メディアグランプリ

横断歩道を渡るネコ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:岩本 敏昌(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「ピッ ピッ ピッ ピッ ピピピピピピ」
 
5月のとある火曜日の朝だ。
時刻は6時10分。
 
今日もスマートフォンの目覚ましアプリの音量が段々とベッドの脇で大きくなっていく。だがこの音で私が起きることはない。
 
いつからだろう?
1回で起きることは無くなり、10分起きのスヌーズ機能で6時30分に起きるようになった。昔みたいな若さに頼った元気は感じなくなった。
 
窓から差し込む朝日の気持ち良さを感じながら起きると、中学3年生からの日課であるシャワーを浴びて、身支度をしたら7時には家の玄関を出る。
 
そして、駐車場に停めている車に乗り込み、20㎞ほど離れた近くの駅まで車を毎朝走らせる。20㎞といっても田舎の信号が無い道だから30分ほどだ。
 
車の中で好きな音楽を聴きながら、または英語のリスニングなど、一日のうちで割と自由になる楽しい時間だ。
 
通学で歩いている小学生や中学生、高校生をみかけるとなんだか温かい気持ちになってくる。
 
だが、その日は、いや最近はという方が正しいかもしれない。
仕事が忙しく気持ち的に参っていた。正確には疲れが抜けないそんな感じだ。
 
車を運転しながら、身体がだるいなぁー、仕事のボリュームおかしいよなー、と1人で文句を言っていた。某有名な映画に耐えると、ダークサイドに落ちてしまっている感覚だ。
 
この状況、前向きに捉えることが難しくなっている状況から早く抜けだそうとすると、どんどん砂丘に飲み込まれて這い上がれなくなっていく、そんな思い感覚を持っていた。
 
私が毎日使う駅は海の近くにあり、とても気持ちがいい場所だ。
その駅の近くの交差点で信号待ちをしていると、私は驚いた。
 
なんと、横断歩道をネコがテクテクと渡ったのだ。しかも青信号で。毎日、車で通勤しているが初めての光景だ。
 
「あ、このネコ賢い!」
 
しかも、それなりに交通量もある交差点だ。
 
走って渡るのではない、テクテクと。
そう、テクテクと。
 
もしかして信号の意味が分かるのかなー、これまでの経験から今渡れば安全って学んだのかなー、親猫から教えてもらったのかなー、自分で学習したのかなー、先祖代々信号を渡るネコなのかなー、と信号待ちをしながら妄想が尽きなかった。
 
信号が変わるまでの間、そのネコを目で追っていたが、優雅にテクテクと歩いていき、近くの公園に消えていった。
 
信号が変わり、車で走りだしたが、そのネコのことが忘れられなかった。
 
「あのネコと会ったのはどんな意味があるのだろう?」
 
何気なく、私が私自身に向かって問いかけていた。
 
車を運転しながら、そのことばかりを考えていた。考えるというよりも勝手に何か考えが浮かびあがってくるのを待っている感じだ。
 
そうテクテクと。テクテク…… テクテク……
 
考えるにつれて、「テクテク」のリズム感が脳裏に焼きついていく。
 
気付けば考えがテクテクとやってきた。
「あ! 分かった!」
 
私は理解した。
「これは身体を動かせとのメッセージだ!」
 
そういえば最近あまり身体を動かしていなかった。身体が硬くなったなーと感じていた。身体がだるいなー、元気がないなー、そう感じるのは身体のエネルギーが十分ではないと思っていた。
 
でも、実は身体のエネルギーの循環が上手くいっていないのではないか、ヨガは余り詳しくないのだが、なんとなくそんな発想に辿り着いた。
 
テクテクと横断歩道を渡るネコと、身体を動かすことの繋がりをロジカルに説明しなさい、と言われると正直出来ない。でも私自信はしっくりきている。だから良いのだ。
 
するとどうだ。
その日は、会社でしっかりとストレッチをしたり、休み時間に呼吸を整えていたりすると、不思議なことに昨日まで疲れが溜まっていた身体がウソのように動く。
うん、面白い。
 
そして、身体の調整が良いと、今度はメンタルも元気になってくる。ダークサイド側に寄りかけていた気持ちが前向きになっていく。
前向きな発言が増えてきた。
 
この調子でこの仕事の山を越えると少し自分自身の成長に繋がるかもしれない。
 
私が必要なタイミングでおこった物語。
そう、嘘みたいな本当な話。
 
横断歩道を渡るネコ。
ただ渡るのではない、そうテクテクと。
 
そのネコとの1回きりの出会いによって私は元気を取り戻すことが出来た。
 
もしも横断歩道を渡るネコに出会ったら、あなたにとって特別な意味があるかもしれない。

 
 
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2018-06-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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