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まっすぐな自分で


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記事:甲斐菜々子(チーム天狼院)
 
人の目をしっかり見れなくなったのはいつからだろう。
目の前の人を見つめる自信がなくなったのは、いつからなんだろう。
 
 
わたしは幼い頃から、人の目をよくみる子だったらしい。確かに、思い出してみれば話していた友達に「全然視線が目から外れないよね!」と言われたことがある。
わたし自身も、人の目を見ることが当たり前だったし、苦手ではなかった。
そして特に、まっすぐこちらを見返してくれる人が好きだった。小学校の先生や、両親や、大好きだった祖父。特に祖父はどんなことにも全力で、いつも自信満々な目が印象的だった。みんな、子供のわたしにとっては信頼できるかっこいい大人たち。そして、ぶれることなく自分の軸を持っている人ばかりだ。
 
そんなまっすぐな目に、ずっと、漠然と憧れていた。
 
 
高校生になって、私は放送部に入った。理由は、舞台の上で堂々と声を飛ばす先輩がかっこよかったからだ。そして、そんな先輩に憧れて放送の世界にのめり込んだわたしは、来る日も来る日も練習した。そして、賞をとれるようになってから、自分への自信を持てるようになった。放送で大事にされていたことは、「まっすぐに相手を見て伝える」ということだったし、なによりも自分に自信があるからこそ、まっすぐ前を見ていられた。
高校での放送部の経験は、私にとっては私が自信を持っているための、大切なものだ。
 
 
でも、いつからか人の目を見るのが怖くなった。
いつなんだろう? とよくよく考えると、大学生になってからだ。大学生になって、新しい場所に顔を出せばだすほど、自分への自信がなくなっていった。
簡単に言えば、到底わたしなんかが及びそうにもない、すごい人がたくさんいたのだ。まっすぐに自分の考えを持っていて、目に自信がある人。
それも、年下で。年上の人ならまだ、人生経験も上だから、と純粋に憧れていられた。
私の方が歳を重ねているのに勝てない。その事実がわたしの中の自信を打ちのめした。
 
それでもまだ、わたしの中で放送部だった時の自信は辛うじて残っていて、放送の活動をしている時だけは自信を持っていられた。
 
だけどついに、私が一番大切にしていた放送でも、勝てなくなった。
いつも私が指導していた部活の後輩が、全国大会で賞を獲ったのだ。
私が獲れなかった賞を獲った。
その知らせを聞いた時、私の感情はごちゃまぜになった。
 
後輩に抜かされてしまった。
その時点で自分の中でふつふつと嫌な感情が湧いていた。喜ばなければならないのに、だめだった。
私がその賞獲りたかったのに、とか才能があって羨ましいとか。なぜあの時私はもっと頑張れなかったんだろう、とか。
嫉妬してもしょうがないのはわかっていても、唯一私がまっすぐな目をしていられたこの場所を、私が、私の中で一番で居れた場所をとられたようで悔しかった。
 
そして、母校に帰ることになったある日、わたしはその後輩に会うことが怖かった。
もっと上手くなって、もっと夢に届きそうだったらどうしよう。そんなことを考えてしまう自分がほんとうに嫌だった。
 
そして、その後輩が挨拶をしにきた。
「先輩、お久しぶりです! いつも指導してくださってありがとうございます!」
とお辞儀をして、パッと顔を上げたその子の目がほんとうにまっすぐで、みていられなくて私は思わず目が泳いだ。
 
こんなに芯のある目をしていたっけ?
もともと、綺麗な目ではあったけど、記憶の中よりも芯がある目だった。私はお礼の言葉にうまい言葉を返せず、なんだかもう目が泳ぐ自分が情けなくていてもたってもいられなくなり、そして思った。
 
自信のある人って、まっすぐに相手を見つめられるものなんだ。だってあの目、わたしも何年か前はできていたはずだ。自分のことをちゃんと信じている目。
情けない。私は最近自分を信じられているだろうか?
この人はすごいから、私とは違うからしょうがない、なんて諦めていた自分に気づく。
ますます自分を情けなく思っていると、
 
「わたし、先輩の放送がかっこいいなあって思って」
 
目の前の後輩が、急に言った。
だから入部したんです、と。
 
その言葉を聞いて、ハッとした。
後輩がこんなにまっすぐ私を見つめてくれてるのに、肝心の私はいつからこんなに卑屈になったんだろう?
私も、あの目をしたい。私も自分を恥じずに、まっすぐに相手を見ることができるようにしたい。
たぶん、まっすぐ目の前の人を見ることができるということは自分のことをまっすぐに見つめられている人だから。今の自信がない自分を見ないふりしちゃだめだ。
 
まっすぐな自分でいられるように、なにかしなきゃだめだ。
 
そう思った私はあの日から私は取り憑かれたように放送に熱を入れ始めた。どうか、自分の自信を取り戻せますように。
時間はきっとかかるけど、その願いを込めて自分のために頑張るのだ。
 
まっすぐな自分で、相手を見つめられるようになる日まで。
 
***

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2018-07-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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