メディアグランプリ

バーで声をあげて泣いたことで開いた、親友への扉


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記事:ニシモトユキ(ライティング・ゼミ朝コース)
 
私は、人前で泣けない人間だった。
「大丈夫?」
と聞かれれば、反射的に
「大丈夫です」
と答えてしまう。
仕事が積んでいるときに、
「何か手伝おうか?」
と誰かが声をかけてくれても、
「自分でやれるから平気です、なんとかします」
と答える。
彼氏と別れて、どん底のような気持ちでいるときも。
仕事をうまくこなせるか不安で仕方ないときも。
それを隠して、平気な顔をするよう努めていた。
たぶん、人に弱いところを見せるのが苦手だったのだと思う。
うまく説明できないけれど、ちょっとでも弱いところを見せたら、もう二度と立ち上がれないくらい自分が崩れてしまうような、そんな怖さがあったのだ。
 
その夜は、出張先の大阪で、小学校時代の友達と飲んでいた。
彼女とは、ずっと連絡を取り合っていたわけではなく、大人になってからSNSで再会した。
一軒目は、彼女が選んでくれた和食のお店。
ふたりとも、割といける口なので、美味しい料理に、日本酒がすいすい進んでいった。
もうちょっと話したいね、ということになり、彼女の家の近所にあるワインバーへ。
店主がひとりで営む、カウンターだけの小さなお店だ。
先客はふたり。
女性のひとり客と、男性のひとり客。
カウンターの奥から、女性、男性、友達と私、と1席ずつ空いて並んでいた。
「最近、彼氏とどうなの?」
そんな友達の問いから始まった会話だった。
その頃、付き合っている彼氏と結婚しようかな、と考え始めていたところで、ただ、母が彼とのことにあまりいい顔をしていない、そんな状態だった。
友達にぐだぐだと、
「でも、お母さんが反対してるっていうか……」
なんて話していたそのとき。
鋭い声が飛んできた。
 
「あんたは、その彼氏と、母親と、どっちが大事なん?!」
 
カウンターの奥にいた女性客だ。
あっけにとられて、何も言えずにいると、追い討ちをかけるように、強い口調で次から次に。
そして、次の瞬間、もっと驚くことが起きた。
自分の目から、涙が出てきたのだ。
それだけではない。
嗚咽まで。
ひとりで泣くときだって、声をあげて泣くことなんてないのに……!
心底びっくりしながらも、もちろん、懸命に泣きやもうとした。
ここは初めてきたお店、せっかく友達が連れてきてくれたのに……。
けれど、その努力もむなしく、お酒が入っているせいなのか、どうにもこうにも止まらない。
まったくコントロールがきかず、声をあげて泣き続ける自分。
初めて来たお店で、店主にも、もうひとりのお客にも、友達にも、申し訳ないやら、恥ずかしいやら……。
その場がどうやって収束したのかは、あまり覚えていないけれど、店主が、
「これはサービスね」
と出してくれた最後の一杯を飲みながら、まだ、ひっくひっく言っていた覚えがある。
その日は、京都駅近くのホテルに泊まったのだけれど、向かう途中も、波が押し寄せてはひくように、ようやく泣きやめたかと思ったら、また涙が出てくる。
その繰り返し。
結局、ホテルに戻っても泣き続けて、翌朝には、これまで見たことがないくらい目がパンパンに腫れ上がっていた。
まさに、大惨事。
けれど、人前で泣くのは、予想に反して嫌な感じではなかった。
さらには、起きてみると、気持ちが驚くほど軽く、スッキリしていたのだ。
携帯を見てみると、バーの店主からは、こんなメッセージが届いていた。
 
「少し濃すぎたかもしれないけど、ただみんなユキちゃんに幸せになってほしいという想いの現れです。おせっかいかもしれませんが、大阪の片田舎ということでお許しください。チーム独身からのアドレス! 自分の幸せと少しの他人の幸せを求めましょう!」
 
そして、友達とは、それまで以上にいろんなことを話せる仲に。
あの出来事から4年が経つけれど、東京と大阪で離れていても、普段からメッセージのやりとりをして、年に数回は食事に行く。
仕事のことや、家族のこと、誰にでも言えないようなことも相談し合う。
期せずして、大号泣したことで、関係がぐっと深まったのだ。
それから、どこか肩の力が抜けたせいか、普段の生活も、少し楽に過ごせるようになった。
「人前で泣くなんて、みっともない」とずっと思ってきたけれど、そんなこと、なかったのかもしれない。
いきなりは難しくても、つらいときには、誰かにこう口に出してみることから、何か変わるかもしれない。
「泣きたいくらいつらい」
私がそうだったように、そこから開く扉があるかもしれない。
 
 
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2018-06-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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