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メディアグランプリ

はじめてお酒を飲んだ夜に


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:甲斐菜々子(チーム天狼院)
 
 
「もし時間を戻せるなら、いつに戻りたいですか?」
 
バイト先の休憩中、わたしは社員さんにこの質問を投げかけた。
 
「学生の時かなあ! もっと勉強してればよかったなあ、なんて思ったりする!」
とある社員さんが言い、そこから
「大学生活が最高だった」
「人生最高にモテてたバスケ部時代!」
など、どんどん話に花が咲き、場が盛り上がっていく。その話を聞きながら、やっぱり若い時代って特別なんだ、と改めて焦っていた。
 
なぜかというと、10代が終わってしまうまで、あと少しだったから。わたしはなんだか、大人になることが不安だった。
法律的に大人になってしまうまでに何かやり残したことはないのか、という焦りと、これからどんな大人になれるんだろう? という不安が頭を巡っていた。
 
そういえば、10代はわたしにとってとても特別だった。
 
幼い頃から見てきた漫画や映画、ドラマの中では、一生懸命に部活にとりくむ学生の姿、ちょっと痒くなっちゃうくらいベタベタな恋愛が映し出されていた。でも、わたしにとっては全て憧れで、眩しかった記憶もある。
一度きりの青春! とか忘れられない高校生活! とか素敵なキャッチコピーが踊り、完全に影響を受けた私は、
 
いかにして、10代を後悔無いものにするか?
いかにして、誰よりも青春できるか?
 
ということをわたしの10代の目標にしていた。
だからこそ人生の先輩たちに、人生の後悔を聞こうと思い立ったのだ。
 
「あのときこうしとけばよかった」
「大学生をもっと楽しめばよかった」
「絶対これだけはしときなさいよ」
 
いざ聞いてみると、どんどん出てきた。大抵の人は、人生の後悔というものはあるらしい。
そしてひとしきり話した後、あ〜戻りたい! と大人たちはいうのだ。
いいなあ若いもんは、などとしみじみと呟く人もいる。
そのセリフを聞きながら、絶対わたしはこう言わないぞ! と決意したのである。
10代、やり残したことなんかない! と言い切れるような大人でありたかった。
今思えば、人の後悔を聞き出して参考にするとは、結構、嫌なやつだ。だけど自分の10代をより良くするためには必要不可欠な先人の言葉なのである。私の10代はそうして、ありがたく先人の後悔を自分の人生に生かし、後悔することは特になかったように感じる。そして、あっという間に10代は過ぎた。
 
 
でも20歳になった日、わたしが掲げてきた目標は少し変わった。20歳の記念に訪れた居酒屋のおじちゃんと話していた時だった。
 
若い時はやんちゃしててね、とおじちゃんが語ってくれた話はいかにも波乱万丈で、ドラマが作れるんじゃないか? というほど面白かった。
この人からなら、よりためになるお話が聞けるんじゃないか?
これから大人になる私は不安だらけだから、何かアドバイスが欲しかったのだ。
そしてわたしは、若い時に戻りたいですか? と聞いた。
するとおじちゃんは、えぇ!? と驚いた表情を作り、「戻りたくないよ!」としかめっ面をした。
予想外の反応に驚いて、なんで戻りたくないんですか? と食い気味に聞くと、
「あの時の自分がいたからこそ今の自分になったし、もう繰り返すのはごめんだよ!」
そこまで言うと、さっきまでのしかめっ面が消え、おじちゃんの顔に人懐っこい照れ笑いが浮かぶ。
「だけどさ、若い時にできなかったこととかさ、今やってみようかな、なんて思ってさ」
 
おじちゃんは若い時にバンドが組みたかったらしい。
だから最近友達集めてさ、バンド組んだんだよね、と楽しそうなおじちゃん。若い時できなかったこと。でも、今ちゃんと叶えられたこと。
 
 
新しい価値観だった。
後悔しないように、失敗しないように。
わたしの考えはそれだった。
全てにおいて、ああすればよかったこうすればよかった、と考えるのは悔しいし、情けないと思っていた。
 
そんなことないんだ。
 
失敗したって後悔したって、別にいいのかもしれない。
 
もしかしたらできないことばかりに目が向いて、打ちのめされて、一番楽しかった時に戻りたいって思うかもしれない。一度きりの時間を無駄にしてしまったりしたら、へこむかもしれない。
でも、その分だけ素敵な発見もあるかもしれない。次は頑張ろうとか、次はこうしてみようとか。そうすればいつかまた、夢が叶う瞬間が来るかもしれない。最初からうまくやろうとするのも別に悪いことじゃないけど、もっともっと壁にぶち当たるのもいいかな、なんて急に思えたのだ。「要領よく」なんて考えずに、がむしゃらに走ってみたくなった。
 
 
聞くところによると、大人ってとても大変らしい。
10代には感じなかった責任を背負い、気楽な毎日ではないらしい。
だけど楽しいよ、と目の前のおじちゃんは言うのだ。私にもその楽しさがわかる日が来るだろうか。
 
初めてのお酒はまだ少し苦い。でもおじちゃんの笑顔を見ていると、大人って素敵かも、なんて思うのだ。
今夜が大人の始まり。すこし寂しいような、でも、なんだか誇らしいような気持ちと一緒にお酒をこくりと飲んだ。
***

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2018-07-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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