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メディアグランプリ

「妹か犬」の結果


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:北村涼子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「妹か犬がほしい」
と当時小学2年生であった娘に言われてからかれこれ4年が経つ。
ずっとずっと「ひとりっこはさみしい」と言われてきた。
 
妹か犬。
私にとってはなかなかの選択肢であって「すみません、ちょっと考えさせてもらえますか」と言いつつ4年が経っていた。
 
妹……、そもそも妹じゃなかった時の反応はいかに!? いや、そういう話の前に、いろんな考えるべきことが山のようにあるんです。 
犬……、誰が散歩行って、誰がごはんをあげて、誰がその他諸々お世話をするの!? 散歩、小学2年生のあなたひとりに任せられますか? 
 
そんな簡単なものではないでしょー! ということでこの4年間聞いて聞かぬふりをかましてきた私。
夫は無責任な話で「どっちでもええやん」的な話で突入してくるので「はっ!?」
誰が妊娠して誰が出産して誰が仕事休んで誰が育児短時間勤務とって誰が必死に動きまくるのでしょうか、と睨みをきかせて制する状態。
 
そんな数年が過ぎた娘5年生の冬。
「あー、ほんまに犬飼いたーい」と事あるごとにボソボソ言い出した。
いろんなことを察してかもう「妹がほしい」とは言わなくなってきていた。
「犬」に焦点が当たる。
その頃、家庭の中でも「ちょっと癒しのモトが必要やね」という状況であった。
娘も5年生となりそこそこの「女子」になりつつある中、「子はかすがい」という夫婦の橋渡し的な効果もちょっとずつ減ってきていた。
それに伴い、夫と私の会話は減る一方。
小5でこの状態。このまま自立していく娘を思うと私たち夫婦の会話は無くなってしまうのではなかろうか、と思う日々。
 
そんな日々の中、夫がひとこと。
「癒しがほしい……」
娘の主張にもう一度しっかりと便乗してきた。
 
夫のひとことも手伝ってか4年間無視を続けてきた私自身も仕事から帰宅してほっと一息つける対象があればどんなに心は穏やかになれることか、と思うようになってきた。
そういう心境になってくるとなぜか勝手なもので以前に列挙していた不安要素に対して「どうにかなるんじゃない?」という考えが芽生えてくる。
娘ももう6年生になるし、主体性をもって動くこともできるだろう、と思えてくる。
また、SNSなどでやたらと従順な犬たちの画像や動画が目に入ってくるようになる。
「かわいいなぁ、おりこうさんやなぁ」と大反対をしていたにも関わらず日に日に思いが増していき、私も癒されたい! と夫や娘以上に思うようになってきた。
そしてペットは必ず飼い主を癒してくれるものだと信じて疑わなかった。
 
犬についての情報にアンテナを張り、その中で出会った柴犬の子犬。
一目合ったその日から……、という出会いがあった。
めでたく家族の一員に仲間入りを果たしたその柴犬は「一丸(いちまる)」と名付けられてその存在感をさっさと表しだした。
 
一丸は、私が想像していた「犬がいる穏やかな暮らし」をけっこうなパワーで破壊していった。
 
目についた小さなもの全てを口にする。
散歩中、小さな小石を目にするとすぐに飛びつき、ごっくん。と。
ある時、コルクボードから画びょうが落ちてしまった。
「落ちた!」と思った瞬間に一丸はそこに突っ走っていき一口で飲み込んだ。
「きゃー!!」と叫ぶ娘と私。
夜間の緊急動物病院へ連れていく。途中、いろんなことを考える。ごろんごろんと画びょうが動いて胃や腸の壁に刺さって口から血が噴き出してこないか……。消化された食べ物と一緒に運ばれて排便時によからぬところに刺さらないか……。想像するだけで鳥肌ものの恐ろしさを感じる。
結局大事には至らずに吐かせることで一件落着したけれど癒しの対象であるはずの一丸にヒヤヒヤすることやイライラすることが増えてきた。
 
ぼーっとお散歩して日々の忙しい日常から一瞬でも逃れよう、と憧れていたものは、目を離したすきに石ころを口にし、それを取り出そうにも飲み込んでしまい「もう!」とイライラするどうしようもない感情に成り代わった。
しつけ教室でも思い通りにならないと飼い主に威嚇してくる。本気で牙をむいて噛んでくる。よその犬がみんな利口に見える。
教室の先生に「大丈夫ですよ! これからですよ!」と目一杯の励ましの言葉をもらうが飼い主としてこのままで良いのか、どうすれば一丸はしっかりしつけされて立派な成犬になってくれるのか、と不安で一杯になってくる。
 
さらに家の中は春から夏に向かう生え変わりの毛だらけ。掃除機をかけてもかけても毛がどこからかわいてくる。しまいにはフローリングの色にまで腹が立ってきたりする。なにこの床、薄茶色の毛が際立って仕方がないやないか! と。
 
こんなはずではなかった。あぁ、もう飼い主としてやっていく自信がない。
そんな家族3人が日々一丸の悩みを話し合い、あの手この手を絞り出し、解決策へ向け結束を固める。
そう、気が付いたら我が家は一丸の話しに始まり、それを元に今まで話し合わなかったことさえも相談し合うようになっていた。
イライラの原因でもある一丸は自然消滅しそうな会話を連れ戻してくれた。
ペットに癒されて穏やかな日々を送るという憧れの生活は今は目の前にはないけれど、このデキの悪い一丸のおかげで家族がひとつにまとまりつつある今日この頃である。
あ、今気付いた。一丸は「いちがん」とも読むな。
家族一丸となって頑張っていこう。

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2018-07-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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