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プロフェッショナル・ゼミ

長崎産まれ、長崎育ちの私が、最近疲れているあなたに心の底からおすすめする祭《プロフェッショナル・ゼミ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:山田あゆみ(プロフェッショナル・ゼミ)
 
「私、長崎行きたいんだよね。あれ、あのランタンフェスティバルに行きたい!」
 
長崎産まれの長崎育ちである。
人生の大半を長崎で過ごしている。
 
県外出身の友人、知人から、「ランタンフェスティバル」について聞かれる事が、ここ最近増えてきた。
 
皆さんは、ご存知だろうか?
「長崎ランタンフェスティバル」は、中国の旧正月を祝う祭だ。はじめは、日本で一番小さな中華街だけで行われていたが、年々規模が大きくなり、今や長崎市中心部を巻き込んでの冬の一大イベントになっている。
期間中は、15,000個もの真っ赤や、真っ黄色のランタンが飾られる。
川面に無数に反射するランタンの一群は圧巻で、インスタ映えは間違いない。
中国産の大型オブジェも、至るところに飾られる。町の真ん中に巨大な人物や動物がまっすぐに煌めきながら立っている。とてもインパクトがある。
期間中は、中国雑技団の演技や、二胡の演奏など、中国を感じることの出来るイベントも、繰り広げられる。
 
地元の人間としては、長崎に観光客が沢山来てくれるのは嬉しいことだ。
ランタンフェスティバルの認知度が高まってきて、良かったと思う。
でも、少し、いやかなり残念な気持ちもある。
 
どうしてか。
それは、長崎には実は、もう1つ大きな祭があり、何を隠そう私は、物心ついた頃からその祭の大ファンだからだ。
その祭の名は、「長崎くんち」という。
地元では、「くんち」とか、「おくんち」と呼ばれている。
しかし、何故だか県外の方々にはランタンフェスティバルについては聞かれても、おくんちについては聞かれないのだ。国の重要無形文化財に指定されているというのに!
待って、長崎の祭はランタンだけじゃないよ! と、言いたくなる。
確かにおくんちはインスタ映えの面では、ランタンフェスティバルに劣るかもしれない。
でも、味のあるいい祭だ。
おくんちは10月7日、8日、9日に行われる。
ちなみに私は、県外に数年住んでいたことがあるけれど、おくんちだからという理由で長崎に無理してでも帰ったくらい、おくんちは特別だ。
県外に住む地元の友達も、「おくんちだから」という事で長崎に帰ってくる人がとっても多い。
長崎人が、一番実家に帰りたくなるのは、正月でも盆でもなくて、おくんちの時なのだ。
 
おくんちの時期になると、長崎の中心部にある「浜の町アーケード」に位置する老舗の文房具屋さんでは、「くんちばか」とどでかく書かれたTシャツが売り出される。
長崎人は、みんな「くんちばか」だと思う。
 
この祭の主な担い手は、この町の人々であり、演し物には、いくつもの種類がある。
そこが、日本の有名な他の祭との大きな違いかもしれない。
例えば、博多ダンジリでは、博多ダンジリをいかに早い速さで、担いで走るかをみんなで楽しむ祭だと思う。
青森のねぶた祭は、ねぶたをみんなで運ぶし、徳島の阿波踊りは、みんなで同じ踊りを踊る。
それぞれの祭が1種類の踊りや、演し物を持っている。
 
でも、おくんちには、何種類もの演し物がある。
どうしてかというと、1つの町が1つの演し物を担う「踊町」という制度をとっているからだ。
長崎市にある町のうちのいくつかが、踊町となっている。
7年に1度、踊りの当番が町にやってくる。
そして、その踊町は、その町独自の演し物を、それぞれ披露する。
〇〇町は、「龍踊り」で〇〇町は、「コッコデショ」、〇〇町は「鯱太鼓」のようにそれぞれの町が、自分の踊りを持っている。
1度の祭に踊町は、だいたい5つなので、毎回種類の違う5つの演し物が楽しめる。
どれもそれぞれ中国やベトナム、オランダや、ポルトガルなどから影響を受けていて、独特でダイナミックな演し物である。
 
おくんちは、演し物の中にある歴史の影響や、衣装の煌びやかさや、子どもたちの可愛さ、町が作る手ぬぐいのデザインなどなど沢山の魅力があるが、私が1番魅力的だと思うのは、至って普通の一般の人々が努力をして演し物を作り上げるところだ。
 
7年に1度しか同じ町の出番が回ってこないという事が、おくんちにスペシャル感を与える。
町のプライドをかけて、何か月も、長いところでは1年以上も時間をかけて準備をする。
大人も子どもみんなで力を合わせて、演し物のクオリティを上げていく。
みんなもちろん、それぞれの仕事や学校がある。
そんな中、仕事の後に、学校の後に、休みの日に、集まって練習をするのだ。
学校の文化祭のもっと規模が大きいバージョンといった感じだ。
それぞれ自分達の仕事が終わった後、放課後にみんなで集まって、練習をする。
みんな、仕事を色々と調整し、勉強をやり繰りし、時間を生み出す。
 
隣の家のおじさんや、同級生や、近所の子どもが踊りをし、笛を吹き、山車をひく。
どんな人も、おくんちに出る時、スターになる。
おじさんが、あり得ないくらいめちゃくちゃかっこよく見える。
額に汗をかき、練習しすぎでかれた声で掛け声をかけるその様は、何度見ても鳥肌がたつ。
 
努力が報われるわけではないことはわかっているけれど、その様を見る度に思う。
「頑張る」ってやっぱりいいな、と。
自分の為にだけでなく、町の為に、観ている人の為に、大好きなおくんちの為に、必死にやるってかっこいいな、と。
そして、思うのだ。
私も頑張ろう。
 
ぜひ、普通のおじさんや、普通の子どもたちが輝くスターになる瞬間を目撃しに来て欲しい。
特に、疲れている方にオススメだ。
きっと、私みたいに元気をもらえると思う。
 
おくんちのもう1つの普通の祭との違いは、踊町が長崎市内の中心部をどんどんと練り歩く点にあると思う。
神社や公園などのちゃんとした会場でも、踊りを披露するが、それに加えて道の途中で、至るところで、演し物を見ることができる。
いつもは単なる通勤路でしかない、平凡な道が、祭一色に染まる。
踊町が、そこに現れるだけで、一瞬にして、道が華やぐ。
小さなお店の前や、デパートの前や、一般家庭の家の前や、そういった場所の前に、どんどん踊町がやってきては、しゃぎりを鳴らしたり、軽く踊ったりする。
祭がそこであっているというよりは、祭の方が、町に歩み寄ってくる感じだ。
 
だから、あちらからもこちらからも掛け声や、音楽や、しゃぎりの音が聞こえてくる。
今、踊町は、どこにいるんだろう。それぞれに違うしゃぎりの音、音楽、掛け声を聞き分けながら、踊町を探しに行くのも面白い。
最近は、GPSで踊町を追いかけることも出来る。
 
おくんちでは、見る側の観客も大きな役割を果たす。
観客のための、いくつか決まった掛け声があるのだが、是非覚えて頂きたい最も使用頻度の高い掛け声は「もってこい」だ。
「もってこい」は、アンコールと同じ意味で、踊りを終わって帰りそうになる踊町を引き留めるためにかける掛け声だ。
 
もしも目の前で見た踊町の踊りが良いものだったら、是非大声で叫んで欲しい。
「もってこい」と。
すごく良かったよ! という気持ちを込めて。
外で大声を上げる機会は、大人になるとそうそうないし、最初は、少し気恥ずかしいかもしれないが、気にしなくて大丈夫だ。
みんなが叫ぶので、1人目立ってしまうことは全くない。
 
おくんち期間中、踊町が演し物をする機会は、たくさんあるのだけれど、一般的に1番注目度が高いのは、初日の朝、1番初めに神社で神様に見せるために披露される踊りだ。長崎ではテレビでも全ての踊りが生放送され、みんなが注目している。最も踊町が気合いを入れて臨む大事な踊りである。
初日の緊張感の中の踊りは、清々しくて迫力満点だ。是非神社で、長坂と呼ばれる神社の階段に座って見て頂きたい。
 
でも、私が個人的に1番おすすめしたいのは、最終日の1番最後の踊りである。
大抵最後の最後、最終日の夜20時から21時くらいに、町の真ん中のアーケードで踊りをする。
おくんちは、踊町にとって、とっても過酷な祭だ。
3日間、朝から晩までぶっ通しで、踊りをして、町を練り歩き、声を張り上げる。
最終日には、みんな声は、枯れ果て疲れきっていることが多い。
Tシャツも、衣装も、汗でびちょびちょで、ガラガラな声で、クタクタな中、それでも踊る。
 
最後の踊りからは、3日間やり遂げた踊町の満足感が伝わってくる。
皆、一様に充実感に満ちたとても良い表情をしている。それは、本気を出した人にしか出せない本物の顔だ。
一方で、もう少しで祭が終わってしまうという、ちょっと寂しい気持ちも感じ取れる。
祭の終わりには、嬉しさと寂しさが混ざり合うものだ。
そして、気持ちは演じる方だけでなく見ている方も同じだ。
今年も素晴らしい踊りを沢山見て、楽しめた満足感と、祭が終わる寂しさを胸に抱き、そこで踊り町の最後を見守るのだ。
もう1度だけ、もう1度見たい。
もう後7年間見る事のできない、この完成された踊りを、もう1回だけ見たい。
その思いで、もってこいの掛け声を繰り返すの。
もってこいの声も枯れていく。
見ている人が全員で、大きな声でもってこいを繰り返す時、とてつもない一体感を感じる。
みんなが、踊る方も見ている方も同じ気持ちで、充実感と名残惜しさを胸に、これが最後かもしれない、いや、でもまだ最後にしないでくれ! あとちょっとだけ、もう少しだけ祭を続けたい! という気持ちでその場にいるのがわかる。
 
踊町は、何度も何度も、踊り、山車を投げ、まわす。
期待に応えるように、延々に終わりなんて来ないかのように。
いつまでも、何回も、もってこいの声が響く。
踊りを重ねるごとに、もってこいの声は、より一層大きくなり、最高潮の盛り上がりに達する。
何回も、何回も踊る。踊町はきついだろう。でも、とっても嬉しそうにも見える。
もってこいは、最大級の賛辞だからだ。そして、この盛り上がりを全身で受け止めることで、一層みんな、輝いて見える。
最後の踊りを終えた時、自然と拍手が起きる。
この瞬間は、いつも、何度見ても、泣いてしまう。
感動する。
 
そして、芯から思う。
私も真面目にしっかり頑張ろう、と。
人生、大変なことも多いけれど、おくんちがあれば私は大丈夫だ。
また頑張れる。
1年分のパワーを得る。
 
是非、皆さん10月7日、8日、9日は長崎に遊びに来られて下さい。
特に、ちょっと最近疲れたなとか、何となく覇気のない毎日を送っているなという方は是非とも。
きっと、並々ならぬパワーを注入出来ると思う。
 
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