたすら取り組む。
 
何をやっても、いつも中途半端にやめてしまう娘だったが、この日は違った。
何度も、何度も、側転を自分から練習していた。
私と夫は初めて、娘の自発的な「意欲」を初めて目の当たりにして、ただただ驚いた。
こんなやる気が彼女の中にも、あったのだ。それは、今まで見たことがない
娘の姿だった。
 
私たちに差し出されたスリッパには、穴があいていた。
娘が真剣に側転をする傍らを、ミニスカートの制服を着たパチンコ店のスタッフが通り過ぎていく。
 
側転練習とパチンコ店スタッフという、なんとも言い難い雰囲気の中、娘はひたすら練習を繰り返していた。
娘は、手が疲れてきても、足が疲れても、側転をやめないで練習した。
時折時計をみては、後何分練習できるよね。とつぶやき、もくもくと練習を続けた。
私たちはそれをただただ、穴の開いたスリッパを履きながら見つめていた。
約束の60分が終わり、レッスンが終了した。
娘はもう一度、ポイントを復習していた。
足を曲げないように、まっすぐ下ろすのがポイントなのだが、何回やっても、
最後に後ろ足が曲がってしまっていた。
 
それをみて、つい私たちは「足をまっすぐ!」と言ってしまう場面があった。
それに対して娘は「だったら、やってみて!」と返してくる。
そう、「足をまっすぐ!」なんて、エラそうなこといいながら、私も夫も側転ができないのだ。
できない二人が、やってみろ!といっていることに、大きな矛盾も感じたが、
私たち親としてもどうしても成功させてあげたかった。
 
そして運動会当日、緊張した面持ちで競技に向かった娘は、それはすばらしい側転を披露してくれた。
 
そのときの娘の誇らしそうな横顔を私は一生忘れないだろう。
自分からやりたいといって、それが出来た体験。
生涯で、あと何回、そんな体験をできるだろう。
自分には出来ると信じ、向き合い、乗り越えること。
その一連の大切な過程を、娘は自分で選択し、行動した。
 
私たち親ときたら、できないことを娘にやれ! と言っている時点でもう、
説得力はゼロだ。
 
親としてできることは、娘がやりたいといった言葉を信じ、応援し、その過程に、馬鹿みたいに寄り添い、一緒に感じることだけなのかもしれない。
 
今度は、娘は少女マンガの書き方を習ってみたいと言っている。
この分野についても、私も夫も美術が「2」だった側の人間だ。
今回指導してもらう場所を調べると、マンションの一室だった。
大丈夫、概観で物事を判断しない術は、もう身に付けた。
 
きっと、今度もまた、娘は自分の可能性を自分のやり方、タイミングで開花させていくのだろう。それを信じ、見守って行きたい。

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2018-05-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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