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メディアグランプリ

理不尽な経験から気づいた、人を大切にすることは意外と簡単


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:井上文江(ライティング・ゼミ朝コース)
 
 
目の前で私のノートパソコンが壊されていく。
会社の会議室のテーブルの上。本体から外されたハードディスクは、金づちで叩かれつぶされ、更にナイフで傷つけられていく。
 
世の中理不尽なことはたくさんある。でも、この件はとても精神的にこたえた。
私の大切なパソコン、愛着のあるパソコンを会社に奪われ目の前で壊されたのだから。
 
 
私は上司からのハラスメントを受けていた。6年以上ハラスメントは続き心身共に疲弊していた。なんとかハラスメント上司から脱出しようと決意したら、更にいじめが加速した。
退職願いは出していなかったけれども、ゆくゆくは辞めることを上司は予測していただろう。
だから、私が自宅で仕事をするのに個人のパソコンを使っていることを知っていた上司は、
「情報漏洩を防ぐためにパソコンを会社に提出するべきだ」
と言い出し、結局、パソコンの中の情報を消去するだけでは信用できないから、会社でパソコンを預かりたいという話になっていった。
 
なぜ個人のパソコンで仕事をしていたのか? 原因はその上司にあった。夜遅くメールで届く指示、それへの対応を翌朝までにしなくてはならないから眠い目をこすりながら自宅で夜な夜な仕事をすることになった。会社から与えられていたパソコンは持ち運ぶには重かったので自分のパソコンを使った。上司はそれを知りつつ何も言わなかった。
 
パソコンを出せなんてむちゃくちゃな話だと思ったけれど、ここで従わないとさらに言いがかりや濡れ衣を着せられて解雇処分にでもされたら大変だと恐れた。というのは、この上司は今まで、派遣切りや内定取り消しなど数々の理不尽なことをやってのけてきた人だからだ。
 
私は恐れに負けて私のパソコンを提出してしまった。
 
壊されていくパソコンを見ながら思い出していた。
このパソコンでワードやエクセルやパワーポイントの勉強をしたこと。ブログを始めるのに使ったのもこのパソコンだ。考えごとをまとめる道具となった。大好きな音楽も4000曲ぐらいコレクションしていた。私の日常をともにしてくれてきた相棒だった。会社の仕事の情報なんてわずかで、私の個人情報のほうが沢山はいっている。なのになぜ壊されなくちゃいけないんだ!
 
壊されていくパソコンを見ていて自分の身体を傷つけられているような気持ちになった。
私の一部分を奪われ壊されていくような痛みを感じた。
 
それから時が経った。
 
私は会社を辞めて穏やかな生活を取り戻した。
けれども、なじみのパソコンがなくなってしまったことが実際に不便だったし精神的にもこたえていた。
会社から代替品をもらったけれども、スペックが低く、マイクロソフトのオフィスも入っていなかった。気にいるような代物ではなかった。
それにその代替品のパソコンを見るたびにあの日のことを思い出す。とても使う気になれなかったので、知り合いにあげてしまった。
 
 
 
人を傷つけることは簡単だ。
その人が大切にしている物やことがらを否定したり批判したりすればいいからだ。
 
私は上司から自分の服装や持ち物や家族までも否定され続けてきた。その決定打がパソコンを目の前で壊されたことだった。
その人の大切なものを壊す、奪う、それがどれだけダメージを与えるのかを体験した。
つらかったけれども、そのおかげでわかった。
 
人を大切にするにはどうしたらいいか?
 
それは、上司にされたことと逆のことをすればいい。
つまりそれは、
その人が大切にしている物を大切にすること。
 
優しい言葉をかけたり、困っているところを助けたり、
相手の話をきちんと聞いたり……いろいろできることはあるけれども、
一番簡単な方法は、
その人が大切にしている物を大切に扱ってあげることだと思う。
 
そのことに気づいてから夫と、
「お互いに相手が大切にしている物を邪魔だと言わないようにしよう」
と話をした。
私がハラスメント上司のもとで働いていたころは、夫とゆっくり話をする余裕もなかった。
 
そんな状況の中で夫は、私の電子ピアノを邪魔だとよく言っていた。
「全然弾かないんだったら捨てちゃえよ」
「今、仕事が忙しくて弾けないけど、いつか弾きたいと思ってるの!
それより、あなたのDVDのコレクション、そんなにとっておいても観る暇なんかないじゃない。そっちこそ処分しちゃえば!」
お互いに相手が大事だと思うものをけなして不要だと言い合った。
このような会話をするたびに信頼関係を傷つけお互いを消耗させていた。
 
当時を振り返ったとき夫が
「ごめんね。わかってあげられなくて」
と言ってくれた。
「私こそ、いつもイライラしていてごめん」
上司の論理に飲み込まれて夫の気持ちを置き去りにしてしまっていたことを反省した。
そんな私を嫌いにならずに見守ってくれていた夫に今は感謝している。
 
それ以来私達夫婦は、お互いが大切にしているものを大切に扱うように心がけている。
 
ときには
「これのどこが大事なのかな?」とか
「こんなにボロボロになっても捨てないんだなあ」
と思うこともあるけど、理解できなくても大事に扱うことに意味がある。
 
なぜならば、
その人が大切にしている物を大切にすることが、
その人自身を尊重して大切にすることにつながるから。
 
シンプルで簡単なことだけど、とても大事なことだとしみじみ思う。
 
 
 
***

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2018-05-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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