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私だったら、鹿児島で旅行したくない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:コバヤシミズキ(チーム天狼院)
 
 
随分、旅行者が増えたな、と。
自転車で人の群れをフラフラよけながら、そう思った。
去年までは、そんなにこの通りも人が居なかったのだ。
だから、全力でペダルを踏んでも何ら問題なかった。
でも、最近は睡蓮の群れをチラッと見て、美術館の前も通り過ぎたころでスピードを落とす。
「さすがに、ベル鳴らすのは印象悪いかしら」
そびえ立つ西郷隆盛の像の下、写真を撮る旅行者を見つめながら自転車を降りる。
『西郷どん』の影響もあってか、この大きな像の下で写真を撮る人が増えたのだ。
……その人たちの邪魔をしないように、ひっそりと自転車を降りることにも慣れてしまった。
「まあ、別にいいんだけど」
鹿児島に来てくれてあいがとさげもす! って。そんな感じ。
しかし、何も思わないわけでもない。
「この人たち、この後どこ行くのけ」
……正直、何も思いつかない。
鹿児島で生まれ育って19年。
私だったら、鹿児島で旅行したくない。
 
旅行するにあたって、鹿児島は悪く無いと思う。
悪くないどころか、なんだったら観光資源は結構豊富である。
桜島にはフェリーで160円で行けるし、歴史的遺産もそのへんにたくさんある。
ご飯もおいしいし、人も優しい。
「鹿児島? めっちゃ住みやすいよ」
降灰がちょっと、玉に瑕だけど。
鹿児島、よかとこ、おじゃったもんせ!
「でも、それだけ」
悪いところじゃないのだ。……ただ、それだけなだけで。
率直に言って、どことも変わらない普通の観光地である。
“自然が豊富で、歴史の残り香がする街並み”の鹿児島。
悪くはない、悪くはないのだ。
「それって、どこにでも言えるよね?」
県外企業の面接で鹿児島のことを答えたとき、そう言われた。
……正直、耳が痛かった。図星である。
特徴はあるのに、特徴が無い。
私が19年で気づいたのは、『鹿児島は特別ではない』という嫌な事実だった。
 
“旅行客に優しくない観光地”、これが私の鹿児島への評価だ。
たかが19年鹿児島で暮らしただけの小娘が、こんなことを言うなと思われるかもしれない。
でも、19年目にして起きているイレギュラーがあるからこそ、この評価があるのだ。
そのイレギュラーとは、もちろん『西郷どん』である。
どんなに“優しくない観光地”でも、話題があれば人が来る。
特に、大河ドラマとあれば影響力の大きさは計り知れない。
それくらい、目に見えて旅行客が増えたのだ。
「先週の西郷どん見た?」
そんな会話をちょくちょく耳にするくらい、今鹿児島は『西郷どん』フィーバーの真っ只中。
だから、それに乗っかって西郷隆盛グッズを増やす気持ちも分かる。大いに分かる。
「でも、そうじゃない」
今、増やすべきは西郷隆盛グッズじゃ無い。
このままじゃ“旅行客に優しくない観光地”のままである。
じゃあ、何を増やすか。
このある意味危機的状況を、どうやって脱するか。
 
このままでは、鹿児島は旅行客のニーズに応えられない。
これは、私の中で確定事項だ。
なぜなら、これから増える旅行客はただの旅行客じゃない。
“文明開化の音を聞きに来る”旅行客が増えるのだ。
「西郷隆盛と言えば明治維新!」
そのイメージにわくわくしながら鹿児島に来るはずなのだ。
確かに、西郷隆盛言えば明治維新。
きっと思い描くのは、明治時代のノスタルジックな街並み。
優しい風合いの街灯が人びとを照らす、そんな街だろう。
そんなもん私だって住んでみたい。すごい素敵じゃないか。
「だけど、現実はそう甘くない」
鹿児島は平均化してしまった。
見渡す限りグレーの街並みが広がっているのだ。
理想郷はここにはない。
「つまり、薩摩だ。みんな薩摩の空気を求めてるんだ」
“散切り頭を叩けば、文明開化の音がする”
旅行客は、これを求めているはずなのだ。
「でも、今から街並みを建て替えるんじゃ遅すぎる」
今、鹿児島県民にできること。
たかが19歳の小娘にできること。
「今こそ、サツマニアンが立ち上がるとき!」
最終兵器サツマニアンを出すときが来たのである。
 
旅行するにあたって、雰囲気って結構重要だと思う。
京都もしかり、大阪もしかり。
ちょっと前、大阪を訪れたとき、そう感じたのだ。
「やっぱりさ、大阪って独特だよね」
ド派手な看板文化も、粉物文化も、大阪が積み上げてきた“特別”だ。
でも、その裏で暮らす人びとがいる。
そりゃ原住民族がいるのは当たり前だ。
だけど、そうだと分かっていてもやっぱりテンションが上がるのだ。
「見て! 大阪のおばちゃんがいる!」
ヒョウ柄のTシャツを着こなしたおばちゃんを見たとき、ここは大阪だと改めて感じることが出来た。
原住民族の力、偉大である。
「……待てよ? これなら、鹿児島でも出来るんじゃないか?」
鹿児島の原住民族、薩摩の空気を作り出す人びと。
これからはきっと、『サツマニアン』の力が必要だ。
 
『サツマニアン』なんていない。
私の想像上の生き物でしか無い。
だって、私はたかが19年しか鹿児島で生きていないのだ。
……だから、薩摩だった頃の鹿児島の原住民族を知らない。
「でも、作ることはできる」
もしかしたら、建物を作るより難しいかもしれない。
それでも、私に宿るちっぽけなサツマニアン魂がやる気を出し始めたのだ。
「文明開化の音、鳴らしてやろうじゃないの!」
そうと決まれば話は早い。
原住民族にはなれなくても、観光部族くらいにはなってやろう。
まず、手始めに鹿児島弁の習得から始めようか。
「かごんまへおじゃったもんせ!(鹿児島へいらっしゃい!)」
“文明開化の音がする街、鹿児島”
私だったら、そんな鹿児島で旅行したい!

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2018-05-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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