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プロフェッショナル・ゼミ

アイプチしないと生きていけない系女子に生まれて《プロフェッショナル・ゼミ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:たけしま まりは(ライティング・ゼミ プロフェッショナル)

みなさんに質問です。
いままで出会った女の子で、こんな子はいませんでしたか?

「なんであの子は、まぶたを不自然にくっつけて、無理やり二重にしているんだろう?」

という子。
真正面から見るとすごくかわいいのだけれど、伏し目になるとまぶたに不自然な線が……。
でも、このことを指摘したらすごく怒られるだろうから、言わないでおこう。
男性の方、いままでにこんな経験はありませんでしたか?

まぶたをくっつけて、「ニセ二重まぶた」にする接着剤のことを「アイプチ」と呼びます。
厳密に言うと「アイプチ」は商品名なのですが、他社商品であっても二重まぶた形成グッズは「アイプチ」という通称名で浸透しています。
アイプチ愛用者は10代〜20代女性が圧倒的に多いのですが、最近ではアラフォー世代の美容雑誌でもアイプチ特集が組まれるなど、年齢問わず愛用者がたくさんいます。

なぜそこまで二重まぶたにこだわるのか? という疑問に、代わりにわたしが答えます。

「たとえニセでも、二重まぶたを作らないと生きていけないからです!」

大げさな、と思うでしょうか。でもこれは本当です。
生まれ持った顔に自信がない女の子にとって、アイプチは人工呼吸器です。
アイプチがないと息ができません。
ファンデーション、アイシャドウ、マスカラ、リップとさまざまなメイク道具がありますが、生まれ持った顔に自信がない女の子がどのメイク道具よりも大切にしているのがアイプチです。

そう断言できるのは、わたしこそ「生まれ持った顔に自信がない女」であり、アイプチしないと生きていけない系女子だからです。

わたしはかれこれ15年ほど、毎日まぶたをくっつけて生きています。
生まれ持ったわたしの顔は、鼻が低く、目がちいさく、全体的にのっぺりとした顔立ちです。
特に目の形状が「実がひとつしか入っていないちいさなえだまめ」のような不思議な形をしていて、その上にまぶたが重くかぶさっています。
ぽってりとしたまぶたはきれいな丘になっていて、その丘には「谷」ができる余地などまったくありません。

わたしが自分の顔に違和感を覚えたのは、小学5年生の時です。
当時わたしは「LOVEマシーン」で爆発的にヒットしたアイドルグループ・モーニング娘。に夢中でした。特にセンターの安部なつみのかわいさにすっかり魅了され、わたしもなっちみたいになりたい! と心から思いました。

幼い心は無邪気です。
幸か不幸かわたしは3歳から音楽教室に通っていたため、リズム感や歌には自信がありました。ダンスは練習すればなんとかなるだろうと、おこがましくも思っていました。
それじゃあ自分の顔はどうなんだろう? と思い、鏡で自分の顔をじっくりと観察してみたのが、違和感のはじまりです。

あれ、テレビで見たなっちとなにかが違う。
いやもう、ぜんぜん違う。
わたしの目は、左右ふぞろいで、たよりない感じ。えだまめみたい。
なっちみたいに、きれいなアーモンド形の目をしていない。
そしてまぶたにきれいな線が入っていない。

無邪気な夢は残酷です。
負け惜しみに聞こえるかもしれませんが、当時わたしは本気でモー娘。に入ろうとは思っていませんでした。
けれど「選考基準に満たない顔立ち」だからモー娘。にはなれないということが分かるのは良い気分ではありません。

一重まぶたでかわいらしい顔の人はたくさんいるけれど、わたしはよりによって「ふぞろいのえだまめ」。
せめて左右対称だったなら、モー娘。になる可能性だってあったかもしれないのに。
……二重まぶただったなら、人生が変わったかもしれないのに。

この時から、わたしは二重まぶたになりたい、と強く思うようになりました。

アイプチと一息にいえども、アイプチにはいろんなタイプのものがあります。
一番スタンダードなものがのり状のタイプですが、糸ようじのようなファイバーで二重まぶたを形成するもの、なかにはばんそうこうで二重を形成するツワモノもいます。

わたしの「えだまめのような目」、略して「えだま目」にはファイバーもばんそうこうもまったく合わず、のりタイプのアイプチでひたすら二重の線を作り続けました。
しかしこれがなかなかうまくできない。
どうにも思い描いていた二重まぶたの線を描けない。
できたと思っても、のりの跡がくっきりと残り、しかも目を閉じきれずにまばたきの際にちょっと白目になってしまう。
控えめにつけると、重みとハリのあるまぶたは人工的な「谷」を受け付けず、今度はすぐにはがれてしまう。

二重まぶたになりたい! というわたしの無邪気な夢は、残酷な現実を突きつけます。
わたしはどうして「えだま目」に生まれたのか、自分の宿命を心から嘆きました。
しかし、一度美しいものを見てしまったら、なかったことにはもうできず、後に引くことはできません。
わたしは毎日、アイプチ研究をし続けました。

アイプチ研究をして一年後、わたしは中学生になり、勇気を出してアイプチをして学校に行きました。
クラスの女子はわたしのビフォーアフターにすぐ気づき、そして「アイプチしてるでしょ」とすぐバレました。
恐ろしい顔にはならないようにしていましたが、どうしてものりの跡が残り、伏し目になるとそれが際立って見えました。
わたしは顔が変わったことへの非難があるんじゃないかとドキドキしていましたが、バレバレのアイプチをしていたことでみんなからは「あぁ、かわいくなろうと努力してるんだな」と好意的にとらえてもらえました。

しかしここでわたしに試練が襲いかかります。
中学に上がると誰もが必ず部活動をしなければならず、わたしはうっかりバスケットボール部に入ってしまいました。
アイプチが、汗で落ちてしまう。
部活が終わると顔が元に戻ってしまいます。
一度アイプチをしてしまうと、素顔を見られるのが猛烈に恥ずかしくなります。
わたしはもっと強くアイプチをつけることにしました。
目は乾くし「白目がち」になるけれど、素顔をさらすことだけはなんとしても避けたかったのです。

アイプチをつけて学校へ行くことに慣れると、わたしは少しずつ、自分の内面の変化を感じるようになりました。
これまでは「わたしなんか……」と遠慮がちな態度をとっていましたが、クラスのかわいい女子や、となりの席の男子と堂々と話せるようになりました。
トイレに行くたびに鏡を見て「変な顔だ」と落ち込むこともなくなり、自分に少しずつ自信が持てるようになりました。

ですがアイプチの本当の目的はまぶたをくっつけることではなく、まぶたに二重の線を癖づけさせて、本物の二重まぶたを手に入れることです。
わたしは本物の二重まぶたになる日を待ちわびていましたが、毎日顔を洗うたびにご対面する「えだま目」に、いつもがっかりしていました。
でも、諦めなければ、いつの日か本物の二重まぶたを手に入れられる。
わたしはそう固く信じ、日々せっせとアイプチをまぶたに塗り込んでいました。

かわいくなろうと努力している女子を見ると、ほほえましい気持ちになります。
決して「かわいい!」と言える顔立ちではありませんでしたが、わたしはあの時のわたしに「ナイスファイト!」と声をかけてあげたくなります。
もし、みなさんのまわりにわたしのような女子を見かけたら、同じクラスの女子たちのように、ぜひ暖かく見守っていただけたら、と心から思います。

しかし、そんなわたしの不器用な努力は、中学2年生の時にあっけなく否定されてしまいました。

「あとで職員室に来なさい」
生活指導の先生から突然呼び出しがかかりました。
中学2年生、中学生活にも慣れ、生徒が少しずつ開放的になり、性的なことや悪いことに興味津々になる時期です。
クラス内の男女交際が増え、高校生の不良グループと付き合うようになった子も出てきたことで、先生たちの生活指導はいままでよりも厳しくなっていました。

「アイプチは校則違反。 落としなさい」
ぴしゃりと言われました。
想定していたことだけれど、わたしはどうすればこの場を切り抜けられるのかわからず、パニックになりました。
「いや……その……わたしはこれがないと生きていけなくて……」
ごにょごにょと反応していたら、先生はより大きな声を出しました。
「何度も言わせるな。 先生を舐めるなよ」
有無を言わせぬ先生の態度に、わたしは声が出ませんでした。こくりとちいさくうなずき、うつむいたままその場を後にしました。

職員室から出た瞬間に、涙があふれてきました。
ルールだからって、コンプレックスを改善しようと努力する人間を否定するなんて。
努力の方向がスポーツだったら、きっと先生は褒め称えただろうに。
それがわたしの場合は、アイプチだっただけなのに。
わたしは自分の不器用さや傲慢さを棚に上げ、泣きながら先生を恨みました。
恨みながらも、わたしはどうしてもアイプチなしでの生活が考えられませんでした。
この時から、もうすでにアイプチは「人工呼吸器」になっていたのです。

結局、アイプチなしで学校に行くことは考えられず、怒られた翌日もアイプチを控えめにつけて登校しました。
先生とは目を合わせないようにうつむき気味に過ごし、前髪で目元を隠すようにし、先生に見られてもバレないように工夫しました。
薄くつけることに慣れてくると、先生に怒られた時はたしかにアイプチのつけすぎだったと冷静に分析できるようになり、次からはもっとバレないアイプチをしよう、と懲りずに思うようになりました。
それからわたしはアイプチの研究にさらにハマっていきました。

あれから15年。
顔のコンプレックスにさんざん悩まされてきたわたしももうすぐ30代になります。
いつまで顔に悩んでんだよ自分、と少し呆れます。
アイプチが面倒くさいと思うことはしばしばありますし、アイプチのつけすぎでまぶたに炎症を起こし、自分のことを棚に上げてアイプチを恨んだ日々も数知れません。

それでもいまだにアイプチなしでの生活は考えられません。
アイプチはわたしが人生で初めて出会った「人生を前向きにさせてくれる道具」でした。
生まれ持った顔に自信が持てなくても、自分が「かわいくなりたい!」と強く思えば方法はいくらでもある。先生に怒られたけれど、クラスの女子が好意的にとらえてくれたり、男子と堂々と話せたりできるようになったのは、他でもないアイプチのおかげです。
アイプチがもたらしたポジティブな可能性に、わたしはすごく救われたのです。

社会人になり、経済的に自立した今なら、いつでも医療の力で顔の「工事」をすることができます。これまで何度も美容整形をしようと考えました。
けれどそれをしないのは、なんだかんだで「えだま目」に愛着が湧いてきたからなのです。

そうなんです。
わたしはアイプチを長年愛用し続けたことで、自分の生まれ持った顔に少しずつ愛着が沸いてきたのです!

ここまでくると、アイプチはただのメイク道具でも「人工呼吸器」でもなく、コンプレックスに悩む女性を救う「救世主」であり、嘆く女性が減ることで世の中の小さなトラブルが少しずつ減り、世界平和に一歩近づいているのではないか!? とすら思え、アイプチがガンジーのような偉大な存在に思えてきました。
もし、みなさんのまわりでアイプチ女子を見かけたら、暖かく見守っていただくとともに「世界平和に一歩近づいている」と感じていただけたら、と心から思います。

アイプチしないと生きていけない系女子に生まれて、わたしは人生のあらゆる困難にぶつかったときも「諦めずに、必死で考えて工夫する」ことを身につけました。
わたしはアイプチに感謝してもしきれません。

そしてこれからも、わたしはアイプチに末永くお世話になることでしょう。
アイプチの偉大さが、多くの人に伝われば幸いです。

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