プロフェッショナル・ゼミ

Netflixを見ていたら、自分の仕事に誇りがもてた。 《プロフェッショナル・ゼミ》


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記事:松下広美(プロフェッショナル・ゼミ)
 
え? もう、こんな時間!?
 
時計をみると朝の5時になろうとしていた。
さっきまで外は暗くて、窓の色は濃い青だったのに、うすい青に変わって夜が明けようとしていた。鳥のチュンチュンという声も聞こえてくる。
マジかー。
明日……今日も仕事なのに、夜更かししてしまった。仕事は朝イチではなくて、昼の12時の出社だから、まだいいものの、6時間の睡眠時間は確保できそうにない。
いや、それよりも、今日の締め切りの記事が書けていない!
本当は記事を書こうと、パソコンを開いたのに、一文字も書いていない。土曜日が仕事だから、金曜の夜のうちに書き上げようと思っていた。
それなのに、土曜日の朝を迎えようとしている。
 
原因は明らかである。
パソコンを開いて、ワードを起動させなくてはいけないのに、画面についつい出してしまったのはNetflixだった。
いや、ちょっとだけ、見たいと思っているドラマがあるか調べようと思っただけで、見るつもりは一切なかった。そもそも、そのドラマがあるなんて思っていなかったから。
でも、その、ないと思っていたドラマは、あった。
しかも、最終シリーズまで!
 
……たぶん、この時点で、すでに戻れなくなっていた。どう考えても、底なし沼に足を踏み入れていた。
途中の、シーズン11くらいまでは見たはず。でも、ちょっと前はどんな感じだったっけ。途中のシーズンから見るのはどうしたらいいのかなー。
なにか、目に見えない力に誘導されて、次から次へとマウスのポインターを合わせて、クリックしていた。
あ、字幕かー。吹き替えはないのかな。
あっ! あるじゃん!
 
吹き替えがなかったら、底なし沼からの帰還はできたのだろうか……。
 
そうしているうちに、聞き覚えのあるタイトルバックが流れ、ドラマは始まっていた。1話終わるごとに続きが気になり、気付いたら5話ぶっ続けで見ていた。
 
 
完全に、医療職カーストができあがってる……。
 
見たことのあるドラマなので、だいたい話の流れがわかっていた。
そうすると、本筋の内容以外の部分も見えてくる。
医師が主人公のドラマであること。
そして、私自身、医療職に就いていること。
そこから見えたのは、病院内の『医療職カースト』だった。
 
医師が一番上に君臨し、看護師、薬剤師、放射線技師……などと続く。
医師が主役のドラマだから、医師中心となるのはわかる。しょうがない。とはいえ、その他の職種の扱いが雑じゃないか、と感じるのは私だけなのだろうか。
 
医療職に就いている。
そう言っても、医師でもないし看護師でもない。
メジャーな職種ではないし、一言で説明しようとすると難しい。
 
「臨床検査技師なんです」
「え? 検査技師さんなんですか」
そう返してくれる人は、ほとんどいない。逆に、そう返されるとこちらがどう返していいのか困ってしまうくらい、いない。
「え? なんですか?」
と、聞き返されるくらいなら、大丈夫。「慣れていますから」と答えられる。
時には「詐欺師ですか?」などと、絶対違うだろう、という返事をした人もいた。そもそも詐欺師が、自分で詐欺師だなんて言わないし。
 
ともかく、マイナーな職種で、医療職カーストでは最下層に近いところに位置する。
医療ドラマで検査技師が出てきても、
「検査結果を急いでくださいって言ったじゃないですか!」
と、怒られる。怒られるのに、「いやー、もうちょっと待ってくださいよー」などと言い、ボンクラ加減を露呈する。
他のドラマでは、検査技師は変人っぽく扱われて、最初の2話くらいで仕事を辞めてしまったりしていた。
そんなシーンも、自分が知っている職種だから注目するだけで、本編に関係ないようなシーンを、誰も気づいていないだろう。
 
そもそも、臨床検査技師は、検査をする人、だ。
医師の指示のもと、血液検査を始めとする検体検査や、心電図などの生理学検査をする。
イメージとしては、病院内で試験管を振ってそうな人。もしくは、顕微鏡をのぞいてそうな人。
自分でいうのもなんだけど、地味だと思う。
病気を治療していく医師のようにかっこよくはないし、患者さまの側に寄り添う白衣の天使の看護師さんのように素敵でもない。
地味に検査をし、とにかく正しく早い検査結果を求められる。
 
病気になったとき、健康診断のとき、血液検査をすると思う。注射器で血液を採られるのは痛みを伴うものなので、何度も受けたいとは思わないだろう。
でも、1年に1回、健康診断のときにでも、この血液を検査するのは検査技師さんなんだと思い出してほしい。
 
私は、血液は宇宙のようなものだと思っている。
 
少しの血液で、その人が健康かどうかがわかる。
どんな病気を持っているかがわかる。
今や、癌になるかもしれないリスクまでわかる。
 
人の情報がここまで詰まったものが、他にあるだろうか。
 
血液は最大の個人情報なのだ。
数的の血液で、個人を特定できる。
血縁関係だって、確実にわかってしまう。
 
私は血液が持つ無限の可能性を、すごいと思う。
「すごい」なんて、単純な言葉だけど、宇宙のようにまだ知られていないこともある。
新しい検査は、常に開発されている。
 
日々、手元にくる血液を、ひとりの患者さんだと思い扱う。
毎日が同じ作業のようで、毎日が違うことなのだ。
同じ患者さんでも、採血される日、時間で検査結果は違うものになる。
 
医療職カーストでは最下層だけど、縁の下の力持ちなのだ。
ピラミッドでも、下の方が安定していないと、上は安定しない。
検査の質を安定させることが、患者さんのためにもなるのだ。
 
 
そうして日々検査をし、夜な夜な医療ドラマを見るのであった……。
 
***

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