プロフェッショナル・ゼミ

本当の自分がアプリ出されたーおっさん婚活クロニクル《プロフェッショナル・ゼミ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:射手座右聴き(プロフェッショナル・ゼミ)

「こんな男性は婚活で失敗する」
「いままで婚活で出会ったダメな男のエピソード」

WEBをひらけば、
著名ブロガーの方、婚活コンサルタントの方が意気揚々とダメ出しをしている。

1円単位まで割り勘にされた。逆に、奢られたのが腹が立った。
お会計の問題は難しい。
自分の自慢話ばかりする。逆に、おどおどして頼りない。
どっちでも嫌がられる人は、嫌がられる。
服装がパッとしない。逆にチャラチャラしていて嫌だ。
何を着ればいいのか。

なるほど、知らず知らずのうちに男性ってダメな行動をしているのか。
気をつけなければ。そんな気持ちで記事を読む。

2年前の夏のことだった。
40代も後半に差し掛かってきたので、婚活アプリに登録してみた。

バツイチ。自営業者。47歳。年収そこそこ。
一緒に人生を歩むパートナーを探しています。よろしくお願いします。

精一杯笑っている写真を探した。
年齢認証が済み、アプリに課金。

メッセージ交換を申し込むために
初日、10人の方にいいね!を送った。

しかし返ってこない。ひとつも返ってこない。

次の日も、次の日も、返ってこない。

何が悪いのだろうか。

レスポンスが悪い。これは、広告に携わっているものとして
ちょっと致命的な話だ。

女性の気持ちになって、自分のプロフィールを何度も見直した。

足りないものはなんだろうか。
顔がちょっとね、と思われても画像を加工するわけにはいかない。
プロフィールを盛っても、会った時わかるから仕方ない。

そこで気づいた。なるほど、プロフィールの情報量が足りないんだ。
もっとたくさん書いた方が安心感がでるんじゃないか。
一行だったプロフィールを伸ばしてみた。

はじめまして。20年ほど広告会社でサラリーマンをしていました。
今は独立して、動画広告やグラフィック、WEB広告などの仕事をしています。
休日はみんなでわいわい遊ぶことが好きです。とはいえ、仕事中心の生活のため、出会いの機会が少なくて、今回登録してみました。前向きな考え方のパートナーと残りの人生を一緒に歩めたら、と思っています。何度かメッセージ交換をしてから、お会いできればと思います。よろしくお願いします。

できるだけ、普通に。さりげなく、仕事頑張っていそうな感じに。友達も少なくない感じを装って。さらに、「すぐに会いましょう」ではなく、メッセージ交換してから会うことを提案することで、がつがつしていないという感じを出そうと考えた。

プロフィール変更してみたら、なんと先方から、いいね!をいただいた。

やったぞ。モテた!

50代、60代の方々からのオファーが増え始めたのだ。
お相手のプロフィールを読むと、みんな同じことが書いてあった。

「子育ても一段落をして、残りの人生を穏やかに暮らしたい」

しまった。そういえば、私も書いていた。「残りの人生を一緒に歩めたら」
と書いていた。
でも、女性たちの考える、「残りの人生」 と私の考える「残りの人生」は
少し違っているような気がした。

私はまだまだ働く人生を考えていた。プロフィールを訂正した。
「残りの人生を一緒に歩む→人生を一緒に歩む」に変えた。

その間にも、私は自分からも、いいね!を押して攻めた。
何十人に送っても返事がないことに、もはや慣れてきた。

50手前のよくわからない自営業男性の市場価値というものを認識することが
できた。

友だちが「男は年を取ってからだよ。きっといい人が見つかるよ」と
言ってくれるのが、優しさだったことを、しっかりと理解した。
年の差婚をしている芸能人を見て、「俺も」などと思うことが
大きな勘違いである、ということを嫌という程、思い知らされた。

もう、この年で結婚できることが奇跡なのだ。

40歳以上の結婚確率が1%をきる、という話にもうなずけた。

そんな中、ある日奇跡が起きた。
10歳以上下の女性A子さんとマッチングし、メッセージ交換することができた。

「実は私、来週、誕生日なんです」

A子さんが指定してきたのは、なんと船上クルーズディナーだった。
いきなり、船上クルーズ。しかも、誕生日がもうすぐだという。
ディナーは少し上のランクのものにしないといけないだろう。
ケーキもオーダーしておかないと。

初対面なのに、つきあいの長い彼女のためのような準備をしなければ
ならなくなった。

「いきなり船上だったら、沈没する客船のハリウッド映画みたいな
ラブシーンをしてくればいいじゃん」
 友達に冗談を言われながら、待ち合わせ場所に向かった。

まず、来てくれるか、が心配だった。

クルーズは、時間になったら、出航してしまう。
間に合わなかったら、一人で船に乗り、船上ディナーを食べることになる。
もはや刑罰レベルの仕打ちだ。

A子さんはギリギリにきた。

「船の前で写真を撮ってください」
ポーズを決めたA子さんは、関西弁で言う「シュッとした感じ」の人だった。

写真を確認して、A子さんはにっこり笑った。

よかった。
ホッとしたのもつかの間。
向かいに座って、フルコースを食さなければいけない。

「シャンパンが飲みたいです」

きた。そうでしょう、そうでしょう。誕生日はシャンパンでしょう。

ボトルを注文する。

乾杯したあと、初めまして、の挨拶をして、
お互いのプロフィールを話す。

聞けば、海外に数年いて、戻ってきたという。
おだやかな物腰で、ゆっくりと、しかし、しっかりと話す方だった。

ディナークルーズも後半にさしかかると、
突然、フロアが暗くなり、無事、レストランらしい誕生日演出が行われた。

こうして、ファーストコンタクトは成功したかに見えた。
好感度のある方で、少しづつ進んでもいいのかなと思った。
いや、むしろ、こんなポンコツ中年と会っていただいてありがとう
という気持ちでいた。

ここまで数百人の女性に、いいね!をつけ、
たった一人だけ、返事をくれた方だ。女神のようなものだ。

先方も200人ほどの男性から、いいね!をもらって
初めて会ってみたという。これは縁があるのかもしれない。
大切にしなければ。

マメにメッセージした。「おじさんのメッセージは自己中」と
WEBの記事に書いてある。相手を気遣うような内容を多めにした。

「職場のお局様がね、、、、、、、」
だんだん悩み相談が増えてきた。

心を開いてくれているのかもしれない。
ここは大人力を発揮して、聞いてあげなければ。

できるだけ早く返信を心がけた。励ました。共感した。

日に日に、愚痴は多くなってきた。
私は一生懸命聞いた、つもりだった。

だが、この出会いの終着点は、もう目の前に迫っていたのだった。

悩みのタネである、お局様の呼び名が、だんだん進化してきた。

お局様→お局→おばさん

そして、ついに。
「あのばばあ、許せない。ふざけんな、だよ」
こんなメッセージがきた。

「まあまあ」と穏やかに返した。

返事に驚いた。

「ダメな男。私の悩みも解決できないのね。
 気晴らしにどこか行こう、くらいしかできない。
 結婚できない理由がよくわかるわ」

罵倒する言葉が続いた。
それっきり返信はこなくなった。

あまりのことに、言葉もなかった。
彼女は何を望んでいたのだろうか。
同じ職場でもない、自分の態度を変えたくもない
そんな状況で、悩みを解決できるとは思っていなかったはずだ。

頑張っていることを応援したし、理不尽な仕打ちを受けていることに共感も
伝えた。

でも、いきなり、「解決しない」って何?

もともと乗り気じゃなかったから、余計いらいらしたのかもな。
と思った。

婚活アプリデート、第1章はあっけなく幕を閉じた。

第2章の始まりに、私は少し驚いた。
メッセージには、こんな言葉が書かれていた。

「ご飯でも行きませんか。もうすぐ誕生日なのです」

B子さんも7月生まれだという。獅子座と射手座は相性がよいのだろうか。

今度は陸上で普通のレストランだったので、あまり不安はなかった。

誕生日のお祝いも無事にすみ、2軒目で事件は起こった。

「終電なくなっちゃった。朝まで飲みましょうよ」

女性は上機嫌になってくれたが、
翌日は朝9時から打ち合わせだった。なんとしても帰りたかった。

「こんな魅力的な方と飲めるのに、朝早いのが残念です」
次の日から、連絡が取れなくなった。

時間管理できなかった自分を責めた。

第3章もまた、誕生日の近い女性だった。

さすがに私も、「本当に誕生日なのか」という気持ちになった。
たしかに、誕生日だった。なるほど。

しかし、なぜか昼間と平日の夜しか会えなかった。

仲良くなって数ヶ月後、飲み会の席で、彼女の友だちが言った。

「C子はね、彼と同棲してるから、早く帰らなきゃいけないよね」

同棲してるのに、婚活アプリしてたのか。

俺はマリッジブルーの吐け口だったのか。

「婚活アプリって、既婚男性も登録してるから、不安なんですよ」
C子さんは以前こんなことを言っていたけれど
なんだったのか。

私は、課金を解除し、アプリをそっと削除した。

私のどこがよくなかったか、あらためて考えた。

A子さん、B子さん、C子さん、私にどんな気持ちで会ったのだろうか。

美味しいものを食べさせてくれそうなおっさん。
ガツガツしてなくて、害のなさそうなおっさん。
人がよさそうで、断っても怒らなそうなおっさん。

そんな感じか。

どの女性のことも、好きだかなんだか、わからないうちに
連絡が途絶えてしまった。だから、恋愛として傷つくことはなかったけれど、婚活アプリ市場における自分の商品価値がないことは、よくわかった。

もうひとつ、アプリをしていたからこそ、わかることがあった。いままで見えなかった競争相手が可視化されたのだ。とにかく女性は、たくさんの男性からお誘いを受けているのだ。どんなに少なくても、100人以上の男性から、お誘いをされている。そして、同時に複数名と会っている女性もいる。
いろんなデートをしているだろう。とてつもなく豪華な店に連れて行ったり、
予想の斜め上をいくようなプレゼントをする人もいる。すごいイケメンもいるだろう。とても仕事のできるビジネスマンもいれば、名医もいるだろうし、
切れ者の弁護士さんもいるだろう。

1対1で考えるのではなく、1対100の100の側にいる、くらいの気持ちで
臨まなければいけないのかもしれない。

この競争にはキリがないのだ。ありのままの自分で頑張る、という考え方もあるけれど、競争だからこそ、自分のスペックを上げるために頑張る、というのも
必要じゃないかと思った。

「人の評価は気にせず、自分らしく生きる」
大事なことだが、私の場合、それが甘えになっていたかもしれなかった。
また、周りも優しい人に囲まれていた。
「会社員を辞めて、独立して頑張っているね」
みんなに言われているうちに、なんだか、誰よりも頑張っている仕事熱心で
きちんとした自分だと思い込んでしまっていたのだ。ある種自惚れていた。

でも、元々縁のなかった、婚活アプリの女性たちからしてみたら
「なんだかよくわからない自営業者のくたびれたおっさん」かもしれない。結婚を軸に考えたら「将来が見えないおっさん」だったかもしれない。

これは、大きな気づきだった。アプリをしなければわからなかった。

たとえるなら、
婚活アプリは、一番耳の痛い話をしてくれる友人のようなものだった。
なんのためらいもなく現実をつきつけてきた。

「射手座くん(私のこと)は頑張ってると思うよ。でも、婚活は他の男性と
比べられるわけだからね。客観的に自分を見ないと。歳も歳だし、もっともっと頑張らないといけないよ。伴侶に選ばれる人になってね」

そんな風に言われた気がした。
なんと、アプリに本当の自分をあぶりだされてしまったのだ。

もう一度、自分の立ち位置を見直そう。
初対面の人にもわかりやすいスペックを持つことはできないだろうか。

自営業者もいいけれど、経営者を志してもいいかもしれない。
自分を魅力的にするような趣味を広げてもいいかもしれない。

女性が将来をイメージできるような人にならないと。

いい歳のおっさんなのに、いや、いい歳のおっさんだから
やらなきゃいけないことが沢山あると思った。新しいスタートだった。

それから1年後、たまたま別の婚活アプリに登録した。
スクロールすると
クルーズ船の前でにこやかに笑っている女性を見つけた。

私が撮影した彼女の写真だった。なんなのだ。

まだまだ女性の気持ちがわからない。

それでも来年は、いい七夕にするぞと誓ってみた。

***

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