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メディアグランプリ

自分の事を話せるようになったのは、過呼吸と上司のおかげ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:田中 実(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「僕は田中さんがそうゆう主義の人だと思って、今まで放任でいました。溜め込むなら相談してください」
少し怒るように上司に言われたことがきっかけだった。
 
10年2か月付き合っていたパートナーと、円満とはいえ仕方なくお別れした。
その頃、勤めている会社が大口の仕事に当たり、一人で何件もプログラム開発をすることになっていた。
大変な時は重なるものだ。近くに一人で暮らしている父の病気も発覚した。
 
早出出勤、深夜残業、休日出勤……なくならないバグ。終わらない仕事。
治らない父への世話と不安。仕事を休まなければならないプレッシャー。
精神的な柱を失った私はじわじわと弱っていった。
だが、昔から自分の事を誰にも話せない性格の私は、誰にも助けを求められずにいた。
むしろ、こんな状況知られたくないという思いが強かったように思う。
他人の不幸な話相談されたってどうしようもないだろうと思っていた。
 
とてもじゃないが前向きになれず、食事もろくに取らずにいた。
ほとんど毎晩悪夢を見るようになった。体中の穴からゴキブリが出る夢。身なりの悪い男がこちらをにやにや見ている夢。朝起きたら会田誠の描く、雪月花の犬になっていた夢。
寝るのが怖くなり、布団で寝ることをやめた。テレビをつけてウイスキーを飲んで、寝落ちを待つ生活になった。
ボロボロになったが、仕事があることで元パートナーとの別れを考えずに済んだ。
 
でも、もう、だめだ。
早く終りたい。
私はあるカウンセリングに通い始めた。
 
「どうして早く終わりたいとずっと思っているのでしょう」
こうゆうときは、死ぬことばかり考えてしまう。とか、夜眠れないとか不調を訴えるものだ。
でも、私は昔からずっと思っていることを聞いた。
「子供のころからずっと、早く終わりたいと思っています。自殺とかそうゆうんじゃなくて、とにかく早く終ればいいのにって思ってて。最近その考えが顕著に表れています」
「早く終りたいとは?」
「早く、この人生終わりたい。です」
問診表を見ていたカウンセラーの眼だけが、こちらを見た。
 
ずいぶん長い間、話した。
その、黒髪ショートカットの40代の女性カウンセラーが言うことには、私が両親に愛されずに過ごしたことがきっかけとなっている。ということだった。
両親がお互いに卑屈であり、私もそれを受け継いでいる。
私は両親に復讐するために自分が不幸になる方法を選んでいる。
それが、私が昔から持っている「早く終りたい」や女性性を否定していることに、つながっている。
ストレスを溜めやすい性格だが、肉体的にも精神的にも絶不調な今それが顕著に表れている。
そしてそれを克服するためには、小さい頃の自分を抱きしめてよく頑張ったねと言ってやることだ。
 
インナーチャイルドというやつですか。ほーん。とにかく可哀想がればいいのね、わかった。
良くなりたい一心で、自分を可哀想がることにした。
 
両親に愛されていなかった私。辛かったね。
今までしてきたことは、自分を不幸にするためだったんだね。頑張ったね。
辛かったね、不幸だったね、辛かったね、不幸だったね……。
 
……え、自分めっちゃ惨めじゃね?
 
精神的に余裕がなかったので、今度は自分惨めという蓋が開いてしまい閉じられなくなってしまった。
すがるような思いで受けたカウンセリングだったので、抜け出し方がわからない。
いよいよ仕事中まで自分が惨めだという考えが頭から離れなくなった。
どんどん卑屈になり、PCの画面を見ていてもじわじわと涙が出てくるようになった。
自分が恥で一人で考え込み、負のループから抜け出せなくなって息が吐けなくなってしまった。
 
事なかれ主義だった上司が、見るに見かねて声をかけてきた時は過呼吸で医務室に運ばれた時だった。
「田中さん、話したくないのは分かります。でも仕事に支障が出てるので話してください。仕事のボリュームが多いんだったら調整します。いつも大丈夫って言いますけど、絶対今大丈夫じゃないですよね」
 
自分のことを恥じていた。だから誰にも話したくなかった。
でも、上司にそこまで言われて話さないわけにはいかなかった。
お別れしたこと、カウンセリングに行ったことで蓋していた部分が開いてしまったこと。
それがきっかけで自分がとても卑屈になっていること。
仕事だけが今の救いなので、私から仕事まで奪わないで欲しいと話した。
それと、自分はとても惨めだと、全部話した。
 
「とにかく、日光を浴びて顔を上げて歩いてください」
パソコンで鬱状態からの抜け出し方を調べながら私の上司は言った。
「それと、次にそのカウンセリングに行くのは今の状態が少しマシになってからにしましょう。仕事はそのままにしますけど、大変なら早めに言ってくださいね。深夜残業も禁止です」
「田中さん、話したらいいんですよ。僕に言いにくかったら、同期の子でもいいし。田中さん全部自分でやろうとしますよね、もっと人に振ったらいいんです。僕は田中さんがそうゆう主義の人だと思って、今まで放任でいましたけど、仕事で迷惑が掛かっています。溜め込むなら相談してください」
 
あ、そうか。
言ってもいいのか。
あ、そうか。自分が相手から話しにくい環境を作っていたのか。
 
上司が惨めな部分には触れず、業務的でいてくれたので、人に相談する理由が出来て素直にそう思えた。
言われた通り、同僚に持ってる仕事の分担の相談をするようにした。
 
そこから、ほんとうに少しずつだが、普段の生活に戻っていった。
上司が調べてくれた、顔を上げて歩く、という方法が私には大変有効的だった。
具体的な解決方法を簡潔に述べてくれて実践しやすかった。
顔を上げて歩くだけで、視界が広がりマイナス思考でぐるぐる考えてしまうことを多少抑えられた。
朝早く起きて日光を浴びた後、空いている電車に乗れたのもよかった。
 
父が元気になって、状況はさらによくなった。
仕事も調整できていたし、心に余裕ができた。
仕事中にじわじわと泣くことはもうなかった。それに、自分の事を惨めだと思わなくなった。
お別れしたパートナーの事も受け入れられるようになった。
何よりも、少しだが人にプライベートの事も話せるようになった。
 
たかがカウンセラーの言葉にここまで支配されなくても、と今では思う。
カウンセリングの方法が悪かったわけではない。
ただ、ガス抜きすることのほうが自分には大切なことだったのだろう。
その方法が今までわからなかった。
 
人に自分の事を話すようになって分かったことがある。
皆ちゃんと距離を守って相手と接している。相手を心配しすぎることはない。
だから、適当な返事もするし、話も忘れる。
でも、それでいいと思う。それくらいのほうがいい。
ただ聞いてくれるだけでいい。
アドバイスが必要な時は、その旨伝えればいい。
話したら楽になる。なんてよく聞いていたが、本当にその通りだ。
自分はなんでもかんでも話すことはしない。
だが、話すことで、自分の考えがまとまるし、一人で抱えていない安心感がでる。
 
こんな当たり前で何てことないこと、どうして今まで知らなかったのだろう。
聞いてもらえるありがたさを教えてくれた上司に感謝している。

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2018-07-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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