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メディアグランプリ

叱られて、伸びる


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:甲斐菜々子(チーム天狼院)
 
「はやく! 機材持ってきて!」
 
ハッと我に返ったわたしは急いで社員さんの元へ走り、バタバタと機材を置く。
 
ふぅ、というため息の後、
「指示出すときは注意しててね」
という言葉に、すみませんと小さい声で謝る。
またやってしまった。
このバイトを始めてもうすぐ半年が経とうとしているのに、どうしても叱られてしまう。
 
テレビ局のバイトをしている上で、生放送や中継など絶対に失敗できない時の緊張と現場のピリピリ感は半端ではない。
そしてその度に、絶対に失敗できない!と固まる体。
上手くやらなきゃという思いとは裏腹にうまく動かない自分の体にいつも苛立ちさえ感じる。
 
叱られたくない。
 
その思いがとても強く、わたしの頭を占領する。
叱られることに慣れていないのだ。
そのことが、この歳になって欠点に感じられるのだ。
バイト仲間のやんちゃそうな男子は、怒られてもへっちゃら、という顔をしているように見える。
きっと学校の先生とかに怒られ慣れているのだろう……なんて勝手な推測をしながら私は、
 
今までの人生、もっと叱られてくればよかった、と思っていた。
 
これまでの人生において、わたしの評価は良くも悪くも「優等生」であった。
幼い頃から、先生を困らせる周りの友達や、怒られる子達をみて
「それなりにしとけば、先生たちから褒められるのに」
と謎しかなかった。
そうして、のらりくらりと誰の怒りも買うことはなく、上手くやり過ごしてきたように感じていた。
実際に、周りの人も私が怒られている姿は見たことがないはずだ。それがいいことだと思っていた。
 
そんな学生の時までは、優等生的な枠でいられたはずだった。
だけど、いざ「お金を稼ぐ」という面で世間に出てみると想像以上の責任が待っていた。
こんなに動けなかったっけ? と情けなくなるほど仕事というものは難しく、覚えることも多かったけど、なんとか上手くやれるだろうなんて軽く考えていた。わからないことを「わからない」というのもなんだか情けなく、必要最低限しか聞かなかった。
そんな甘さを、私はついに思い知ることになる。
 
慣れてきたかなあ、なんて油断していたバイト中、人生で初めて思いっきり叱られた。
ほんの一瞬なのだけれど、致命的だった。
うっかりしてわたしが持っていたマイクに大事な音声が入らなかった。
しまった! と思った瞬間、「集中しろ!!!」と厳しい声で怒鳴られた。
その声が、今まで自分に向けられてきた声の中で一番荒くて、鋭くて、私の心をザクリと刺した。
 
今まで人が怒られている場面を見てきたことしかないからこそ、怒られるという体験が自分を傷つけた。周りから、怒られて可哀想になんて思われてたらどうしよう? とか、こんなこともできなくて恥ずかしい! とか。
とにかくザワザワと心が荒れていた。
社員さんはその後、まだ慣れてないと思うけど今度からは気をつけて、などきちんと声をかけてくれたけど、余計に情けなくて申し訳なかった。
 
そして、怒られたことに対してずっと引きずってしまっていた。
何回も怒られた時の場面が頭をめぐり、「叱られて伸びる」なんて絶対に嘘だ、と呻いていた。落ち込んだ気分はなかなか上がってきてくれない。
次のバイトが嫌だ、とさえ思った。
 
誰かにこのモヤモヤを吐き出したくて、バイト仲間のやんちゃな男子にポロリと話してしまった。
社員さんに結構な勢いで怒られたこと、自分でも予想以上に傷ついたこと。
わかるわかる、と話を聞いてくれるやんちゃ君に対して、
でも怒られてもへこまないでしょ?
怒られることに慣れたりできるかなあ、
とか、失礼なことをグチグチ言うと
 
「へこむわ! しかも慣れたりせんやろ!」と笑った後に
「でも落ち込んでる時間とかもったいなくね? 次やん! 次、次!」
 
とひょうきんな顔をする。
そうかな、もしそうなら次、挽回できたらいいなあ……。
その時はなんだかやんちゃ君の笑顔につられて、落ち込んだ気持ちが少し前向きになった。
 
 
次の出勤日、前回のことをきちんと謝っておかなければ……と暗い気持ちになりながら、この間はすみません、と社員さんに向かって頭を下げた。
 
この間のこと? と目を丸くした社員さんは、
「一生懸命やってるのは分かってるんやから。甲斐ちゃんならついてきてくれるって信じて仕事したいから、めげずに一緒にがんばってほしい」
 
と言ったあとに、次よ、次! と私の背中を叩く。
ホッとしたのと同時に、なんだか、同じ職場で働く者として期待されているようで嬉しかった。
完全に今まで、バイトにそこまで求めないで、なんて無責任な上に逃げ腰だった私にも気づく。
 
そして、目の前の社員さんの真剣な顔を見つめながら思った。
 
ここが、今まで叱られることから逃げてきた私が踏ん張らなきゃ行けない場所なんじゃないだろうか?
そうじゃなきゃもっと中身がスカスカな人になってしまう、と思った。
叱られて伸びるなんてありえない! と思っていたけど、褒められているばかりではタフな大人になれないような気がしたのだ。
今は叱られるけど、いつか社員さんが安心して思い切り仕事ができるように私は成長しなければならない、と思った。そして、この先の私自身のためにも。
 
 
怒られることに傷つくのではなくて、
なるほど、私はそこがまだ未熟者なのだ、と一旦受け止めつつ、
「次こそはうまくやってやるんだから!」
くらいの気力で生きていかねばならない。
わたしに必要なのはそのタフさだ。
まだまだ、できないことが多いのだから。
成長するところだらけだ。
 
 
社会の厳しさを感じつつ。
お叱りを真正面から受け止める覚悟を持って、懸命な努力をするのだ。
そしていつか、君がいたら今日は心配ないね!
なんて言ってもらえる日を目指し、気合を入れて出勤カードを通すのである。
***

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2018-07-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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