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私をラスボスまで連れてって


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:おしごと社長(ライディング・ゼミ日曜コース)

 
 
「すいません、ご提案いただいた企画はお断りすることになりました」
電話をかけてきた男性が申し訳なさそうな声で話をしている。
 
「えっ!? 田中さん(仮称)は企画書をご覧になったとき、大変面白いとおっしゃっていたではありませんか」
なるべく感情を表に出さないように努めていたが、田中さんには私が責めているように伝わったかもしれない。
 
私はとある企業に自社商品を活用した企画を提案していた。インターネットでこの会社のホームページを見つけて電話をかけたとき、「では、一度お会いしましょう」と答えてくれたのが田中さんであった。
 
当時の私は法人向けの営業を開始したばかりで、アポイントを取るところからなかなか苦戦していた。そのような中、アポイントが取れた数少ない会社のひとつだった。
 
会社を訪問し、田中さんに自社商品を説明しながら、企画を提案してみた。すると、田中さんからは「とても面白い企画ですね! 是非ともやりたいです!」という反応が返ってきた。
 
私はアポイントがようやく取れたばかりか、商談もうまく進んだことに、太鼓判を2つも3つも押してもらったような気分であった。
 
そして、正式な返事は1週間後という約束をもらって、私は訪問先の会社を後にした。
 
「社長にはいい報告ができるな」と浮かれ気分で1週間を過ごした後、田中さんから「すいません」と電話がかかってきたのである。
 
田中さんは電話の向こう側から、企画が通らなかった理由を説明してくれた。
「私はこの企画を実現したいと思っています。ただ、社長の決裁が通らなかったのです……」
 
このときにはじめて、話を聞いてくれる人が必ずしも決定権を持っている人とは限らないことを知った。
 
私は話を聞いてくれる人が見つかって、実際にその人から「いいね!」ももらって喜んでいたが、それは甘かったのであった……。
 
契約目前まで迫っていた(と思っていた)商談は、ぬか喜びの結果に終わってしまった。
 
田中さんとの電話を終えて、受話器を置いたとき、私は『ドラクエ』というゲームで体験した少年時代の苦い記憶を思い出していた。
 
ドラクエでは、大勢のモンスターが出現して世界を混乱させており、そのモンスターを操る悪のボスキャラさえ倒せば、世界に平和が戻るというストーリーを採用している。
 
ドラクエで遊んでいた私は、いくつもの謎を解きながら、遂にボスキャラにたどり着き、全速力で倒しにいった。
 
悪戦苦闘の末、ボスキャラを倒すことができ、エンディングを迎えるかと思いきや、さらに強い本当のボスキャラが登場したのである。
 
不意を突かれてしまった私はあっけなくゲームオーバーとなり、再びやり直すことになってしまった……。
 
ドラクエでは、ゲームをクリアーしたければ、見かけ上のボスキャラではなく、ラストに登場する本当のボスキャラ(ラスボス)を倒さなければならない。
 
少年時代の記憶の中から現在に意識が戻った私は、法人営業でも同じことだと気がついた。
 
まずは最初に話を聞いてくれた田中さんから「いいね!」をもらわないことには、商談が成立することはない。
 
ただ、その田中さんから「いいね!」という返事をもらえたことは、ドラクエでいう見かけ上のボスキャラを倒したに過ぎない。
 
しかし、このときの私は、田中さんからいい返事をもらえたところで、すなわち、見かけ上のボスキャラを倒したところで、商談成立したものと思って、すっかり安心していた。
 
そのため、田中さんの上司であり、商談の決定権者でもある社長さんのことは眼中になかった。
 
社長さんとの商談を設定し、その商談に向けて資料も新しく作り直す必要があったのに、何も行動することなく、契約を落としてしまったのである。
 
ドラクエと今回での学びを経て、営業する際は必ずといっていいほど、商談のラスボスは誰なのかを確認している。
 
法人営業において、「誰と商談し、誰から決済をもらうのか」はとても重要な要素であり、その攻略の鍵はラスボス(通常は社長か役員)が握っている。
 
ただ、ゲームの場合、話を盛り上げるためにラスボスの存在そのものが最終局面まで秘匿されているが、営業においてラスボスを確認するのはそう難しいことではない。
 
なぜなら、今商談をしている人に「本件の決定権者はどなたですか?」と聞くだけだからである。
 
そして、このときに商談がまとまらなかった田中さんとは今でも一緒に仕事をしている。
 
実は営業したことがご縁となって、お付き合いは続き、田中さんは後日うちの会社に転職してきたからである。
 
営業はときにゲームよりも面白いものである。

 
 
***

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2018-06-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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