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この門にはスキャン機能があるに違いない


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記事:眞水純子(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「熊に気をつけてくださいね」
心配そうにバスチケット売り場のおばちゃんが私に言う。数日前に熊が出没したらしいのだ。今から向かう戸隠神社の参道を、熊が横切ったという事をニュースで見たのだそう。
 
戸隠は長野駅からバスで1時間程奥まった山深い場所にある。どこから熊が出て来たとしてもおかしくない。日本神話に関係のある神々が祀られており、厳かな雰囲気も漂わせている。数年前に有名女優が出演したCMがきっかけで訪れる人が増え、今はパワースポットとして女性に人気の場所となっている。そう言う私もその中の一人である。
 
戸隠神社の奥社へと続く杉並木、樹齢400年とも言われている巨木たちが立ち並ぶ姿は圧巻である。まっすぐ続くこの道を歩いていると、気持ちがシャンとして来る。ここは何度行ってもいい。訪れる時間や季節によって違う景色を見せてくれるのだから。
そしてまた、あの景色に逢いたくなった。
「よし、戸隠に行こう」
天気予報とスケジュール帳を照らし合わせ、すぐに行動。日帰りで行く事を決めた。
 
思い立ったらパッと行動する私であるが、数年前はこうじゃなかった。初めての戸隠は3年前。友人から誘われたのだ。行きたい気持ちはあるのだが、迷っていた。無理だと思っていた。2泊3日も家を空けることに抵抗があったのだ。中学生の娘がいるのに。息子の野球の朝練やお弁当がいるのに。自宅療養中の夫がいるのに。私だけ旅行に行っていいのか? 母なのに、妻なのに、私だけ遊んでいいのか? そんな抵抗があったのだ。
「自由に体が動くのなら、俺だったら行くな」
そう言う夫の後押しもあり、行く事を決めた。家族に気持ちよく送り出してもらった。結婚してから友だちと旅行するなんて初めてだった。そして自然の中をじっくり歩くというのも大人になって初めてのことだった。この2泊3日の経験が、今後の私の人生に大きな影響を与えるものになるとはこの時思いもしなかった。
 
ひたすら自然の中を歩いた。戸隠神社の五社を目指して、自分の足で一日中歩き回るのだ。8人のグループでの行動は、合宿のようであり修行のようでもあった。雨であろうとカッパを着て雨の中を黙々と歩くのも驚きだった。初心者の私はひたすら後ろからついて行った。宿坊に泊まることも何もかもが新鮮だった。
 
自然の中にいると感覚が変わる。余計なものが削ぎ落とされ、シンプルになっていくようである。自分を飾るものがいらなくなる。自然の中では、キラキラやフリフリは似合わない。自分を飾りたてるものは要らない。ありのまま、そのままで。シンプルに軽やかに。自然の中では大きなカートをゴロゴロ引いて歩くのは似合わない。身軽なリュック1つでひょいっと行動するのがかっこいい。重たい荷物を置いて軽やかに。
自然の中に身を置いていると素直な自分になっていく。自分を大きく見せる必要もない。心を開いてのびやかに。難しいことは要らない、ただそこにいて、ただそのままでいればいいのだ。自然から大事なことを教わった。 
 
心満たされて家路に着くと、何の問題もなく日常が送られていた。私がいなくても普通に日常が送られていたのだ。
「なーんだ、私がいなくても大丈夫なんだ」
その時に気がついた。母だから妻だからちゃんとしなくちゃいけない、私がいなきゃいけないと思っていたのは私だけだったことを。誰も私のことを縛ってなんかいなかった。見えない鎖をぐるぐる巻いて窮屈にしていたのは私だったのだ。
 
私の中で何かが大きく動いた。囲っていた枠が外れた。それから自然の中にどんどん出かけた。私はどんどん身軽になって行った。毎日が楽しくなった。自分に正直になり、だんだん心をオープンに出来るようになった。自分の心を満たしていくと、だんだん人の目が気にならなくなって来た。いい人じゃなくても構わない。嫌なものは嫌、常識に囚われなくてもいい。子どもの様に無邪気に笑っていいんだ。
時間をかけてそう思えるようになって来た。きっと3年前とは全く印象が違ってると思う。
 
それもこれも、誘ってくれた友人のお陰。背中を押してくれた夫のお陰。そして、楽しさ美しさ偉大さを教えてくれた戸隠のお陰である。
 
戸隠の中で、特に杉並木の中程にある「隋神門」が私は好きである。隋神門は、神域に邪悪なものが侵入するのを防ぐ御門の神をまつる門なのだが、この赤い門には特別なものを感じている。必ず一度立ち止まり、心を整えてから門をくぐっている。
この門を超えると空気が変わる様に感じるのだ。もしかしたらこの隋神門にはスキャン機能みたいなものがあって、ここを通る人の邪悪なもの不要なものを取り除き、心をクリアにしてくれているのかも知れない。
 
その効果なのか、熊と出会うことなく戸隠の自然を充分に満喫することが出来た。行きたいと思ったら日帰りでも行けるのだ。
これからもふっと杉並木が見たくなると思う。もしかしらた、それは近いうちかも知れない。いつそうなってもいい様に「熊除けの鈴」はすぐに購入しておかなくっちゃ。

 
 
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2018-06-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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