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突然の「まさか」に家族がすべきこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:眞水純子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「どういたしましょうか?」
担当者さんに促され、パンプレットを見つめる父と姉と私。それぞれ、無言でじっとパンフレットを見つめていた。そこには小さな写真とそれぞれの特徴や素材などが書かれた説明文が載っていた。
「うーーーん」
決して楽しい買い物ではない。母の葬儀のために今ここで決めてしまわないといけないのだから。
 
「祭壇はどれにいたしましょうか? 今は花祭壇が人気でございます」
写真をみると、華やかな花たちが一面に飾られとても綺麗だった。お花が好きな母だったのでそれもいいかなと思っていたところ
「花祭壇は65万円からになります」と担当者さん。
「え?! 65万から?!」
言葉にはしないが、三人ともに同じ反応だったと思う。
「え? 高くない? でも相場を知らないしそんなものなのかしら?」
 
一事が万事、相場を知らない品物たちを選んでいく。そもそも日常にないものだからどういう観点で選べばいいものなのか。人の心理として価格に松竹梅があったら真ん中を選んでしまうようである。
本当は一番安いものでも充分なのだろうが、比較してしまうとやはり見劣りしてしまう。それに何だかケチっているようだし。無難な真ん中だと安心。そんな心理になってしまう。
 
そもそもこんな大きな金額の買い物をするには、こちらの準備がなさすぎる。ほとんど寝ていないモウロウとした頭で思考能力が低下した状態で、考える猶予も与えられず決めなければならないのだから。他社との比較することも出来ない。値切るわけにもいかない。こんな時にお金のことをああだこうだと言いたくはない。でも何だか納得がいかない気分は残る。
 
自分の物ならまだいいが、旅立つ母のための品物だということを考えるとちゃんとふさわしいものを選ばなくてはならない。「地獄の沙汰も金次第」という言葉もあるではないか。三途の川を渡るときにみすぼらしい格好はさせられない。最後は美しく送ってあげたい。父もそう思ったのか、銀色の美しい模様の入った光沢のある着物を選んだ。そして、お棺はお花の模様の入った光沢のある布で覆われた美しいものを父が選んだ。
 
一通り選んだ時には、結構な時間が過ぎていた。もうぐったりだ。出来ればこんな時にしたくないことだ。まあ、こんな時にしかやらない事だけど。
そもそも斎場に行くことがないから知らなかったのだが、事前相談というものがあることを知った。生前に自分の葬儀について相談できるのだ。これはいい。本人がいいように、本人が決めておいてくれたら残された人たちはどんなに助かることか。たとえどんなランクのものを選んでいようと、本人の意思なので誰も文句のいいようがない。もし、本人が行かなくても家族が他と比較をするために行ってもいいと思う。やる事は嫌でもいっぱいあるのだから、事前に出来ることはやっておいた方がいいと思う。でもなかなか実際は難しいものなのだろうか。何だか亡くなるのを待っているいるみたいに感じるから。でも事前にやっておくことをおススメする。
 
もう一つ、事前に準備しておいた方がいいものがある。それは写真だ。葬儀の打ち合わせ時に遺影に使う写真を持って来るように言われる。出来れば明るい表情で、一人で写っている写真。急に言われても、なかなか適当な写真がないこともあるのではないか。それに今の時代デジタルで撮影しているのでプリントをしていない。データはあってもどこにあるのかわからないということもありうる。
母の遺影は、楽しそうに笑う父とツーショットの記念写真を使った。リビングにその写真が飾ってあったのですぐに用意することが出来たが、これがなければ写真を探すのも大変だったと思う。疲れた頭と体にムチ打って、写真を探しだ出さなければならなかったかも知れないのだから。今後写真を撮る機会があれば、「遺影に使える写真」そんなことを頭の片隅に置いて撮ってみてもいいのではないだろうか。
 
今は「終活」という言葉もある。自分の人生の終わりを迎えるために準備をしていくのだが、なかなか高齢の親が自分で行うことは難しいのかも知れない。計画的な父でさえ、数年前から「エンディングノート」を書かないといけないと言っていたのに今だに書いていない。だが、残された家族としては何かしら書いておいて欲しいと思う。というのも、結婚して20年、遠く実家を離れると何もわからない。知らない事が多すぎる。そもそも銀行の通帳がどこにあるのかも知らないし、生命保険に入っているのかも知らない。誰に連絡を取ればいいのかも知らない。親と言えども、知らないことの方が多いのだ。
急に母が亡くなってばたばたと翻弄されているのだが、それでも父に聞きながらやれている。もし、父と母が一緒に亡くなっていたら本当に何もわからなかった。葬儀はどこですればいいのか? お寺さんはどこなのか? 本当に途方に暮れていたいただろう。
この機会に父と今後のことを話した。これからどうしたいのか、どうして欲しいのか。普段聞きにくいことも「エンディングノート」の代わりにがんがん聞いた。
 
母は交通事故という思ってもいない「まさか」の終わりを迎えることになったが、誰でも必ず遅かれ早かれその時がやって来る。そして「まさか」は誰にでもありうる。それは、私であるかも知れない。
自分の人生をどう生きていくのか? 
 
最後の日を「いい人生だった」と笑って迎えられるように、
「我慢なく」「不満なく」「後悔なく」
自分を生きていきたいとますます強く思うようになった。
これも母のおかげかな。

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2018-07-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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