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メディアグランプリ

米どころのワイナリーで僕が感じた大切なこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:大久保忠尚(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
赤・白・ロゼ。
あなたはどれがお好みだろうか。
ワインの話である。
 
 
先日知人に連れられてワイナリーへ行くことになった。
場所は新潟。
新潟といえば、日本有数の米所。ワインよりもむしろ日本酒の方がイメージが強い。
実際、ワイナリーを訪れた日は日本酒をたらふく飲んだ次の日のことだった。
 
新潟駅から直行バスで揺られること約1時間。到着した場所はすぐ近くに山が見え、たくさんのぶどう畑に囲まれる中、いくつかのワイナリーやレストランなどのお店が集まっていた。
山の中のぶどう畑、と思っていたが地図を見るとすぐそばには日本海があるらしかった。
 
5月中旬の新潟は、東京に比べると涼しく、長袖1枚では肌寒いくらいの気温だった。ワイナリーの周りには白やブルーの落ち着いた色の花々が植えられ、すでに東京では咲き終わったものがようやく咲き始めていた。空気が綺麗なこともあるのかもしれない、東京で見る同じ花よりもどこか澄んだ色味を帯びているように感じた。
 
適当に周辺を散策した後、僕達は小さなワイナリー併設のお店へ入った。
お店の中は照明に加え、壁が一面ガラスになっていたため、優しい明るさが漂っていた。カウンターとハイチェアが数脚用意され、ワインの販売だけでなく飲みながら休憩もできるようなつくりだった。
 
一通り棚を見ていると、店員の女性が僕達に声をかける。
「試飲も出来るのでよければどうですか?見ているだけでは分からないでしょうし」
飲んでも分からないかもしれない、と思いつつお言葉に甘えて試飲させてもらうことにした。
 
女性はまず赤ワインを2種類グラスに注いだ。
一つはイメージ通りの赤ワインらしい色の濃いもの。もう一つはそれよりも少しピンクがかったどちらかというとロゼのような色合いだった。
作法は知らないもののそれらしく香りを嗅いでみる。濃いものは甘く、ピンクのものはあまり香りがしなかった。それぞれを少し口に含むと、片方は渋みがあり、もう片方は渋さが少なく軽い口当たりを感じた。
ぶどうが違うと見た目から香り、味まで違うらしい。なるほど。そういう違いの分かる男がきっとモテるんだろうな。
そう思っていたところで彼女は言った。
 
「この二つは同じ木から作っているんです。一つは去年作ったもの。もう一つは今年作ったものです」
 
僕は全く違いの分からない男だったようだ。
違いの分からない男は思わず聞いてしまう。
 
「なんでこんなに違うんですか?育った木は同じなんですよね?摘んでからの行程ですか?」
矢継ぎ早に質問するあたり、モテない感じが出てしまっていたが、彼女は質問された事が嬉しかったのか優しく微笑みながら教えてくれた。
 
「行程はほとんど変わりませんよ。一番はその年の気候の違いでしょうか。今年は木の病気もあってあまり収穫できませんでした」
 
病気になった木のことを話す彼女は少し悲しげな目をしたが、もっと自分たちのワインの話を聞いて欲しいのだろう。そのワインについて色々と話してくれた。
 
毎年、そのワインに使うぶどうの収穫はすぐ近くの小学校の生徒と一緒に行うこと。
今年は木の病気もあり、子供達も少し収穫が少なくてちょっと申し訳なかったこと。
ワインのボトルには、その年に卒業する生徒数のハートがデザインされていること、など。
 
実際、昨年のボトルにはハートが13個。今年のものには8個デザインされていた。
 
「卒業した年に自分たちで作ったワインを、卒業したときにプレゼントしてるんです」
タイムカプセルみたいなものですね。すぐ飲めなくて可哀想だけど。
そう話しながら笑う彼女は、とても綺麗だった。
 
まるでワインを飲み物ではなく、自分の子供について話しているような雰囲気を感じた。
 
 
その後も僕達は、いくつかのワイナリーやお店を見学した。
それぞれで試飲をしたが、全てこの山で採れたぶどうを使っていたというのに、味が全て異なっていた。
そして、全てのワインについて教えてもらったが、そこには一つ一つのストーリーがあった。
 
「より多くの人にこのワインを知って欲しい」
「たくさんの量は作れないが、これを好きだと言ってくれる人と出会えるようにしたい」
「ワインが苦手な人でも、これだったら飲んでもらえると思って作ってみた」
「子どもが描いた絵をラベルにしている。この子の成長と一緒にワイナリーも育って欲しい」
 
 
今まで、ワインについて何も知らず、たくさんのボトルが並んでいても安さだけで選んでいた僕であった。しかし、なぜこんなにもたくさんの種類があるかがようやく分かった気がする。
 
それぞれのワインには、作り手の想いが込められている。そして環境や手法のちょっとした違いでその味は変わり、二度と同じものに会えないことだってあるのかもしれない。
 
ワイン1本は誰かの人生の物語そのものなのだ。
そして、その1本のワインとの出会いは一期一会のように、あなたにとっても人生における大切な瞬間なのかもしれない。
 
すなわち、ワインとは誰かと人生を語らう時に味わうものなのだろう。
 
 
ワイナリーで話した人達は皆、そこに咲いていた花々のように、とても澄んでいて素敵な表情をしていた。
 
そんな人達が作ったワインをあなたは誰と一緒に味わいたいと思うだろうか。
それはきっとこれからの素敵な人生について話をしたい相手なのだと思う。

***

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2018-05-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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